私立星海学園



















第十九話 文化祭・三日目 後編




















飛場と御影共々に、3−Dの出し物をしている調理室へと戻ると、異様な空気に包まれていた。
今朝作ったケーキなどが瞬く間に売れていくため、作っているのだ。
文化祭を回っている面々を呼び戻し、人海戦術で焼いていく。
スポンジ班、生クリーム班、冷却班、仕上げ班と分かれている。

スポンジ班はスポンジケーキを作り、生クリーム班は生クリームを作る、といった具合で分担しているのだ。
因みに、冷却班はうちわや下敷きなどを使って冷却しているのである。

「なによ、コレ」

「遅い!! マリアたちも、早く手伝って!!」

調理室に入るや否や、フェイトたちは各班に引っ張られていった。
フェイトは仕上げ、マリアはスポンジ、飛場は冷却、御影は生クリームと言った具合である。
ケーキを作ることに専念し、昼になり客足が更に増えた。
喫茶店なのでケーキや、3時のおやつ向けのものばかりなのに、何で増えるのかが謎だった。

3−Dの生徒と一部の漫研部員以外は謎だが、九品仏大志が原因とだけ言っておこう。
いや、すでに分かりきったことなのだが。
クラス全員で取り掛かり、結局この日は誰も文化祭を回ることができなかった、と記しておこう。

星学こと星海学園は、かなり有名である。変な意味で。
その最たる例が、飛場・竜司を弄くっていた佐山・御言、出雲・覚の二人と、新庄・運切、風見・千里の四名である。
最も、新庄と風見は普通で、佐山と出雲の二人に振り回されている、と言う感じだ。
現在では、3−Dの九品仏大志がそれにあたり、他のクラスでは近づきたくないクラスの出し物、と言うことなのである。

そして、3‐Dと漫研による合同の催しは大盛況と言える状況にあるだろう。
その理由をあげるとするならば、三つある。

一つ目は学校に対して堂々と『コスプレ喫茶』と申請した事だろう。
ある意味、ごり押しでこぎつけたと言って良い程で大胆な戦略かつ、綿密な計画をたてて交渉に望んだのだろう。

二つ目は、男子と女子のレベルの高さだろう。
漫研の部員は各学年において、トップクラスの美女ばかりである。ぱっと見では同人活動やコスプレイヤーとは無縁と思える位に。

三つ目。ある意味でコレが決定的か。美男美少女…特に美少女が割りと露出が高い衣裳を着るのだ、男子生徒が集まらないワケがないのだ。
否、集まらなければ健全な男子生徒としておかしい、と思われる事は必須だろう。確実に。絶対。

まぁ、だいぶ昔にあった『ドキッ!芸能人だらけの水泳大会(ポロリもあるよ)』、に比べれば遥かにマシだろう。きっと。
フェイトはチャイナ服を着たまま接客を行なっていた。
接客相手は、ヴァルハラ学園の生徒であり友人でもあるバスケ部のルシオ、カシェル、ロウファ、ロキ、ラウリィ、プラチナの計六名である。
ロウファ、ラウリィ、プラチナの三人は笑うのを我慢しているが、他の三人…ルシオ、カシェル、ロキは、配慮という言葉なんていらねぇじゃん!、と言う位に三人揃って爆笑中だ。

「ぶははははははははははははっ!」

カシェルの馬鹿デカイ笑い声が、周囲にこだまする。今にもお腹を抱えて転げ回りそうな勢いだ。
無論、その声に紛れてルシオ達の笑い声が聞こえてくる。

「る、ルシオ……笑っちゃダメだよ」

プラチナはそう言うのだが、笑いを堪えながら言っているため、説得力は絶無である。
ロウファとラウリィは苦笑いを浮かべており、どうコメントすれば良いかわからない、と言った顔だ。
三人が一仕切り笑った後、フェイトは口を開く。気のせいか、フェイトの目が笑っていない。

「それで、お客さま。ご注文はお決まりで?」

平静を装い、フェイトは接客を行ないはじめる。ウェイトレス、基ウェイターの鏡である。

「はふぅ〜はふぅ〜笑いすぎて腹いてぇ」

ようやく落ち着いたカシェルは、まじまじとフェイトの姿を見る。赤いチャイナドレスで、妙にピチピチだ。
原因は服ではなく、着ているフェイトのガタイの良さだ。
フェイトだけではなく、飛場竜司はネコミミメイドで

『ね、ネコミミメイド竜司タンはぁはぁ(*´Д`*)』

とか

『飛場くん萌へ!』

とか言われている。女子に。
坂上闘真の格好は袴で、ウィッグを付けてポニーテールである。
彼も飛場竜司と同様にはぁはぁ、とか言われている。
更に言えば、峰島由宇が坂上闘真を見つめている。
どこかこう、何かを愛でるような視線で、しかも平静を装いながら興奮している様に見える。
気のせいであると願う。わりとどころか切実に。
病んでいる奴が多すぎる、と言うのは某教諭の一言である。

「しかし、ここだけ異常なまでの盛り上がりだな」

会場となっている調理室横の中庭を見渡した後カシェルが呟いた。
確かに盛り上がっているのだが、大半が女子生徒で、スカートを穿いている男子に、スカートめくりを行なっている。
主な被害者はなぜか飛場竜司だが、なぜかフェイトもめくられていたりする。

「しかし、話には聞いていたけど…ここまで凄かったとはね」

お冷やを飲みながらロキが呟いた。
確かに、初めての星海学園の文化祭だが、話に聞いていた以上の盛況ぶりだ。
文化祭を見て回ってみたが、異常なまでに教師への愛情がある。
伝達方法は暴力に近い、と言うか暴力そのものなのだが。

そう言う問題ではないのだが、そう言う問題で済まされるのが星海学園クオリティ。
物理教諭・大城一夫、美術教諭・ベルゼブル、体育教諭・アドレー、星学の文科系クラブに属している部員達は下手すれば訴えられかねないほどだ。
その外には熱田、鹿島など個性的な教師達が特盛りつゆネギだく状態である。
何でこんなにキ●ガイ予備軍が一点集中しているんだろう、と言うのはフェイトの弁である。
キチガ●と言う言葉を使う辺り、かなり毒舌である。
まぁ、ヴァルハラにいる眼鏡を掛けた変態ロリコン教師は、ただ一人の例外であるが。

「んじゃ、なにを頼むかな……ぁ?」

カシェルを筆頭にメニューを見て絶句する。
メニューに書かれているのは、ある意味で喧嘩を売っているような名前ばかりだ。



九品仏大志特製夜もバッチリスタミナ満点赤マムシピラフ

特盛り中華饅頭セット略してモリマン

喉ごし刺激的脳内麻薬活性清涼飲料水『俺の汁・超濃縮』



etc.etc.を筆頭にして異常としか言いようがないメニューが並んでいる。
カシェルはなにも言わない。違う、なにも言えなかった。
誰が考えたのかわからないが、このネーミングセンスは最悪だ。
商品化して一般流通すれば一日で回収と言う騒動になるだろう。

特に、モリマンとか俺の汁とかは果てしなくやばい。
書いてる本人も書きながら、やばい名前やな、とか思ったほどだ。
だったら消せよ、というツッコミは不粋である。
むしろ、ツッコメと理解した方は勘弁してください、いや、ホントにマヂで。

「ねぇ、フェイトくん?」

「ん?なに?」

「このセクハラまがいのメニューは無いんじゃないかな?!」

堪忍袋の緒が切れたプラチナが叫び、光の翼を広げると鎧に身を包み剣を携えていた。
プラチナ…本名・レナス=ヴァルキュリアご乱神。基ご乱心。
マジ切れしたのかわからないが、プラチナは剣を握り、襲い掛かった。

「その身に刻め! 神技・ニーベルン・ヴァレスティ!」

逃げ惑う店員及び客。
ルシオ達はプラチナの姿を見て一目散に逃げだしている。止めに入った所で無駄と言うのを理解しているため、逃げの一手である。
フェイトは身を翻し、振り返る事無く一直線に走り、マリアとその友人達を連れて、暴動現場から走り去るために全力疾走する。
峰島由宇と坂上闘真が先頭で、フェイトとマリアがしんがりである。
屋上に出ると、自動人形の八号と遊んでいる物理教諭の大城・一夫がいた。

「は、八号くん!ワシに対する愛情が感じないんじゃが!」

「そんなことはございません。私は自動人形、大城さまには感謝しております。単位で言えばナノですが」

「そ、それって、ワシ、全く尊敬されて無い!?」

八号にいじめられている大城教諭。
と言うよりも、躾られている、と言った方が適切かもしれない二人の関係。
意外に良いコンビだともっぱらのうわさである。

「あぁ、丁度いいところにきた! いじめられているワシを助けてくれんか!?」

「…八号、射撃が甘いぞ、かせ」

大城の言葉を聞きながら、由宇が八号の持っていた銃……デザートイーグルを取り上げると、その銃口を大城へと向けた。
一瞬、静寂が訪れ、大城は正確に自分の眉間が狙われていると気づき、思いっきりのけぞった。
その直後、映画とかでの銃声が生温いほどの大きな銃声が響き渡った。

「あ、危ないではないか、由宇くん?!」

「黙れ。貴様と知り合った事が私の汚点だからな、可及的速やかに死んでくれると私はとても嬉しい」

「や、由宇くんが嬉しいのはいいが、それだと嬉しそうな由宇くんの顔が見れんでなぁ!」

「見るな。穢れる」

「さ、さっきより酷くなっとるー!?」

バンバンと連射する由宇。
変なダンスでその悉くを回避する大城。
正確無比な射撃を回避する大城の姿を見て、撃たれても死にそうに無いからほうっていても大丈夫か、と言う視線を向けられていた。

フェイトは息を切らし、ボロボロのチャイナ服を着ている。
もう服としての機能は無いといっていいだろう。
その隣、タキシードにシルクハット、更には白いマスクに紅いバラ。
どこからどう見ても某美少女戦士に出てくるタ●シード仮●である。

闘真はカツラを取って、フェンス際にたって事故現場……否、事件現場を見る。
目下、乱闘大発生中。
か細い少女が襲い掛かる……ではなく、止めようとしている男子生徒たちを叩きのめす。
蜘蛛の子を散らせたようにバラバラと逃げていく非戦闘要因。

狂喜乱舞とはこのことか。違います。
兎も角、あの狂戦士と書いてバーサーカーと読む少女をどうにかしなければ喫茶店など夢のまた夢。
それを闘真は見ていると、心の中のもう一人の自分が語りかけてくるが全力でシカト。
ガンガンと頭の中でやかましいので、全力で黙らせる為に集中する。

そのすぐ後ろでは由宇が教師に向かってドカドカと銃を乱射しているが、それも無視。
否、違う。無視ではなく、黙殺。つまりだんまりを決め込んでいる。
乱入したところで、一緒に銃の餌食になるからだ。
ここらへん、もう少し大人しくしてくれれば、と闘真は思う。
しかし、その考えが甘かった。
隙あり、と頭の中に声が響き、もう一人の自分が体の操縦桿を握ってしゃべりだす。

「ハハハハハッ!!相変わらず面白いな、この学校は!」

「ん? 貴様、出てきたのか……」

八号から奪ったデザートイーグルのマガジンを交換しながら、由宇が言う。
至極冷静で、マガジンの交換を終えて、再び大城に向けて乱射。

「ま、まて、待たんか由宇くん! 勇次郎くんとワシが知り合いってこと忘れた!?」

「いや、覚えているよ、旧日本UCAT全竜交渉部隊監督殿?」

「いや、その名前出しちゃいかんよ!!」

「ふん…機密性はADEMといい勝負だろう。それに、そっちはIAIが極秘裏に作った組織だ、ちがうか?」

「ぜんぜん違う! と言うか、UCAT自体すでに解体済み!!」

「クククッ……さぁ、楽しもうじゃないか、レナス=ヴァルキュリア!!」

闘真はフェンスを乗り越えて飛び降りる。
マリアはそれを見送り、フェイトはフェンスを乗り越えて下を覗き込むと同時、甲高い金属音が響いてきた。
その後ろでは、峰島由宇による大城教諭調教ショー。
どっちも見たくないので、フェイトはマリアとアイコンタクトをして屋上から去っていった。
その間際に、大城教諭が

「あ、こら、わしを助けて! 成績に色見てあげるからっ!!」

と叫ぶがシカト。
無常にも扉が閉じられると同時、八号が口を開いた。
予備のグロック22を二丁取り出し、トリガーセーフティを解除して一言。

「その言葉は不正行為と受け取らせていただきます」

「ちょwwwwwおまwwwwww」

「あぁ、良かったな大城・一夫監督。無念も無いだろう、早く死んで世界に貢献しろ。それが貴様が唯一世界に貢献できる事だな。八号、私が許す、容赦はするな」

「Tes. それでは大城様、冥福をお祈りいたします」

その言葉の直後、八号の両手あるグロッグが火を噴いた。
大城全はクネクネと踊りながら弾丸の嵐を回避する。
もう一杯一杯で、俺の吐息・ニンニク&ニラ黄金ブレンドをとりだして、ぷしゅー、と撒き散らす。
風上に立っていたのが幸いしたのか、由宇が鼻を押さえてのけぞった。
しかし、自動人形の八号には通用しなかった。

そんな大城教諭の命の危機が屋上で続行中の最中、中庭に剣戟音が響いていた。
常人では見えない動きだが、その動きは人による動きの限界、と言えるものだった。
片方は見た言も無い衣装に身を纏った銀髪の少女で、先程から破壊行為を行っている。
もう一人はつい先程、屋上から飛び降りてきたクラスメイトの坂上闘真。
目つきが鋭くなっているところを見ると、もう一人の人格らしい。

「弔毘八仙(ちょうびはっせん)無情に服す……」

どっかで聞いた……基、もろパクリまくりな台詞を呟き、闘真が走った。
零からのMAXスピードへと加速し、プラチナの眼前で軌道を変える。
プラチナがそちらへと向いた瞬間には、すでにその場には居なかった。
ザッ、と音がする。
四方八方全てから気配を感じ、影が生まれた。
頭上へと視線を向けた直後に凄まじい爆発が発生した。

恐らく、ガスの線が抜けていたのだろうか、それとも別の理由か。
その爆発は空中に居る闘真を吹き飛ばして壁に突き刺さり、プラチナには大量の椅子やテーブルが襲い掛かり、テーブルが顔面に激突して気を失った。
生徒達が戻ってきて、その場所には逃げる言が敵わなかった生徒達の屍があった。
死屍累々とはこの事か。
そんな凄惨な状況の中で無事だった生徒が叫んでいる。

食堂大破ーーーーッ!

とか

衛生兵を呼べーーーーッ!

とか

死ぬな、死んだらおまえのマル秘魔改造アスタロス様のエロフィギアがネットオークションに流出して大城先生に落札されるぞ!!

とか

し、死ぬなら、巨乳のお姉さんに包まれて窒息死したかった…あぁ、見える、見えるぜ遥かなる巨乳のお姉さん達の花園(ヴァルハラ)が!

等々と口々に叫んでいる有象無象の煩悩120%の男子生徒共。
無駄にエロイ奴が多いな、とはカシェルの弁である。

「で、この状況をどーすんだ、大志?」

瓦礫の山となっている教室と、オープンカフェ。
大志の隣に立った和樹が呟いた。
凄惨というかなんというか、敗残兵の如く、大志はガラクタを掻き集めており、色んな意味で脳内麻薬絶賛生産中、と言ったところか。
まぁ、常にエンドルフィンで全壊っぽいが、この際は気にしない。気にしたところで無駄だからだ。

「フ…フハハハハハハッ!見える、見えるぞ!我輩もついにニュータイプとなったか!」

壊れたのか、と思える程で叫んでいた。
フェイトは原因一行を正座させて説教中。
ボロボロになったチャイナドレスの端々から、彼の肉体が見え、フラッシュの嵐か彼を包んでいた。
色んな意味で駄目人間の集まりである。



















▽▲▽▲▽▲▽▲▽



















飛場竜司は考えていた。現在おかれている状況と自分の悲運具合を。
ちなみに、彼が現在置かれている状況は




壁|腐女子 腐
壁|カメラ カ女
壁|     メ子
壁|      ラ
壁|
壁|飛場      カメラ腐女子
壁|御影     カメラ腐女子
壁|
壁|      ラ
壁|     メ子
壁|カメラ カ女
壁|腐女子 腐




と言うような状況である。ある意味で危機的状況だ。飛場竜司は、隣にいる御影を見る。
男装の麗人、とそのままの表現ができる美しさ、と言うべきか、飛場は思う。

――あぁ、こういう服装の御影さんもイィ!

一つ、訂正するべき事が出来たようだ。
危機的状況、という物は彼…飛場竜司には存在しないようだ。
と言うよりも、危機的状況を危機的状況と思わぬ彼の煩悩に称賛するべきか、かなり微妙である。

「ふむ、相変わらず面白いほど絡まれ易いね、女装が趣味な飛場竜司くん?」

きいた事がある声が聞こえて、嫌な予感がビンビンしているが、ゆっくりとそちらへと視線を移す。
オールバックにした髪型と両側頭部が白髪で、スーツを着た男が立っていた。
飛場竜司は、げっ佐山先輩、と小さく呟いた。
モーゼの十戒のワンシーンの如く、腐女子の海が割れていく。
それを見て、飛場竜司は思う。

――やっぱり、佐山先輩って、色んな意味で嫌われてるんだなぁ

と、かなり失礼な事を考えていた。いや、かなり的を得た言葉なのだが。
侍女服……萌え用語で言えばメイド服に身を包んだ自動人形を数人引きつれており、自動人形は口々に叫んでいた。

カッコイイです佐山様!!

とか

共通記憶で皆に佐山様の雄姿を配信と…

とか

このワンシーンは永久保存です!

とか叫んでいる。
最も、自動人形達を引きつれているのではなく、勝手についてきているだけなのだが。
佐山は飛場と御影の姿を見やり、再び言葉を放つ。

「御影くんの姿もきみの趣味かね?」

「こういう男っぽい格好をした御影さんもいいですよ。だけど、僕の趣味では無いです、本当ですよ!?」

「墓穴を掘るとは君の事を言うのだよ、気づいているのかね、飛場・竜司君?」

佐山に言われるが、飛場はそれをシカト。
御影を抱きかかえると、膝を曲げて跳躍する。
空中で姿勢を変えて壁を蹴り、さらに跳躍。
壁と水平に跳躍し、3階の窓のアルミサッシに手をかけ、御影を校舎へと入れた直後。
すぐ真下からフラッシュの嵐が発生した。

何事かと下を見る。
まぶし過ぎて一瞬なにが起こっているのか理解できなかった。
が、自分の姿と自分を追い詰めていた女子生徒を思い出し、理解する。
自分が今着ているのはミニスカートのメイド服。しかもニーソックス装備。
この学園の基準からして言えば、獲物といっていいだろう。
はぁ、と小さくため息をついて飛場は三階の廊下に入り、脱兎の如く逃げ出した。
至極正しい判断である。

(ふむ、なかなかいい判断力がついているね)

佐山はそう思いながら、踵を返して歩き出した。
その背後には自動人形の群れ。
佐山は現役の学生時代と変わらず、自動人形にはモテルようである。
なにかを思い出したのか、足早に歩き出した。
行き先は飛場・竜司のクラスが出し物を行っている場所だ。

調理室のすぐ隣、というか外の中庭に自作のテーブルやら椅子を使い、開催されているコスプレ喫茶らしい。
なんともこの学園らしい、と思いながら佐山は歩く。
その後ろには学園産の自動人形達がぞろぞろと。
何事だ、と一年が注目するが、二〜三年の生徒は無反応。なれとは怖い物だ。

佐山はふと思考を巡らす。
先程、廊下で飛場で遊んでいた時に見た顔を思い出そうとして、考え込んでいた。
蒼い髪のチャイナドレスを着ていた男子生徒。
見た事があったのだが、何処で見たのかは思い出せなかった。
唐突に思い出すことが出来た。

彼のあの顔は、飛場流道場に通っていた時に、見た事がある顔だった。
飛場流道場と神宮流古武術の交流試合の時に見た顔だった。
最も、その時には試合には出ず、試合を最初から最後まで見ているだけだった。
だから佐山はその少年を覚えていたのだ。
特異と呼ぶには少々御幣があるが、それでも武術を学んでいる身体には見えなかったから、佐山は頭の隅に留めていたのだ。

なにせ、神宮流の一人娘であるミラージュがそのとなりで解説を行っていたのだ、忘れろと言う方が無理と言える。
ミラージュの実力は知っている。
飛場・竜司の義理の姉である美樹と互角に戦えるのは、ミラージュだけだった。
佐山も何度か挑んだ事あったが、完敗した。
それ程の強さであった。

懐かしい話だ、と佐山は思いながら歩いており、後ろには自動人形がぞろぞろと。
新庄は行きたいところがある、と言うので一人で回っており、待ち合わせの時間は昼頃のコスプレ喫茶。
昼までにはまだ時間があり、佐山はコーヒーを飲みながら後輩を
と、足を止めて惨状を見渡した。
ボロボロに破壊されているテーブルと椅子。
ふむ、と小さく呟き、惨状に対する感想を口にする。

「なんとも前衛的な喫茶店だね」

「佐山様、これは前衛的というよりも、惨劇の後と言う方が正しいかと思います」

後ろにいる自動人形の一人が答える。
確かに惨劇の後と言う言い方は的を得た発言だ。
後輩の九品仏大志が、ガラクタと化した椅子やらテーブルやらをかき集めており、その隅の方では原因となったであろう人物を説教しているチャイナドレスを着た蒼い髪の少年が立っている。
その前には、銀髪の少女と金髪の少年が三人、薄い青の髪の少年、黒髪の少年が二人。
ふと銃声が耳に入り、上を見ると自動人形たちも上を見た。

屋上からで、後ろへと目配せする。
佐山の言いたい事を理解したのだろうか、数体の自動人形が重力制御を行って空に浮いていった。
その自動人形は、屋上で展開されている奇行を見た。
銃に撃たれ、変なダンスを踊っている老人。
銃を撃つ赤毛の侍女服を着た女性。
鼻を押さえて悶えている少…女?
の三名が居た。

侍女服の女性は彼女と同じ自動人形だ。
老人は知っている。この学園の変態教師である大城だ。
鼻を押さえて悶えているのは、この学園の生徒だろうか、とその少女(仮定)の身体を見る。
身体の骨格、肉のつき方等からの判断で、女性と言う事が分かる。
だが、自動人形は問題なし、と判断して降りていった。

「で、銃声の原因はなんだったのかね?」

「Tes. 八号様による大城教諭の躾でした」

「ふむ、ご老体もよく死なないものだね。 放送室にいる子に共通思考で『屋上にシビュレくんを泣かした大城教諭がいる』と伝えてあげたまえ」

「Tes.」

すぐに放送が流れ、男子生徒が屋上を目指して走って行った。
屋上からは賑やかな罵声が聞こえてきた。

シビュレさんを泣かした愚か者に死を!

と言う声を主に聞こえてきて、大城に向けて銃を向けているに違いない。
銃刀法違反じゃないのか、とか言う声が聞こえてきそうだが、星海学園無いはある意味で無法地帯。
なにそれおいしいの、とか言うふざけた答えが返ってくるに違いない。
それが星学クオリティ。スンバラスィ言葉だ。

少しすると黒髪の少女が屋上から飛び降り、着地して説教をされている黒髪の少年へと向かい走って行った。
手にはデザートイーグルが握られているが、弾が無いのだろう、スライドされて戻っていない。
佐山は後ろの自動人形達に何かを言った後、そちらへと足を向ける。
喧々囂々。
喧しいとしか言えないが、黒い髪の少年……見た事の無い片方ではなく、後輩に当たる坂上闘真は黒髪の少女峰島由宇が胸倉を掴み、何かを叫んでいた。
他愛も無いことだろう、佐山は判断してその集団へと近づく。

「大体だな、闘真。君は無計画に行動しすぎる!! スフィアラボや孤石島での一件もそうだが、七つの大罪との時もそうだ!」

「……痴話げんかかい?」

「さぁな。 まぁ、いい具合ならぶり具合だよな」

「そ、そんな事よりフェイト君、ゆるして?」

「駄目」

「ひ、酷いよフェイトくん、そんなに腹黒だったなんて!」

「断っただけで何で腹黒って言われなきゃ行けないんだよ……」

「でも実際、腹黒だと俺は思うんだけど…そう思う方は挙手を」

ルシオの言葉に、フェイトを除く全員が手を上げた。
胸倉を掴んでいた由宇も、胸倉を掴まれてお小言を言われている闘真も上げていた。
会ってから1年の4分の1位の人間にも言われなければならないんだろうか、フェイトはそう思いながら、口を開こうとしたところで肩を叩かれた。 振り返ると、先ほどの人物が自分の肩に手を置いて、やけにさわやかな笑みを浮かべている。
その顔を見てどこかで見た事があると思い、その人物の顔を見る。

オールバックにした髪形で、両側の側頭部が白髪。
目は鋭い目つき。服装はスーツ姿の青年だ。
左の手には指輪があり、目立たないモノの傷がいくつも見えた

「その顔を見るところ、覚えていないと言うところだね」

「え? あの、会った事がありましたっけ?」

「ふむ……その問いに答えるのならば、あるといえばあるが、このように会話するのは初めてだね」

「どういう意味ですか?」

「神宮流道場と飛場道場で交流試合を行った際に、ミラージュ女史に解説をしてもらっていただろう」

「あ、そういえば、その時に見た事が…」

「フフフッ、今日ここで会えたのも何かの偶然。 マロ茶でも飲みながらゆっくりと、マロいについて語り合おうではないか!」

「ごめんなさい」

「即答とは、いただけないね。 しかし、マロいについてではなく少し君と話がしたくてね……ここでは話せない事もあるだろうし、屋上で話そうではないか」

「え、えぇ、まぁいいですけど…服を着替えてもいいですか?」

「かまわんよ、その格好では色々と支障があるだろうからね。 あそこの屋上はご老体のしつけ中なので、こちらの屋上で待っているよ」

佐山はそういうと、フェイトに背を向けて歩き出した。
彼の背中を見送り、ため息をつく。
横を見て、逃げ出そうとするルシオ達がいて、ニッコリと笑みを浮かべる。
その笑みを見たルシオ達は、乾いた笑いを発して一目散に逃げ出した。
追う事はせず、フェイトは服を着替えに調理室へと入り、着ているボロボロになった服を脱ぎ、制服に着替えて足早に屋上へと足を向けた。
先ほどから向かいの校舎の屋上から銃声やら叫び声やらが聞こえてくる。

一足先に屋上にいた佐山は、遠巻きにそれを見ていた。
360度かこまれ、銃を乱射されている大城。
その悉くを変な踊りで回避し、由宇をダウンさせた俺の吐息・ニンニク&ニラ黄金ブレンドを撒き散らす。
なかなかにいい手だが、決定打が足りない。
と、佐山はそれを見ていると、屋上のドアがさび付いた音を立てて開く。
振り返り、客人を迎える。

「腹黒フェイト君、ようこそ屋上へ」

佐山の言葉と同時。向かいの屋上が爆発した。
















▽▲▽▲▽▲▽▲▽
















フェイトは歩きながら考えていた。
先ほどの人物が誰なのかを。
確かに見た事がある気がした。顔もおぼろげだが覚えているような気がする。
会った事は無いが、見た事とがあった。
ミラージュの話では、佐山・薫の孫なのだという。
佐山といえば、『佐山の姓(かばね)に悪役を任ずる』と言う言葉で一部の人間には有名過ぎる名だ。

歩く。既に制服を着ており、周囲からの視線は無い。
足早に屋上へ向かって階段を登っていく。
四階の階段を上っていき、屋上の扉が目に入る。
目の前でいったん立ち止まり、深呼吸を一度だけして扉を開けた。
錆付いた蝶番が軋んだ音を立てて開く。蒸し暑い風が、フェイトの髪を揺らしてその直線のフェンス上に、先ほどの青年がいた。
青年が振り返り、口を開いた。

「腹黒フェイト君、ようこそ屋上へ」

青年――佐山・御言の言葉と同時に、向かいの屋上で爆発が起こった。
何事かと思い、そちらへと意識を向けると、大人数の人間がおり、中には侍女服を着た女性達がずらりと並んでいるのが見えた。
女性ではあるが、彼女は人間ではない。自動人形(ザイン・フラウ)と呼ばれる人に作られ、人に使える事を至上とする存在である。
そちらから真正面。佐山へと視線を移す。

「向かいではどうやらご老体が躾をされている様だ。 よって、向こうの事は無視して結構」

「は、はぁ……」

「確か、君のご両親は紋章遺伝子学の権威だったね」

「はい、そうですけど……それがどうかしたんですか?」

「君の両親とあそこで躾をされている変態老人と、私の祖父に当たる既に死んだヒヒ爺は知り合いでね、そのおかげかして私も君の両親とは面識があるのだよ」

「そうだったんですか……」

佐山の言う変態老人へと視線を向ける。
躾と言うよりも、集団的な暴力なのだが気にしないでおいた。
再び佐山へと向き直り、佐山の言葉を待つ。
無言。なにも喋ろうとはせず、佐山はこちらを見ていた。
なにも喋らない、と言うよりもこちらの言葉を待っているように思え、フェイトはなにを語るべきか、と考える。
共通点など無いといって良いだろう。
だが、フェイトはそれでも口を開き、問いかけた。

「あの、大城先生って一体なんなんですか?」

「なに、とは何だね?」

「いえ、あの……なんていうか、一般人には無い空気を纏っているって言うか」

「ははは、それは君自身が調べることではないかね? 私が答えを言っても構わないだろうね。だが、それだけで君が納得できるとは思えないのでね。
 答えはすぐ目の前にある。私が答えを喋る事は容易いことだ。それはとても簡単だ。たいした苦労も無く真実を得るが、それが真実かどうかは真偽を検証する必要がある」

「つまり、貴方が言う答えが本当なのかどうかは、自分で調べるしかない。だから、自分で答えを探すことになる、と言うことですか?」

「そうだ。 いや、さすがはロキシ博士のご子息の事はあるね」

「父さんの業績と、僕の今とは関係ありません」

「君はなにを当然の事を言っているのかね? ロキシ博士の研究は確かに、世界が認める功績だろうね。 だが、息子である君が必ずしも紋章遺伝子学に聡いという訳ではあるまい。 確かに、君の学力は高い方だろうがそれとコレとは話しは別だ。違うかね?」

佐山の言うとおりだ。
親がどんなに偉かろうが、それは親の地位であり自分には関係ない事だ。
親が紋章遺伝子学の権威だろうと、息子である自分が紋章遺伝子学に精通しているわけではない。
ましてや、親と同じ道を辿るはずも無い。

「む、どうやら向かいの躾が終わったみたいだね。 見学にでも行くかね?」

「結構です」

「そうか。 む、もうこんな時間か、新庄くんとの待ち合わせに遅れてしまうな。 連絡をくれればスケジュールをあけておこう、いつでも連絡をくれたまえ」

佐山が告げて、屋上から姿を消した。
その後ろを姿を見送り、フェンス際に立った。
既に昼をまわっているのか、太陽が高い位置にある。
向かいでは大城の弾劾裁判が行われていたが、フェイトはそれを軽く無視。
下へと目を向けると、なぜか大乱闘が行われていた。
紋章術が飛び交い、更には怒号と金髪やらリーゼントにモヒカンが空を飛ぶ。

「……無駄に強い人が多いよね、この学校って」

小さく呟いた後、足早に乱闘現場へと向かった。










事は10分前。
フェイトが着替えている最中に、その原因となる者達が訪れた。
見るからに不良と呼ばれている外見だ。
リーゼントやモヒカンと言う古い外見で、リーゼントを決めている少年(?)はソリコミもある。
もはや天然記念物級の貴重さだろう。どうでも良い事だが。

現在、大志を中心にして掃除中である。当然ながら店をやる暇など無い。
先ほどのプラチナのご乱神により、男女共に衣装がズタボロな者が多く、下心がありまくる男には辛いものがある。
制服に着替えさせる為、女子を優先して更衣室へ連れて行こうとした大志だが、その不良たちに絡まれたのである。セクハラ全開で。
もう盛りのついた犬か貴様は、と小一時間問いただしたい。
発情した雌犬を前にした雄犬が如きの不良たちの行動に対して、大志が叫んだ。

「立川兄! 飛場・竜司! 峰島女史! 坂上闘真!3‐Dの催しで無礼を働くこの者達に鉄槌を下せ!」

立川兄は妹を護る為。
飛場・竜司は美影に良いところを見せたい為に動いた。
立川兄、飛場・竜司に関しては強い。さすがは在校生中最高の戦闘能力を持つとうわさされるだけはある。
佐山・御言に比べれば劣るかもしれないが、現在の生徒会でもパシリ的な感じでこき使われている。一応生徒会長なのに。
少し離れた場所で、由宇が闘真を締め上げていた。
気絶せずに苦しめる方法を選んでおり、思いっきり首を絞めているのに意識がある闘真にとっては地獄だろう。
首を締め上げたまま、由宇は大志に答える。

「断る。なぜ、私まで巻き込まれる?大体、私は闘真がどうしてもと言うから参加しているだけだ」

「ふむ……ならば、耳を貸すがよい。ゴニョゴニョ」

「九品仏、私がそんなモノで動くと思っているのきゃ?」

「……激しく動揺しているぞ、峰島由宇? 欲しくないかね、坂上闘真の特選マル秘画像十点セット、今なら坂上闘真とのデートのセッティングも約束しよう」

峰島由宇、ちゃんと学校に通っていれば、校内No.1完璧美少女になっていたが、彼女は引き籠もりだった。
なんの因果か、彼女の父親はマッドサイエンティストで色々と開発している。
物騒な武器から平和利用できる様なモノまで開発していた。すべて父親の自称なのだが。
事実関係はわからないが、彼女は天才と言っていいだろう。なにせ、彼女は教室には窓から入ってくる。しかも4Fの。
3‐Dの生徒達も最初は度胆をぬかれたが、二回目になると普通に順応していた当たりが3‐Dたる所以だろう。

効率よく動き、無駄な動作の一切を省く。
これが彼女の人間離れした動きの理由であり、彼女にとって身体を動かすのは運動ではなく、理論と言っても語弊は無いだろう。
そんな彼女の唯一の弱点が彼、坂上闘真だ。
母方の姓を使っているが、彼はあの真目家の人間である。世界に名立たる真目家。
情報戦となれば、世界中の情報を手に入れられるとんでもない家の人間なのだ。

彼と峰島悠宇の出会いは、とんでもない状況だったらしい。
本人以外は認めるほえほえ系の性格だが、二重人格で血をみると一変して好戦的になり、由宇と血みどろの殺し合いをしたらしい。
結果は由宇が勝利して、もう一人の闘真も現在ではぞっこん、と言えるだろう。別の意味で。

「そ、そこまで言うならやってやる。約束を違えるなよ!?」

「無論だ」

大志の答を聞き、峰島由宇は乱闘のなかに入っていった。

「それよりも大志、何で僕のそんな写真を君が持ってるの?」

「いやなに、ある人物に高値で売っているのだよ、坂上闘真、君がよく知っている人物だ」

大志の言うある人物と言うのが、彼の腹違いの妹である真目麻耶である。
よくよく思うのだが、大志の交友関係は無駄に広すぎると思う和樹だった。
大乱闘はある意味で一方的に終わった。
立川兄に飛場・竜司だけでも具合が悪いのに、峰島由宇に坂上闘真に美影すばる。
更にはD組の問題児達一同による鉄槌は止まらない。

紋章術が発動したり、飛場竜司を筆頭とした武道家集団の鉄拳を喰らえばひとたまりも無いだろう。
と言うか、不良達は一般人より喧嘩が強いだけで、武道家集団に比べれば一般人と断言して良い。
そんな彼等が敵うわけが無い。
マリアはげんなりとした顔で乱闘を見つめており、ため息をついた。

ただでさえ問題児が多いクラスで、その問題児クラスがコスプレ喫茶を文化祭で実行し、更に恐らくは他校の不良と大乱闘。
もはや喫茶店の再開は水泡に帰した。
だから、やることが無いので乱闘を見ていた。

四人もの不良が飛場へと向かう。
ほぼ同時の動きだが、前から来る不良のパンチを捌きながら、身体を動かす。
右足を左足の斜め後ろへと動かして身体ごと右を向くと、裏拳と前蹴りを放ち、二人を同時に迎撃。
更に軸足だけで身体を回転させて、さっきまで前と後ろだった左右の少年達に回し蹴りを叩き込み、乱闘が終了した。
総勢20名以上が倒れており、マリアは乱闘現場へと近づいていく。

もはや、近隣の高校などでは有名と言える集団達。
県下は常勝無敗。性格は異常あり過ぎで語りきれない。
そんな筆舌できぬ集団は、有名じゃないと言う方がおかしいくらいだ。
飛場に近づいていく途中で、後ろから抱きつかれて顔に冷たい金属が突きつけられた。

(あれ……これって、ナイフ?)

ナイフだと認識してから、怖いと言う感情があふれ出してきた。
腕を回されて、身体を押さえつけられている。顔を見ようとして首を動かすが、後ろにいるために顔が見えない。

怖い。

ただそれだけが身体の中を駆け巡り、感情を染め上げていく。
マリアと言う人質とられ、その場にいる全員が止まった。
飛場と峰島由宇が動こうとする。由宇は闘真に止められ、飛場は美影に止められた。

「ってぇ……あーいてぇ」

「あーあーそこの犯人に告ぐー君は完全に包囲されている。 D組を完全に敵に回しているため、無駄な抵抗は止めて土下座して恥をネット上にさらされてください。 今なら亀甲縛り状態でも顔にモザイクかけてあげますから」

「さり気に毒を吐いたな、飛場竜司」

「でも、なんか佐山先輩達にもまれただけあって、ああいう事をサラって言えるってすごいよね」

「まったくだな。 あんなエロ脳が生徒会長だというのだから、この学校の異常さをあらわしているな」

「エロ脳じゃなくて、美影脳って言った方が良いんじゃないかな?」

「いや、あいつは秋葉原辺りでエロゲーやAVを買っている。 コレは風間に調べさせたから間違いない」

「……じゃあ、エロ美影脳でいいか」

「ちょ、それは新手のイジメですか!? さすがに僕でも訴えますよ肉体的にも精神的にも!! それと美影さん、後で慰めてくださいね?!」

「うん、いいよ」

「まて美影、もっと自分を大切にしろ、飛場を慰める為に自分の人生を無駄にするつもりか?」

「だから、なんで美影さんにエロイ事をするっていう前提なんですか!? 大体、エロゲーとかAVとかは同世代の男子生徒諸君にとっては必需品ですよ?! エロくない男子生徒はいないんです、女子にはそれがわからんのですよ!!!」

飛場の言葉は極めて真理である。
恐らく、日本のみならず、世界中の思春期男子はそういったものを読んでいるであろう。いや、読んでいると断言してみたい。
むしろ読んでいない男子は恐らくだn(以下略)である。
どうでもいい話はおいておいて、緊張感の欠片も無い連中である。
そのためなのかわからないが、マリアは先ほどの恐怖が吹き飛んだ。

「てめぇらなぁ……たかがナンパ程度で、何でコレだけぼこられねぇといけねぇんだ?!」

「いやだって、目付きとか手つきとかエロかったし、なによりも生理的に受け付けなかったと言うか……」

直球ど真ん中のストライクゾーンで答える飛場竜司。

「その言葉はそっくりそのまま君に返却できるぞ、かなりエロイ飛場竜司」

「んーーそれはそのまま君にも当てはまるよすごくエロイ飛場竜司君?」

「ただ違うところと言えば、SじゃなくてMって所だよねエロエロな飛場竜司君!!」

「やっぱ、イジメですか!?」

「飛場君ってそういうキャラじゃん」

上から峰島由宇、マリエッタ、芳賀玲子の順番での三段オチ。
いや、それ以前にオチとか言うものじゃないのだが、気にしない事を推奨する。
彼等に3−Dには緊張感など皆無。むしろ、彼等に緊張感など無い、と言えるだろう。
かなり断言できるほどに。
爆発音がとどろき、視線が一斉にそちらへと向けられる。
屋上から大城と言う言葉が聞こえてくると、全員があきれた顔をしていた。
これも日常茶飯事と言うべきなのだろうか、それとも諦めの境地かのどちらかだろう。多分前者であろうが。
沈黙どころかギャーギャーと喧騒が生まれてカオス状態に陥っている。

「……あんた、苦労してそうだな」

「そんな一言で済まされると思う?」

「おもわねぇな。 胃潰瘍には気をつけろよ、その歳でなりたく無いだろうし」

「あたりまえよ……っていうか、胃潰瘍になった事あるの、あんた」

「こう見えても上に立つ人間なもんで」

「あぁ、サル山の大将って事ですね?」

「うっせぇ、エロ脳竜司」

「なんですかそれ?!」

「なかなか的確かつ巧い言葉だ。 どうやら、お前は他校の生徒にもそう認識されているようだな、ひ……エロ脳竜司」

「ちょ、なんで言いなおすんですか?! そのまま飛場でいいんですよ、天才ツンデレ娘!!」

「だ、だれがツンデレだ!!」

「いや、峰島女史以外に誰がいる? まぁすぐ近くで人質にされている女史もツンデレだが」

「大志、後で体育館裏にきなさい」

「ハッハッハッ! 丁重に断らせてもらおうか」

「いつまでこうするつもり? 飛場がああいった以上、本当にネットにさらされるわよ?」

「うわー集団暴力としか言い様がねぇな、くそ」

何故か分かり合う人質と犯人。
と言うか、犯人はマリアのような経験をしていると言う事が、凄まじく意外である。
犯人……名称不明なので、少年Aにしておこう。どこぞの犯罪者ではないのであしからず。

「あーーーわかった。もう帰るから、ネットにさらすのは勘弁してくれねぇか?」

「断らせてもらいます!」

「……飛場竜司、少しは空気を読め」

「ふむ、まぁよかろう。 ただし、我輩たちの出し物の再開を手伝うと言う条件付だがな!」

「……具体的な内容は?」

「なに、ここにあるぶっ壊れたテーブルの修理を手伝うだけでいい」

「それでいいんだな?」

「嘘はイワンよ」

「わかった」

「交渉成立、と言う事だな?」

「あぁ。 周りの連中を起こしてくれ、頭ワリィ連中だが手先は器用だからな」

「わかった」

少年Aはナイフを収めてマリアを手放した。
ため息をつき、周囲を見渡すと瓦礫の山が目に付いた。
所々どころかかなりぶっ壊れているテーブルが大量にあり、ため息をついた。
たたき起こされて、修理を手伝えと言われて文句を言っていたが、先ほどの脅し文句を言われて手伝い始めた。
人数が多く、少年Aが言ったとおり手先が器用だと言うのは本当らしく、人海戦術が功を奏したのか1時間程で修理が終わった。
さすがにボロボロとしか言いようが無いテーブルで、集客は見込めそうにもない。

「それにしても、あの馬鹿どもは何処に行ったんだろ」

修理を終えて、フェイトが呟いた。
屋上から中庭についた頃には、何故か不良達がテーブルの修理を行っており、目を丸くした。
それから紆余曲折。
不良達は速やかに学園を
出て平和が訪れた。

「それで、九品仏。 この先どうするつもりだ?」

「ふむ……コレで焼肉はお流れは確定か」

大志の一言でD組の生徒達がやさぐれる。
そこまで高級焼肉が食べた買ったのか、と言うぐらいに。
そんな中、フェイトは服を着替えていた。
一応保管しておいた一日目の衣装を着て、中庭に出た。
ご丁寧に髪をオールバックにしている。

「どうこう言っても始まらないし、やるだけやろうよ。 焼肉は安いバイキングでいいんじゃないかな?」

フェイトの言葉に活気付き始める。
各々が一日目と二日目のどちらかに着替えて中庭に集まってくる。
壮観と言えば壮観だろうか、中にはROのプリーストの衣装を着ていたりとか色々とエロめの衣装が増えていた。
マリアは当たり障りの無い衣装を選ぶつもりだったが、四人娘に拉致されてしまい着替えさせられた。
白いレオタードと言うかなんと言うか、肌の露出はきわめて高い服でバイザーを装備している。
色々と身に着けているのだが、作者の描写能力の限界の為に割合するがゼ●サーガのKO●−M●Sといえば話は早いだろう。

「ちょ、ちょっと、こんな格好で出れるわけ無いじゃない!!」

「なに言ってるのよ。 瑞稀っちゃんはアレなのよ?」

と、芳賀玲子は瑞稀を指差した。
黒いレザースーツと言うかなんと言うか、手にはでかい釘に鎖がついている。
更にはその鎖は某アンドロメダの鎖の如く伸縮自在らしく、セクハラを働いてくるもの達に対して振るわれていた。

「……瑞稀、何気に使い慣れてない?」

「そりゃ、あのスタイルであの格好すれば襲われるモンねぇ」

「お、襲われる?!」

「あ、大丈夫大丈夫。 私等に勝てる一般人なんていないって」

ケラケラと哂う芳賀玲子。
いや、あんた等も一般人じゃない。
とマリアは心の中でつっこむが口には出さない。
確かにD組の生徒達は基本的に能力が高い。
身体能力にしろその他の煩悩にしろ、異常なまでに高いのだ。
九品仏大志はある意味例外かもしれないが、歴代の卒業生達を含めて勢ぞろいさせれば、どっかの国の軍隊と正面きって喧嘩できるんでは無いだろうか。
いや、誇張しすぎたがヤクザ程度なら軽く潰せるだろう。

「ま、とりあえずフェイト君が言ったとおり、やるだけやってみましょう!」

「さて、文化祭最終日の今日、終わるまであと四時間を切っている現状をどうすれば打破できる?」

「……色仕掛け!」

「黙れ飛場竜司」

峰島由宇の手により、即効で黙らされる飛場竜司。
もはやいつもの事だと誰も突っ込まず、闘真が由宇をなだめに入る。

「色仕掛けか……採用と言いたいが、言えば我輩の命が散るので却下だ。 まぁ、もうそろそろ客が来る頃だろう、昨日、一昨日と同じ様に接客を頼む!! それでは解散!!」

大志の言葉で解散する一行。
大志の言葉どおり、暫くして客がちらほらとやってきて、携帯効果による客が急増した。
捌ききれるかどうか不安だったが、何とか捌ききる事が出来た。
時間は4時を迎える時間帯。
文化祭は終了し、教師達のトトカルチョの結果は後々語ろう。

簡単に後片付けを終えて、フェイトは制服に着替える。
半そでの白いカッターシャツに、ネクタイをつけており、カッターシャツの裾はスラックスの中に入れてある。
因みに、今回の衣装は自分が来た者は各自保存と言う事になっており、ネットオークションによる売却も可ということであるらしい。
結構どころかかなり精密に作られているため、高値で売買される事が予想されるが、それはそれと言う事にしておこう。
閉会式というかなんと言うか、校長の適当な挨拶を聞いた後、教室に漫研部員と3−Dの生徒が集まっていた。
教壇に大志が立ち、その両脇に制服に着替えたマリアとフェイトが立っている。

漫研は後ろにあるロッカーの上に座っている。そりゃ、座れなくて当然だろう。
大志が教室を見渡した後、口を開いた。

「さて、集計は目標に届かなかったものの、担任であるベルゼブル教諭から強奪したこの金を含めて、20万を軽く超えた。 そこで、だ。今日は朝まで騒ぐ!! 誰がなんと言おうが騒ぐ、カラオケで、アミューズメントパークで、全てを遊びきり、全てを歌いきる覚悟で遊ぶしだいである!!」

歓声が上がる。
ベルゼブルはサッカー部の出し物で、ネオタイガーショットとか雷獣シュートとかファイヤーショットとかくらっていたんで、保健室で安静しております。
と言うか、人を簡単に吹っ飛ばすシュートを顔面に喰らって鼻血と脳震盪ですむ石崎君はすごい。関係ない話だが。
その結果、教師陣のトトカルチョ結果を大志が言いくるめて受け取り、現在に至るのだ。

「で、遊ぶのはいいけどさ、何処で遊ぶの?」

「フフフッ……我輩が既に確保しているので大丈夫だ。 集合は今夜6時に真目のビルの下に集合、全員ラフな格好はなるべく控えるように」

「ちょっとまて九品仏。 なぜ、麻耶のビルの下に集合なんだ?」

「それは着いてからのお楽しみと言うことで納得してくれまいか? ただ、楽しめると言う事は保障しよう、峰島由宇」

しばしの沈黙が訪れる。
この二人、何気に仲がいいといえるのではないだろうか、と思うクラスメイト達。
相性が悪いと言うわけではないが、言いと言うわけでもない。
普通と言うべきだろう。由宇の場合は頭の回転が速すぎて、いろんな意味で疎くなっているのである。
小さくため息をつき、由宇が口を開いた。

「……変な事を考えてはいまいな?」

「当然だ。 今回は色々と迷惑をかけたからな、トトカルチョとかその他色々でもうけた金で諸君をねぎらうだけだ」

「大志……普段からの言動とはかけ離れた誠意、見せてもらったぜ!!」

男子生徒が叫んだ。
その言葉だけで、普段の彼の言動が良くわかる。
にやり、と口の端を持ち上げて笑みを作った後、口を開いた。

「と言うわけで、戦士達にしばしの休息を!!」

その言葉を最後に、教室からクラスメイトが出て行った。
教室が閑散とし始める。現在教室にいるのは、フェイトとほか数人。
時間は4時半。フェイトは携帯でメールを送っていた。
ただ、『すぐに屋上に来て欲しい』とだけの旨を送り、足早に屋上へと足を向けて歩き出した。
彼の後姿をみて、マリアは少し首をかしげ、少しの逡巡の後に席を立ってフェイトの後をつけていった。































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