Doomsday
Doomsday
薄暗い部屋の中に、一人の女性が居た。
部屋の扉が開き二人の男に引きずられ、一人の青年がその中に放り込まれた。
全身傷だらけの身体で、女性と同じ蒼い髪の青年だ。
扉が閉まり、再び薄暗い部屋に戻る。
女性は青年の下へと歩み寄ると座り込み、自分の太ももに青年の頭を乗せた。
「フェイト、大丈夫?」
「あぁ・・・大丈夫だよ、マリア。 痛っ!」
「大丈夫?」
「うん、大丈夫。 口の中、切れてるみたいだ・・・血の味しかしない」
「みせて」
マリアと呼ばれた女性に言われて、フェイトと呼ばれた青年は口を大きく開けた。
紅かった。
血の色が、歯を紅く染めている。
マリアは目を閉じると、紋章術の詠唱を始めた。
数秒、詠唱が終わると柔らかな光が、フェイトを包み込んだ。
治癒術の中でも、基礎的な術のヒーリングだ。
「ありがとう、マリア。 楽になったよ」
「お礼は良いわ・・・それにしても、何時までここに閉じ込めるつもりなのかしら?」
「恐らく、僕と君の持つ力を解明し、それを応用した兵器を作るまでだろうね・・・」
「冷静ね、フェイト。 でも、私達なら簡単に抜け出せるわ」
「うん、確かに『僕達だけ』ならね。 だけど・・・あいつ等は僕達に対するジョーカーを持ってる、それを取り戻すまでは我慢するしかないよ」
「そうね、だけどあの子・・・大丈夫かしら?」
不安そうな顔で、マリアが小さく呟いた。
そんなマリアを見て、フェイトは手を伸ばしてマリアの頬に触れた。
暖かな温もり。
お互いを想い合うゆえに二人は、惹かれ合い愛し合っている。
FD人・・・この世界を、宇宙を創り出した者、創造主と呼ばれている者との戦いの最中に、二人は出会った。
最初は、とても普通ではなく、お互いの考え方や価値観の相違により、お世辞にも仲が良いとは言え無い程だった。
それでも彼らは惹き合った。
二人が引き合ったのは、お互いがお互いに無いモノを持って居たから、分たれたアンドロギュヌス・・・失われた半身だったからだ。
フェイトは、ニッコリと笑みを浮かべた後、口を開く。
「大丈夫さ、僕達が研究に協力する以上、セレナは僕達に対しての切り札になるからね・・・ごめん、疲れたから少し寝るよ」
フェイトはそういうと、マリアに膝枕されたまま、眠りに付いた。
事の起こりは1ヶ月前。
ルシファーとの激戦から6年が経過して、フェイトとマリアは未開惑星に降り立ち、生活していた。
最初は右も左も分からなかったが、1年も暮らしていれば生活にもなれて行き、そんな中で、マリアはフェイトの子を身ごもり、出産した。
名は『セレナ』と言う名前で、年は5歳。
平和な生活であったが、それを破壊したのは無くなった筈の銀河連邦の残党であった。
どこで、彼等かこの星で暮らしていると言う情報を得たのか、不意をつかれたフェイトとマリアは、愛娘であるセレナを人質にされて拘束され、現在に至るのだ。
ここでは名前で三人を名前で呼ぶ者はいないと言って良いだろう。
彼等・・・銀河連邦の残党の前では、彼らは実験素材・・・いわばモルモットにしか過ぎないのだ。
研究の為、栄えある銀河連邦の再建の為にと、大層なお題目を掲げて、何度も血液や骨髄、体液や精液を採取していった。
時間と言う概念も忘れそうになるほど、一人ならば気が狂いそうになるほどの闇の中で、フェイト達はこの場所に居た。
何時もの様に、幾つものコードを身体に付けられ、ファイトシミュレーターで戦っていた。
血を吐き、全身を痛みが支配しても、戦わされていた。
フェイトの戦いをモニター越しに見ている一人の男、無精ひげを生やした男で、どこか常人とは違う空気を持っている。
「ふむ・・・しかし、この程度の力か。 予想外だな・・・話では、バンデーンの戦闘艦を消滅させたと聞いたのだがな」
「ライア博士、被験体の心拍数が低下しています、これ以上は危険かと」
「全く・・・この銀河を救った英雄だか知らないが、6時間戦わせ続けただけでこうとはね。 ファイトシミュレーターを解除して、あの部屋に連れて行け」
「了解、ファイトシミュレーター解除します」
ファイトシミュレーターが解除され、フェイトは倒れた。
そして、何時ものようにあの部屋へと引きずられていく。
マリアはと言うと、フェイトと同じ様にファイトシミュレーターで戦わされていた。
フェイズガンを持たされ、アルティネイションの力を引き出そうとしている。
だが、彼女自身ある程度は使えるが、限界まで力を引き出させるのは無茶な話だ。
その結果、彼女も意識を失い、あの部屋へとつれられて行った。
ライアは実験の結果を見て、舌打ちをした。
このままでは、あの二人の持つ力を引き出せない。
「やれやれ、このままじゃ僕への資金提供もなくなってしまうな・・・どうしたものかな?」
そう呟き、研究結果を見直していく。
フェイト達のあの力・・・6年近く前に起こったあの戦いで出現した者達、エクスキューショナーは圧倒的な力を持っていた。
当時の最新鋭艦でさえも、その力の前には無力であった。
だが、あの二人とその仲間達は、人と同じ大きさとは言えエクスキューショナーを葬っていた。
それに目をつけたのが、ロキシとはライバルでもあるライア=マクドゥガルである。
ロキシの研究は無論知らないが、紋章遺伝子学の権威であるロキシの研究は、当時の連邦上層部のみしか知らないことだ。
その研究の成果を知る為に、自分が持つ情報網を使い、その研究を知った。
ロキシとその友人であり、時空間理論の第一人者であるクライブ=エスティードは、自分達の子どもの遺伝子を操作して、ある力を植え込んだ事を知り、ライアはフェイトとソフィア、あともう一人の被験者・・・マリアを探し始めたのだ、自分の研究を進めるために。
そしてライアは彼等を見つけ出した。
ソフィアはかつての仲間でもあり、現在では政治家としてやり手と呼ばれているクリフ=フィッターの統治するクラウストロ星で暮らしており、下手に手を出してはこちらが壊滅されないと判断し、フェイトとマリアを探しだした。
都合の良い事に、フェイトはクリエイション砲や量子魚雷を遥かに上回る力を持ち、マリアはその武器の威力を数百倍に引き上げられる・・・
それを研究し、解明すればクラウストロは愚か、エクスキューショナーの攻撃で消滅したバンデーン、アールディオンを含め、かつて連邦に加盟しなかった中立星間国家すらも、その配下に置く事が出来るだろう。
「このままじゃ、研究進まないねぇ・・・どうしようか?」
軽い口調で、ライアは呟いた。
そして、二つのモニターを見た。
一つはフェイトとマリアが写っているモニター、そしてもう一つは彼らの娘であるセレンが写っている。
セレナをみて、ライアは笑みを浮かべる。
その笑みは軽薄で、何かを思い浮かんだ顔だった。
翌日、フェイトとマリアは、再びファイトシミュレーターで戦わされていた。
過去の英雄・・・宇宙消滅の危機を救った11人の英雄達の中で剣技に秀でた三名・・・クロード=C=ケニー、ディアス=フラッグ、アシュトン=アンカース、この三名の戦闘データを入力された敵と、戦っている。
流石に、この三名の相手はきつく、フェイトはすでに肩で息をしていた。
そんなフェイトをモニター越しに見つめているライアは、少し笑みを浮かべていた。
(凄いな、あの三人の戦闘データと互角とはね。 やっぱり、君は最高の素材だよ)
心の中で呟き、ライアはキーボードを叩く。
入力していくのは、400年と少し前に惑星ロークに住んでいたラティクス=ファーレンの戦闘データだ。
レゾニアと地球連邦・・・当時の銀河連邦の事である・・・との大戦に加わり、レゾニアの元首であるジエ=リヴォースを討ち取りったフェルプール種の男で、彼は皇龍、四聖獣、七星奥義の全てを身につけた最強の剣士である。
彼の戦闘データは殆ど無いに近い、だが、彼の仲間であったロニキスはその詳細を知っており、ライアはそのデータを完全に再現する事に成功した。
フェイトと戦っていたデータが消えて、訝しげな顔を浮かべて様子を見る。
その合間にヒーリングを使い、傷を治して備えていた。
シミュレーターが作動し、敵が姿を現した。
自分と同じ蒼い髪だが、彼・・・と形容した方が言いか・・・の方は藍色に近い蒼だ。
腰辺りに生えている尻尾は、彼がフェルプール種である事を物語っている。
フェイトは油断なく剣を構えて、彼を見つめていた。
シミュレーターの起動音、それが始まりの合図だった。
剣を振るうと同時に、衝撃波が地を這いながらフェイトへと向って走る。
アルベルの使っていた空破斬と同じだが、速さが段違いで辛うじてそれを避けると、敵が走った。
振り上げの斬撃、それを受け止めるたが威力が高いため、吹き飛ばされる。
着地するが、すぐさま衝撃波が走り、それを回避。
(強い・・・それに、アルベルの使ってた技とは、威力もスピードも段違いだ!)
三度目の空破斬が直撃し、そこで意識を失った。
モニター越しから、それを見て居たライアは面白そうな顔をしている。
数分後、フェイトが目を覚まし、身体が動かないのに気付き、首を動かして部屋の中を見る。
手が届きそうなすぐ隣に、同じ様に拘束具を着せられたマリアがいた。
「マリア、マリア!!」
フェイトが、マリアへと声をかける。
何度か声をかけて、マリアが意識を取り戻した。
先程の彼と同じ様に、周囲を見回してから、隣のフェイトへと視線を戻す。
「フェイト・・・ここは?」
「さぁね、多分・・・まだ、銀河連邦の残党が所持してる戦闘艦の中だろうけどね」
「さすがだねぇ、フェイトくん。 ロキシとリョウコの息子だけはあるよ、なかなかに聡明だ」
突如、ふざけた口調の声が聞こえてきた。
二人は驚きと、僅かに怒りをあらわにして、その声を聞いている。
拘束具は硬くて、引き千切る事は不可能だろう。
小さく深呼吸をして、平常心を保とうとしているマリア。
チラリと、視線で合図を送り、フェイトは頷いた。
「父さんと母さんを知っている・・・って事は、知り合いなのか?」
「あぁ。 キミの父上、ロキシには何度も煮え湯を飲まされてね、アイツさえいなければ今頃は僕が紋章遺伝子学の権威だったろうね」
「まさか・・・ライア=マクドゥガルか?」
「おや? 僕のフルネームを知っているとはね、光栄だよ」
「父さんから聞いてるよ、人を人とは思わぬ非人道的実験を繰り返したマッドサイエンティストってね」
「やれやれ、言いたい放題言ってくれるね、あいつも」
「あら、現にこうして私達を使って、実験をしているんだもの、事実じゃなくて?」
「いやいや、コレは手厳しいね。 元クォークリーダーのマリア=トレイター嬢? いや、今はラインゴッド婦人というべきかな?」
クックックッ、と小さくライアの微笑の声が聞こえてくる。
現在の三人の会話は、お互いの腹の探り合いといえるだろう。
だが、フェイトとマリアはそれ以上に、気にかかる事があった。
ファイトシミュレーター中に意識を失った時は、必ずといって言い程あの部屋へと連れて行かれていた。
しかし今現在、あの部屋とは違う場所に拘束具を付けられて、監禁されている。
動けなくしているという事は、動かれては不利になると言う事だろう。
最悪の想定をマリアはしていた。
彼らにとっての最悪の想定、それは自分達の死ともう一つ、彼等の愛娘であるセレナを使われることだ。
人体実験にセレナを使うと言えば、まず奴らに従うしかない。
(セレナを使うつもりか・・・?)
(多分、ね・・・そうなったら、どうするの?)
(意地でもコレを破壊して、一緒に逃げる)
(わかったわ)
再び視線で会話を交わす。
と、その時だ。
部屋の扉が開いたのか、明るい光が部屋の中に差し込んだ。
大きな人影と小さな人影。
片方は大人、片方はせいぜい4〜5歳位の大きさだろう。
「セレナ!」
「パパぁ〜ママぁ〜〜」
「・・・どうするつもりなんだ?」
「なに、キミの返答しだいだよ、フェイトくん? 諦めて、僕らの実験の素材となるか、愛娘を研究の素材にするか、二者択一だよ・・・まぁ、答えは出ているようなものだけど・・・ね?」
顔が見えるのならば、彼は笑みを浮かべているだろう。
軽薄な笑みを浮かべて。
歯軋りをして、フェイトとマリアは黙り込んだ。
確かに、二者択一だろう。
だが、答えの出ている選択など、選択ではない。
ただの強制だ。
しかし次の瞬間、マリアの拘束具が崩れ落ちて行った。
動揺をみせ、セレナの隣に立っている男へと走った。
フェイズライフルを構え、トリガーに指かけた瞬間、火玉が飛んで来た。
原因はフェイトである。
彼の眼前に、炎を司る紋章が描かれていた。
スキルブックと呼ばれる書物を読めば、紋章術の基礎程度ならば、すぐに使えるようになる。
以前の激戦の最中、フェイトはそれを読み紋章術を覚えた。
「はぁッ!」
マリアが足を振り上げ、フェイズライフルの銃口を蹴り上げると、身を捻り軸足だった足で回し蹴りを放つ。
だが、その足は空を切り、男は拳を握ってマリアの顔へとそれを振るおうとしたその時、空を切った足が逆の側頭部を蹴った。
防御できず、それをまともに喰らい、フェイズライフルを手放した。
空中でライフルを掴むと、銃口をその男へと向けて、トリガーをためらう事無く引いた。
バシュン
無機質な音が聞こえ、血飛沫がマリアの頬を、服をぬらした。
普段の彼女からは考えられないほどに、冷徹で、人を殺したと言う概念も、当然と言う表情だ。
セレナの方へと視線を向けると、姿が無かった。
マリアは小さく息をつき、死体となった男の服をあさる。
元連邦の男の装備品は、ライフルとは別にフェイズガン・・・しかも、最高傑作と歌われているハンドメイドのカスタムフェイズガンのドラグーンレイザーだ。
マリアは、ドラグーンレイザーを手に取ると、トリガーに指をかけて何度か照準を合わせて、トリガーに指をかける。
数分程そうしていたが、扱いに慣れたのかようやくフェイトの元へとやってきた。
「あのさ、もう少し夫の心配もしたらどうかな?」
「心配してたわ」
「ならいいけど・・・って、それより早くコレ外してくれないかな?」
「あ、ごめんなさい」
そういい、マリアは手をかざす。
アルティネイションの力が発動して、急速にフェイトの拘束具が腐食していく。
ボロボロと崩れていき、フェイトは立ち上がり、肩を回した。
ふぅ、と小さく息を吐くと、フェイトは武器が無いかと、辺りを見回した。
やはり何も無い。あるといえば、先程の死体だけだ。
恐らく、ライアはこの展開を予想していたのだろう、だからこそ兵士が一人だけだったのだ。
マリアは瞳を閉じ、フェイズライフルにアルティネイションを施す。
すると、フェイズライフルのエネルギーが銃口から流れ出て、刃を象り硬質かしていった。
「はい、これ」
「ん、コレは・・・?」
「フェイズライフルのエネルギーを硬質貸した武器よ、いうならフェイズブレードかしら?」
フェイズライフル・・・いや、フェイズブレードを受け取って、フェイトは何度か振るう。
銃なため、持ち方を何度か工夫する。
だが、やはり持ちにくい事は確かだった。
トリガーに指をかけて持ち、入り口へと向って歩ていく。
廊下に出て、左右から敵が来ないか確認し、フェイトとマリアは廊下を歩るき、艦内を散策する。
娘のセレナの居場所が分からない。
「どうする、マリア?」
「頭を抑えれば、所詮は烏合の衆。 目指すはこの艦のブリッジよ、私達なら簡単な事よ!」
マリアは叫びながら振り返り、ドラグーンレイザーを撃つ。
フェイズガンとは思えないほどの反動があったが、ハンドメイドのカスタムフェイズガンだけあり、流石に威力は高い。
ドラグーンレイザーの銃口をの先を更に替え、マリアは再びトリガーを引く。
連射。
反動が手首を攻め立て、痛みが発生するがそれを無視し、更にトリガーを引いた。
フェイトはと言うと、フェイズブレードを構えたまま動かない。
様子を伺いながら、マリアの背中を護るようにして立つ。
目を細めて直線状を見つめていると、足元から闇が発生して渦巻き始める。
ソレはだんだんと大きくなっていき、闇が蠢く。
直後、フェイトの姿が消えて、遥か先の廊下にフェイトの姿が現れ、そこに居た敵を斬り捨てた。
鮮血が廊下に零れ落ちる間、フェイトは斬った男に背を向けて、再びフェイズブレードを振るった。
再び鮮血が飛び、フェイトの服を汚す。
フェイズブレードを振るいながら、命を刈り取っていく。
同じ人を殺し、フェイトは何故か、笑みを浮かべていた。
本当になぜかは分からない、マリアも同じ様に笑みを浮かべている。
フェイズブレードを振るうたびに、ドラグーンレイザーのトリガーを引くたびに、命が刈り取られていく。
二人の蒼い髪の死神に魂を刈り取られる。
全て殺し終えて、二人はブリッジへと向って歩いていく。
「フェイト・・・」
「なんだい?」
「こんな血に濡れた姿、あの子に見せられないわね」
「・・・そうだね。 だけど、僕達は今冷酷にならなければいけない、あの子を護る為に」
確固たる意思を持った表情で、フェイトが答えた。
彼の横顔を見て、マリアは真っ直ぐと前を見る。
フェイトと同じ確固たる意思を持った顔で。
ブリッジへとたどり着き、ドラグーンレイザーの銃口をオペレータに向ける。
「今このときを持って、この艦は私達が制圧したわ。 抵抗があるなら、私の手によって死ぬ事になるわ。 さぁ、選びなさい・・・私達に従うか、死を選ぶかをね」
脅迫、と言えるそれだが、誰一人として席から立ち上がろうとはしなかった。
恐怖が身体を竦めさせているのだ。
「決まりだね。 この艦は僕達の支配下に置かせてもらうよ、まぁ支配下と言っても君達の自由は保障するし、君達の命を奪う事はしないさ。 僕達に抵抗しない限りはね」
「それと、本艦の名称を変更します」
「・・・そうだね。 名前は・・・『アヴェ・マリア』でいいんじゃないかな?」
フェイトがにこやかな笑みを浮かべ、言い切った。
隣に立つマリアは、小さくため息をつく。
兎にも角にも、二人は艦を乗っ取った事を宣言した。
それから情報を引き出して、フェイト達は艦のトランスポーターを使って、旗艦へと乗り込んだ。
装備品はというと、マリアはドラグーンレイザーではなく量産されているグラビティレイザーと動きやすさを重視してチェインアーマー、フェイトはフェイズブレードではなく量産型のシルヴァランスとミスリルアーマーを装備している。
ストレイヤーヴォイドでフェイトが斬りこみ、マリアがその援護。
インビジブルの戦闘要員を全て斬り伏せ、ライアのいるラボへと足を踏み入れた。
その中央に、椅子がありその椅子に少女が座らされているのを見て、二人は声を出した。
「「セレナ!!」」
二人は椅子に座るセレナに走りよっていく。
警戒心は、殆ど無いといってよかった。
「セレナ・・・セレナ!!」
マリアが、動かなくなった愛娘の身体を抱いた。
冷たく動かなくなった身体。
フェイトは首筋に手を当てて、脈をはかる。
もしかして、と言う感情があった。だが・・・脈は無かった。
もう、あの愛くるしい笑顔を見せる事は無い。
二人の中で、何かが音を立てて崩れて行った。
フェイトが涙を流しながら、マリアの肩に手を置いた。
「セレナ、セレナぁ! 死んじゃだめよ・・・目を開けて・・・お願いッ!!」
「もぅ・・・死んでる、僕達の子は死んでいる」
「いや・・・イヤぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁッ!!」
マリアが涙を流しながら叫んだ。
その声をきっかけとして、フェイトの・・・彼の持つディストラクションの力が、開放された。
光が収束してしき、彼の背中に発生する。
それは恰も翼のように羽ばたき、光の羽を撒き散らした。
その光の羽が、空中で静止してまばゆい光を放ち始める。
「許さない・・・僕は、貴様らを絶対に許さない!! 僕達の人生を壊し、愛する娘を奪った貴様らを・・・絶対に許しはしない!!」
一筋の涙がきっかけとなり、堰を切ったように涙が溢れ、止まらなかった。
フェイトが叫び、無数の光が玉となり強い輝きを放ち始めた。
ライアは歓喜の顔で、その光景を見ている。
邪悪な意思、邪悪な笑み、ライアは笑っていた。
この後すぐに起こる惨劇を知らずに。
「・・・こ、これは!?」
「ん、どうしたんだい?」
「
あ、あの光の球が一つ一つが、クラス3を超えたエネルギーを持っています・・・あ、クラス4を超えてまだ上昇しています」
「素晴らしい・・・素晴らしいぞ、フェイト=ラインゴッド! ロキシ、お前は素晴らしい素材を残してくれたよ! フハハハッ・・・アハハハハハハハハハハッ!
狂ったように、ライアが笑い出した。
マリアの周囲にも、光が発生する。
アルティネイションの力が、発動したのだ。
無数に浮かぶディストラクションの超エネルギーの塊から、己の身を護る為に、亡き娘の遺体を護る為に、力を引き出した。
更には、無数の光球の力を引き上げていく。
「クラス5.5・・・クラス6.1・・・だ、ダメです、エネルギーの上昇が早すぎて計測装置を振り切りました!!」
「そうだ、見せてみろフェイト=ラインゴッド、マリア=トレイター! 君達の力を、僕に見せろ!!」
「お前は・・・調子に乗りすぎた・・・セレナの死は、貴様らの命をもって償ってもらう!」
フェイトが叫ぶ。
更に光が強くなった。
「アハハハハハッ! ロキシ、お前は凄いよ。 こんな凄まじい力が、人の創り出したモノとはな・・・さぁ、見せろ! 創造主とやらを殺した貴様の力を!!」
ライアは、そう叫び両腕を広げる。
フェイトは閉ざされた空、部屋の天井を見上げて、光の翼を羽ばたかせた。
ソレと同時に、無数の光の球が流星のように飛んだ。
触れるもの全てを消滅させ、研究施設はおろか周囲を取り囲んでいた銀河連邦の残党の艦隊すらも消滅させていった。
フェイトの背に作られた光の翼が、大きくなっていき分裂していく。
2枚六対の翼・・・それは、明けの明星とも、宵の明星とも言われているルシフェルを表しているかのようであった。
触れた者全てを消滅させていく圧倒的な力の流動、その後に残ったのは静寂であった。
その力は、銀河系は愚か遠く離れたクラウストロやエリクール星系でさえも観測できたと言う。
フェイトとマリアのいる空間は、何事もなかったかのように静寂を取り戻した。
嗚咽が聞こえてくる。
フェイトの、マリアの嗚咽。
愛する娘を失った親の哀しみが、そこにあった。
宇宙空間であるにも拘らず、二人は呼吸を行っている。
マリアのアルティネイションの力で、宇宙空間でも生きながらえられる様に、改変されていた。
「フェイト・・・なんで、何でセレナが死ななければいけなかったのッ?! この子は・・・私達の娘は、何の関係もなかったのにッ!!」
「僕達の力が、あいつ等を呼んだ。 この広大な宇宙を征服するために、僕達の力を欲した・・・その結果なんだよ、コレは」
「だからって・・・だからって、この子はまだ五年しか生きていないのよ? もうすぐ、六回目の誕生日だったのに、何故、死ななければ・・・ならなかったのッ?!
「僕は・・・無力だ。 自分の子を護れないんだ・・・」
「あなたの・・・せいじゃないわ。 欲に駆られた人間が、人が人を支配しようとする事が、間違っているのよ」
「確かにそうだ。 だけど・・・僕は・・・僕は自分が許せない、娘を護れなかった自分自身をッ!!」
フェイトが叫び、涙を流した。
強い哀しみ、ただそれだけがあった。
マリアがセレナの遺体を横たわらせて、フェイトを抱きしめる。
子どものように泣き続ける彼は、とても弱く見えてしまう。
あの戦いで最後まで諦めなかった彼がとてもとても、弱かった。
フェイトの嗚咽は、消えることはなかった。
それから数年後、審判の日は訪れた。
下された判決は・・・銀河連邦残党の全ての滅亡。
ライア=マクドゥガルはあの惨状を生き延びた。
採取した二人の精液と体液を使い、クローンを作って居たのだが、それは彼等の怒りを買うだけであった。
一切の躊躇も無く、フェイトはディストラクションの力を持って、クローンを全て消滅させた。
「何か言い残すことは無いかしら?」
「ま、まて、フェイト=ラインゴッド、マリア=トレイター! お前達の娘の細胞がいまここにある、これを使えば、お前達の娘は戻って来るんだぞ?!」
「僕達の娘は死んだ。 そして、僕とマリアも死んだ・・・今ここに居るのは、たんなる宇宙海賊だよ。 お前達、新生銀河連邦を憎むね」
「そうね、アナタは絶対にしてはいけないことをした。 それはね、私達を完全に怒らせた!」
マリアは怒りを露にして、叫ぶ。
彼
女の頬を一筋、涙が零れ落ちる。
愛娘を失った悲しみ、それは二人を復讐へと駆り立てた。
そして、その日・・・彼らの復讐は終わりを告げた。
「フェイト・・・これからどうする?」
「どうもしない、アヴェ・マリアから降りてまた未開惑星で暮らそう・・・この数年、僕達は復讐の為だけに生きた。 これからは、新しい生命のために、精一杯生きていこう」
フェイトは涙を流して呟く。
復讐は終わり、二人は再び未開惑星に降り立った。
願わくば、二人に平穏な日々を・・・
了