GUN BRAVE RELOAD
アヴェンジャーの反乱が始まってから、半年近くが過ぎ、その間に大きな動きを見せる事も無かった。
アルフェスとJ・Dの傷も完治して、最近では二人して身体を鍛える事が多い。
と言うのも、二人とも傷を負った為に筋力が著しく低下していた、と言うのがその答えだ。
青空が広がっており、杏子はたまっていた洗濯をして、バルコニーに出て洗濯物を干している。
アルフェスはトレーニングルームに篭って身体を鍛えており、もうすぐ腹をすかして出てくる頃と判断して、洗濯物を干し終えると台所に入り料理を作り始めた。
コトコトと鍋が噴き、火を弱めると調味料を入れて、そのまま弱火で煮る。
時折味を見て、鍋が噴かない様に気をつけながら、手の込んだ料理を作っていく。
ほぼ全部作り終えて、アルフェスが汗を流してリビングへと顔を出した。
「くはぁ・・・やっぱ、身体衰えてるな」
「そりゃそうでしょ、前線退いて探偵まがいの事してるんだから」
「あのな、探偵まがいじゃなくて探偵なんだよ、私立探偵」
「だから非合法な依頼が多いのよね」
「うるせぇ・・・」
図星を疲れたのか、アルフェスは少しムッとした顔で答えた。
杏子は少し笑みを浮かべると、出来上がった料理をテーブルに広げていく。
箸を器用に使い、アルフェスは昼食を摂って行く。
杏子はアルティナの寝ている部屋に行くと、彼女を起こしてリビングへとつれてきた。
一緒に暮らし始めて半年以上が経過し、少しだけ分かった事がある。
寝起きがすごく悪い。
ボーっとした顔で椅子に座ると、箸を持ったまま眠っている事があり、椅子に座らせて暫く放って置くと、目を覚ますのだ。
そんな平穏な日々、悪くは無いと思っていた。
だが、最終決戦は近い。
アルフェスは直感的にそれを感じており、今また戦場で『真紅の戦神』と呼ばれ、恐れられた最強の傭兵に戻るつもりなのだ。
そしてその日から数日後、アルフェスたち四人はアヴェンジャーの本部の目の前に居り、アルティナは何ともいえない顔をしている。
「・・・本当に、ここがアヴェンジャーの本部なのか?」
「あぁ、まちがいねぇ。 あの古びたジェットコースターなんか、ギシギシいってある意味でスリル満点だぜ?」
そういい、アルフェスは笑みを浮かべ、マガジンを引き抜いて残弾を確認する。
J・Dも杏子も同じ様に、代えにマガジンを調べている。
アルフェスは、懐のホルスターに収めていたシュヴァルツ・シャイン(漆黒の閃光)を抜いて、感触を確かめた。
昔から使っているリヴァイダー。
『Reject Exceed Vandal Agony Destruction Energy Rifle』
頭文字だけをとり『REVADER』と呼ばれている古代文明の遺産と呼ばれるオーパーツで、製作した者は不明。
そのエネルギーは、近年開発されたデストラクションブラスターをはるかに凌ぐ威力を持っており、それ単体でATを簡単に破壊するエネルギーを放射する力を持っているのだ。
古代文明の遺産、そして最強の武器。
その形状はさまざまで、銃状の武器が主だが中には剣型の物もあり、使用者の精神状態等を感知してその形状を変える。
エネルギーの拡散放射、そのエネルギーを圧縮して撃ちだす弾丸、エネルギーを硬質化させて剣に代えるリヴァイダーもある。
アルフェス、J・D、アルティナの持つリヴァイダーはエネルギーの拡散放射と圧縮して撃つ出す、と言うタイプの物だ。
アルフェスは自分の持つシュヴァルツシャインとは違う物を、杏子に渡した。
ディーヴァルが持っていたリヴァイダー・ブルーブラッド(蒼い血流)だ。
「え、これって・・・私に扱えるの?」
「お前なら大丈夫だ、必ず扱える」
「ま、アンタがそういうなら、大丈夫ね」
そういうと、予備のホルスターにそれを収める。
アルティナとJ・Dは、車を降りて目の前にある巨大な遊園地を見ていた。
J・Dは慣れているので、何の感覚も無いが、アルティナは少しどころかかなり呆れているようだ。
目の前にあるのが遊園地なのだ、当たり前と言えば当たり前だろう。
ため息を付いた後、アルティナは背を向けた。
J・Dは彼女が後ろを向いたのを確認し、ゴーグルを外して天を仰いだ。
空に、一騎のATが存在しているのを視認していた。
見た事があるATで、それはJ・Dしか知らないものだ。
「アレは・・・アイツか? 全く、僕によほど執着があるみたいだね」
そう呟いて、ゴーグルをかけなおして、J・Dはリヴァイダーを抜いて空へと向けて、トリガーを引いた。
真紅の閃光が空へと飛んで、そのATを掠めた。
爆発音が響き渡り、それが戦いの合図となる。
アルフェス達四人はその場所で別れ、四人は司令官室を目指し、走り出した。
連続して響く銃声。
光を翼と化して、その銃弾を全て遮ると同時に、無数の光弾を発射する。
爆発が連続して発生し、AT用の炸裂弾が着弾したように、爆発がすさまじい。
あの日、隆一ともう一人と対峙した時から、彼女の能力の力の上限が上昇しており、その威力は恐らく攻撃系能力者の中でもトップクラスの破壊力を持っているだろう。
「・・・こんなにも、破壊力は無かったはずだが」
破壊しつくされた場所を見て、ポツリと呟くと、再び走り出した。
J・Dはと言うと、頭をかいて自分を取り囲んで居る者たちを見回す。
マシンガンにショットガン、中には対戦車用のライフルを持っている者も居り、ため息をついて銃を放り投げると手を上げた。
その動作を見ても、銃を下ろす気配は無い。
意を決したのか、J・Dは威力の高い銃を持つ者へと腕を伸ばした。
すると、袖口から光景の小さな銃が飛び出し、トリガーを引いた。
銃から発射された弾丸は、眉間を貫き、そのまま落ちていた銃を蹴り上げて、空中で掴むとそのまま標的を定めずにトリガーを数度引いた。
連続して発生する銃声、目くらましの意味合いをかねて、あいた右手でリヴァイダーを抜き、床へと向けて発さした。
爆発が発生し、コンクリート片を飛び散らせて、近場にある柱の陰に隠れた。
リヴァイダーをホルスターに収め、気配を殺して相手の動きを調べ始めた。
(ふぅ・・・流石に、人数が多いから司令室まで行くのに時間がかかりそうだね)
心の中で呟くと、炎を纏って柱から飛び出した。
爆炎を走らせて相手を威嚇して、銃を撃つ。
正確に眉間を貫いていき、相手に死を与えていく。
敵の銃弾は、炎により融解しており、J・Dには届いていない。
敵陣を突っ切って、ただ全力で逃げた。
流石に、あの数を相手にしては、すぐに弾が切れるため、相手にはしない方法を選んだのだろう。
杏子、アルフェスも同じ方法を選んでおり、アルティナは自分の能力をフルに活用して、立ち塞がる者達に等しく死を与えていた。
やはり、アヴェンジャー創設者にして、最強と名高いアルフェスを倒す事は無理だった。
杏子はアナハイラスの囚人と交戦しており、銃を撃つとその場所を飛びのいて移動し、再び銃を撃つ。
「クケケケケケケッ! 杏子ぉっ、テメェはいい女だぜぇ、それでこそ俺の女にふさわしいぜぇっ!!」
「冗談! アンタみたいなヘンタイ嗜好の男の女なんて、こっちから願い下げよ!!」
「クハハハッ、その気の強さもいいぜっ、ますます俺好みだぜ!!」
銃を撃ちながら、アナハイラスの囚人が叫ぶ。
杏子は生理的悪寒を感じながら、ネルヴァード=シルバーの攻撃を防いでいた。
ライトシールドを発生させて、弾丸を防ぎながら、間合いを調整している。
絶対に避けられない位置と距離と確信して、杏子は切り札を使う!
「この位置、この距離で私のジョーカーをよけられるかしらッ!?」
腰の裏にあるホルスターから、ディーヴァルが使っていたリヴァイダー・ブルーブラッド抜いた。
銃口に青い光が集約、ソレが開放されてネルヴァードの右腕を巻き込んで、ソレは直線上にある物を破壊していき消えた。
その圧倒的な威力を見て、杏子は驚きを隠せなかった。
これほどまでに強力な武器を使い、アルフェス達は戦っていたのだ。
一歩間違えれば、致命傷どころかこの世から消滅してもおかしくは無い。
杏子はブルーブラッドをホルスターに納め、銃を抜いて油断無くネルヴァードの姿を探す。
能力を使い、数秒先の未来を視た。
(後ろっ?!)
横っ飛びでそれを交わし、銃口を向けてトリガーを引いた。
ネルヴァードの腕を足を貫くが、動きは止まらず杏子の腕を掴み、壁へとたたきつけた。
衝撃で意識が飛びかけたが、何とか意識を保ち、銃口をネルヴァードへと向けてトリガーを引いた。
速射を行い、五発の銃弾がネルヴァードへと飛んだ。
致命傷になる物だけを選び、手に装着しているライトシールドで防いで、拳を握りこんで杏子へと叩き込んだ。
身体が一瞬中に浮いた感覚があり、ソレが消えると壁に叩きつけられ、全身を痛みが駆け抜けた。
口から血をこぼし、杏子はネルヴァードを睨みつけて、銃をホルスターへと収めた。
命を捨てる、と言うわけではない。
ただ全神経を目の前の敵に集中しているのだ。
それを理解したのか、ネルヴァードは黙り込んだ。
時折、爆発に近い衝撃があり、それを合図にしてネルヴァードが仕掛けた。
銃口を杏子へと向ける動作、その動作をはるかに上回る動きで、杏子は銃を抜いてトリガーを引いていた。
銃声が響き渡る。
杏子の肩を銃弾が貫き、血が流れ落ちていく。
傷口を押さえて、ネルヴァードをにらみつけた。
「クカカカカッ! 音速の銃士(ソニック・ガンナー)とはいえ、人の子だよナァ?」
「くッ・・・」
「さぁ、お前の選択肢は二つだ。 俺様の女になるか、此処で俺様の手によって死ぬか、だ」
「・・・フフフッ、アハハハハハハッ!!」
「なんだぁ? 気でも狂ったか?」
「アンタの女になる位なら、死んだほうがマシよ!!」
「そうか、なら・・・死ねや、音速の銃士ッ!」
ナイフを一閃。
杏子の首筋を狙った一撃は、致死の一撃となるはずであった。
肩の傷の痛みを無視して、杏子が腕を振るった。
その手には、いつの間にか抜いていたブルーブラッドがあった。
銃口には既に蒼いエネルギーが、集中しておりそれが、開放されてネルヴァードを襲う。
とっさに、身を捻ってその一撃を避ける。
だが、ナイフを持っている右腕が巻き込まれ、右腕が消滅した。
受身を取って、立ち上がるが、既に第二射に入っており、横へと飛ぶ。
ブルーブラッドのエネルギーが駆け、ネルヴァードは銃を抜くと杏子へと向けて、撃った。
杏子を貫くはずの銃弾が、何かによって弾かれた
「甘いわね」
「リフレクターシールドかッ?!」
「これで・・・ジ・エンドよ、ネルヴァードッ!」
青いエネルギー流が、ネルヴァードを飲み込んだ。
リフレクターシールドを張るには遅すぎ、ネルヴァードは強力なエネルギーに飲み込まれ、この世から消滅した。
肩の傷口を押さえ、目を閉じて一息つくと、傷口を押さえながら、先へと進んでいき医療室へと足を向ける。
その頃、アルフェスは辺りを警戒しながら、廊下を歩いている。
長い廊下の先に、大きな扉があった。
少し笑みを浮かべて、扉を開けて中に入っていく。
広い空間に出て中央に、巨大な剣を持ち、修道服を着た女性が、佇んでいた。
その女性は、剣を抜くとその切っ先をアルフェスへと向けた。
微動だにせず、自分の身長よりも大きく長い大剣を片腕で振るっており、その細腕のどこにそんな力があるのか、疑いたくなる。
彼女を見てアルフェスは驚いた顔を見せ、口を開いた。
「マリア=ラザフォード・・・か。 まいったな、女とは殺り合いたくは無かったんだがな」
「総司令、お久しぶりです」
「あぁ。 で、お前は俺と戦うのか?」
「・・・はい。 私は、アイツにはまだ及ばない、ですが・・・」
「俺を倒せれば、お前の言う『ビショップ』に勝てる、って言うことか?」
「・・・」
無言を肯定と判断したのか、アルフェスは頭を掻きながら、銃を抜いた。
自然な動きで、銃口をマリアと呼んだ女性へと向けて、トリガーを引いた。
一発の銃声、その弾丸はマリアが床に突き刺した巨大な剣・聖十字剣(クロイツ・シュヴェールト)の刃により防がれ、柄を握るとアルフェスへと疾駆する。
恐らくは、ワゴン車並かそれ以上の重さはある巨大な剣を片手で引き抜き、勢いを付けて上段からの一撃を放つ。
斬撃を回避して、アルフェスはマリアの懐へと疾駆して、掌底を腹部へとたたきつける。
衝撃が身体に浸透する。
おもわず剣を手放しそうになるが、辛うじて剣を握り剣を上半身のばねだけで横薙ぎに振るった。
しゃがみこみ、その斬撃を回避したが、それを予測していたのだろう、マリアの膝蹴りがアルフェスの顔面を襲う。
首に力を込めてその威力を殺すが、流石にあの怪力の前ではそれも空しく、アルフェスの身体が宙を待った。
背中から叩きつけられ、受身も取れず、咳き込みながら立ち上がる。
「とべ、聖十字鎖(クルス・チェイン)!」
「なにっ?!」
油断していたのか、アルフェスの身体に鎖が絡まる。
マリアは、鎖を握ると片手で振り回し、アルフェスを壁にたたきつけた。
鮮血を口から吐き出し、アルフェスは身もだえするまもなく、反対側の壁に叩きつけられた。
十数回ほど壁に叩きつけられ、意識が混濁し始めており、アルフェスは朦朧とした意識の中で声を聞いた。
何故かは分からないが、その声は以前にも聞いた事があるような気がして、アルフェスは意識が遠のいていった。
突然、マリアはアルフェスに絡めた鎖を外し、彼の身体はそのまま壁に叩きつけられ、地面へとズルズルと落ちていった。
倒れたまま動かないアルフェスを見て、マリアは背を向けてこの場所を去ろうと、扉に手をかけた瞬間、背筋が凍るような殺気が叩きつけられ、マリアは振り返る。
倒れていたはずのアルフェスが立ち上がり、マリアを睨みつけていた。
その目に見つめられただけで、身体が動かなくなる。
一歩、足を踏み出した。
ただそれだけの動作だけ、それでも、今まで感じた事の無い恐怖を感じた。
「あ・・・あぁ・・・・う」
「マリア、覚悟は出来てるな?」
「う、うぅ・・・うぁぁぁぁっ!!!」
勇気を奮い立たせ、聖十字剣を掴むと、アルフェスへと向かって疾駆し、跳躍して全力で剣を振り下ろす。
アルフェスは微動だにせず、それを受け止めた。
片手で、しかもライトシールドを使用せずに生身の掌で、マリアの強大な腕力と跳躍による威力を増した巨大な剣の刃を防いでいた。
身の毛がよだつ程の恐怖。
アルフェスが手を伸ばして、マリアの手首を掴むと、笑みを浮かべた。
ソレとほぼ同時、マリアの意識は混濁とした闇へと落ちていった。
気を失い、倒れたマリアを見下ろすアルフェスの瞳は、真紅に染まっている。
「ヴォォォォォォォォォォッ!!!!!」
アルフェスが咆哮(ほ)えた。
その咆哮は、本部の内部に響き渡った。
J・Dはその咆哮を聞きながら、銃を連射した。
そのまま走り、炎を纏わせた腕を振るい、炎を走らせた。
燃え盛る炎が道を作り、その炎の上を走っていく。
拳を握り、J・Dは再び腕を振るい、炎を集中させた拳をコンクリートの壁へとたたきつけた。
炎が爆ぜてコンクリートの壁を破壊して、破片を辺りに飛び散らした。
天井へとリヴァイダーを向けて、威力を低く意識して発射した。
爆音、巨大なコンクリの塊が落ちてきて、先程の穴を閉ざしたとほぼ同時くらいに、アルフェスの咆哮が耳に付いた。
「これは、アルフェスさんの声・・・?」
先程の咆哮(さけ)びを聞いて、J・Dは呟いた。
と同時、辺りに目を配らせた。
十数人、いや、もしくはそれ以上の人数が、彼を取り囲んでいた。
銃口は全て、J・Dに狙いが定められていた。
ため息をついて、銃とリヴァイダーをコンクリートの床へと放り投げた。
カツン、と言う音が響き、連続した銃声が響き渡る。
J・Dは足元から爆炎を発生させて、銃弾の速度を殺して跳躍した。
両腕に炎を宿らせて、腕を振るい炎がほとばしる。
爆炎にまぎれて、銃とリヴァイダーを拾い上げると、トリガーを引いた。
真紅のエネルギーが銃口に集約して行き、ソレが解放された。
爆発的なエネルギーが解放され、全てを巻き込んで消滅させていく。
エネルギーの放射が終えて、J・Dは周りを見てため息をついた。
「流石に・・・やりすぎたかな?」
そう呟いて、黒焦げになった部屋を見つめたあと、部屋を出て行った。
一方、アルティナは能力を使いすぎたためか、意識が少々混濁し始めており、誰にも気付かれないような場所で十分程度仮眠をとった後、先を急ぎ始めた。
銃を抜き、連射しながら敵の真ん中を強行突破し他と同時に、後ろへと振り向いてエンジェルウィングを発射した。
光凰翼と同じ様に、無数の白いエネルギー球が飛んだ。
爆音が次々に轟き、コンクリートの壁や床を破壊していき、無数のコンクリートの破片を撒き散らしていた。
リヴァイダーをホルスターに収め、背を向けると同時に何か嫌な予感を直感、と言うべきか本能的に、と言うべきか、言葉では言い表せない感覚を感じてアルティナは能力を行使したとほぼ同時、銃弾がアルティナの肩を掠めた。
光弾を一つ作り出すと弾丸が飛んできた方向を予測して、その光弾を飛ばした。
耳を劈くような爆発が発生し、再びコンクリートの破片が飛び散った。
そのまま能力を固定して、その方向と走る。
突然、ナイフが飛んできて、ナイフを光凰翼を使い防いだが、銃を持った人物がアルティナの懐へと入り込み、銃口を顎に突き付けた。
「貴様はッ?!」
「遅いぞ、アルティナ!」
銃声が轟く。
鮮血が飛び散り、アルティナの頬を掠めた銃弾は、天井にめり込んだ。
意識が銃の方に向けられていた隙に、ナイフの硬質的な感触が、喉元に突きつけられていたのに気付き、冷や汗を流す。
恐る恐る、その敵に視線を向けると、見た事のある顔がそこにあった。
「オルフェ・・・」
「フンッ、弱い。 貴様、今まで何をしていた?」
「・・・・・」
「こたえる気は無い、か。 まぁ、いいだろう、アルティナ貴様は・・・」
「それ以上言えば、私はここでお前を殺す・・・」
「いいだろう、やってみろ虐殺の堕天使(ジェノサイドエンジェル)!!」
オルフェと呼ばれた男が、銃を抜いてアルティナへと向ける。
微動だにせずに、アルティナはオルフェの身体をみている。
光凰翼を発動したまま、アルティナは立っており、その能力(ちから)を知っているため、オルフェは警戒していた。
トリガーにかけた指に力を込めて、銃を撃つ。
その僅かな動きを見切り、アルティナは光凰翼を使い、その銃弾を防ぎそのまま、攻撃行動へと移る。
光弾を発生させずに、光凰翼自体による攻撃に意表をついたらしく、左腕を巻き込まれて、鮮血と肉片が飛び散った。
僅かなうめき声を上げて、オルフェは吹き飛んだ左腕を見て、少し笑みを浮かべた後、アルティナの顔を見た。
「クククッ・・・なるほど、能力の使い方は完璧、と言うわけか。 だが、能力者には欠点があると言うのを忘れたわけではあるまいな?」
「忘れるわけは無い。 漆黒の雷皇(ザ・ブラック・オブ・プラズマ)の能力者であるお前も、そうだろう?」
「俺の漆黒の雷、浴びてみるか?」
オルフェがそう呟いた瞬間、アルティナはリヴァイダーを抜いて、トリガーを引いた。
無数の白い光弾ではなく、エネルギーが粒子砲の様に飛んでいく。
漆黒の雷を発生させて、リヴァイダーの超エネルギーの進行方向を歪ませ、アルティナの攻撃を防ぐとすぐに漆黒の雷が襲い掛かった。
右腕が肘辺りまで巻き込まれ、アルティナは苦痛の表情を浮かべ、オルフェへと銃を速射した。
雷の障壁を作り、それを防ぐと拳に雷を纏わせ、アルティナへと疾駆する。
迫り来るオルフェを肉眼で捕らえ、あの時の感覚をよみがえらせる。
炎をイメージし、それを光凰翼に上乗せした。
すると、光が構成していた翼が、激しく燃え上がった。
光翼弾の応用で、無数の炎の塊を自分の周囲に作り出し、それを発射した。
炎が軌跡を残して、オルフェへと向かい飛んだ。
「鳳翼炎弾(フレア・ブリット)!」
「なにッ?!」
意表を突かれ、ぎりぎりの所でそれを回避するが、熱波は確実にオルフェを痛みつけていた。
炎が周囲にあるものを焦がし、消えるとオルフェが不敵な笑みを浮かべ、アルティナへと向き直る。
その顔を見て、アルティナは黙り込んだ。
「クククッ・・・アハハハハハハッ!」
「・・・何がおかしい?」
「いや、お前もずいぶんと、なんていうかな。 人間らしくなったもんだ、と思ってな」
先程とは一変して、砕けた口調になっていた。
軽くため息をついて、アルティナは銃口をオルフェの足元へと向けて、速射。
弾丸がめり込み、オルフェはタップダンスの様に踊るように、足を動かしていた。
マガジンを交換してから、硝煙が上る銃口をオルフェの眉間に押し付けた。
「熱ッ、あぢぃって!!」
「黙れ、殺すぞ」
「殺す気もねぇクセに言うなっての」
「本当にそう思うか?」
「冗談・・・じゃないの?」
「あぁ、私は冗談が嫌いなんでな」
そういい、目を細めてトリガーにかけた指に、力を込めた。
銃声が響き、オルフェは笑みを浮かべ、アルティナの手首を掴んでおり、その銃口は天井を向いている。
「おい、マジで撃つか、普通?」
「さっき言っただろ、私は冗談が嫌いってな」
「全く・・・そういうところ、少しは直せよ? そうじゃねぇと、彼氏できねぇぞ」
「うるさい、お前には関係ない。 そこをどけ、通してもらうぞ」
「あぁ、別にいいぜ。 あいつ等に尻尾を振る義理なんざねぇからな」
「オルフェ・・・死ぬなよ」
「お、なに? お前、俺に惚れてんの?」
「・・・頭は大丈夫か、精神病院で診察してもらえ」
「あらら、何か扱い酷くねぇ? 一応俺はお前に銃器とかの扱い教えたのに」
「そんな物は過去の話だ。 それに、教えてもらったといっても、安全装置の解除だけだったが?」
「そ、そうだっけ?」
「あぁ。 殆ど独学だ、コレの使い方もな」
そういいながら、リヴァイダーに手を当てた。
彼女のリヴァイダーは『光翼の堕天使』と呼ばれる物で、その特性は彼女のもつ能力とほぼ同じであり、偶然、と呼ぶよりも必然的、と呼べる物だ。
遺跡を暴き、彼女はそれを手にした瞬間に、自分とは違う誰かが、自分の中で目覚めた感覚がしたらしく、ソレがきっかけで彼女は能力に目覚めたのだ。
ある学者によると、世界中に居る能力者の数は数千万とも言われており、その大半はリヴァイダーを所持、もしくは一度は所持した者達であり、リヴァイダーは所有者の潜在的な力を感知するとそれを開放し、能力に開眼させると言う学説を発表した人物が居り、恐らくはその学説は的を得ているとは言えるが、リヴァイダーの数には現在確認されているだけで、300程度の数しかない。
それでは、数千万もの人数が、たった300しかないリヴァイダーに触れた、と言うことになってしまう。
また、数千万の内の半数以上が、西部大陸にある世界最古とも言われ、世界最強の軍事力を持つと言われている『エルシェント帝国』と呼ばれる国にすんでいる。
炎、水、風、大地といった自然を操る能力や、空間等の事象を操る能力を持つ者達も居り、能力者は偶発的な発生ではなく、自然的に発生していると言う学説も発表されている。
アルティナはリヴァイダーから手を離し、部屋を出ようとすると、オルフェが声をかけた。
「アルティナ・・・真実は、一つじゃない、と言う事を心に留めて置いてくれ」
「・・・わかった」
短くそう答えると、アルティナは姿を消した。
少し笑みを浮かべて、オルフェは煙草を銜えて火をつける。
紫煙が立ち昇り、大きく息を吸ってから、肺にためた紫煙を吐き出した。
静かに笑みを浮かべて、銃を抜くと誰も居ない方向に銃口を向けて、口を開いた。
「でてこいよ、そこに居るんだろ?」
「ふぅ、流石と言うべきか・・・気配を殺していたつもりだったんだがな」
「アンタが、ここに居るとはね。 意外だったぜ、隆一のダンナ」
「フッ・・・アイツの動向が気になってな」
「おやおや、意外だねダンナがあのお嬢ちゃんの心配なんてよ。 命、狙われてんだろ?」
「あぁ」
「簡単に答えるなよな、ダンナ」
「喧しい。 それに、アイツが俺に憎しみを抱かせたのは、生かすためだ」
「生かすため、ね。 まぁ、アンタが何をしたのか知らないが、いろいろと込み入ってるみたいだな」
「そろそろ行かんとな、ここもやつらに嗅ぎつけられそうだ」
「やつら・・・?」
「お前も、死にたくなければ、すぐに此処から出るんだな」
隆一はそういうと、オルフェに背を向けてその場を後にした。
廊下を歩き、何人かの黒尽くめの人物が、隆一へと銃口を向けている。
一瞬、微笑を浮かべて、隆一は左手を腰に手を当てた。
何をするでもない、ただ立っているだけで、銃かリヴァイダーを抜く気配は無い。
ゆっくりと右腕を上げると、挑発する。
それを合図にしてか、サブマシンガンのトリガーを引いた。
断続的な銃声が廊下に響き渡る。
全ての弾丸は、隆一に命中するはずだった。
その弾丸は全て、隆一の目の前まで来ると消滅し、いきなり背中からの銃撃を受け、前のめりに倒れた。
隆一の能力『次元門(ディメンジョン・ゲート)』の力で、自分の目の前の空間と、黒装束の人物達の背後を接続したのだ。
彼の能力は、いわゆるワープと呼ばれる物で、それを自分の自由意志で行う事ができ、防御面に関しても彼の能力に敵うのは殆ど無いだろう。
「俺を殺したいのなら、この人数は少なすぎたな」
そう呟くと、隆一は自分の能力を使い、その場所から去っていった。
アルフェスは絶えず走り、両手に持った銃を撃っている。
周囲は、数十人ものアヴェンジャーの人間が包囲しており、アルフェスの銃の残弾の減りが早い。
マガジンを交換する時も常に動いていた。
弾薬もそこを付き始め、リヴァイダーを抜こうと周囲をうかがい、入念に辺りを探り、被害が少ない場所を見つけ出して、そこへとリヴァイダーを発射した。
爆音が轟き、コンクリを破壊して土砂や岩石が崩れ落ちてくる。
その隙をついて、アルフェスは全力疾走で、敵の合間を縫う様に進み、その場を走り去った。
かなり無茶な方法だが、敵を振り切りった。
いったん立ち止まり、後ろを振り返る。
追って来ている者は居ないのを確認すると、その場に座り込んで、大きく息を吸い込んだ。
どうやら、全力疾走で走り続けたため、軽い酸欠状態になったのだろう。
壁にもたれ掛かり、アルフェスは呼吸を整えるために、大きく呼吸を始めた。
目を閉じて、呼吸を正常化させるのを最優先させていた、そのときだ。
どこからか視線を感じた。
ゆっくりと目を開けて、辺りを見回すが、誰も見ている気配は無いが、誰かの視線を感じていた。
(・・・なんだ、この視線は? それに、この気配・・・以前にも感じた事がある?)
心の中で呟き、アルフェスは思考を巡らせる。
出した結論、それは、彼に苦い思い出を思い出させた。
「チッ、考えている暇はねぇな、さっさと進むか!」
気合を入れなおして、アルフェスは立ち上がると銃の残弾を確認した後、走り出した。
こうして、アルフェス達はらった四人で、半年というきわめて少ない時間の中で、世界中の軍事機関を破壊、壊滅させたアヴェンジャーの本部に乗り込み、司令室へと足を踏み入れようとしていた。
一番最初に到着したのはJ・Dで、ゴーグルを外して、扉を見つめた。
少しだけ、はにかんだ笑みを浮かべた後、靴音を聞いて慌ててゴーグルを付けて振り返ると、長い金髪と黒いジャケットとパンツの杏子の姿があった。
どうやら苦戦したらしく、幾つもの箇所にほつれがあった。
大きくため息を付いた後、ひざに手を付いて呼吸を整え始めた。
ふとした弾みに、杏子の胸の谷間が見えた。
頬を紅くし、慌てて背を向けた。
背を向けたJ・Dに気付き、その状態のまま口を開いた。
「どうしたのよ、急に背中向けて」
「え、いや・・・その、胸の谷間が・・・」
「え? あぁ、ゴメンゴメン」
そういいながらも、何故か谷間を強調するような姿勢のままだ。
どうにかしようと四苦八苦していると、アルティナが姿を見せた。
彼女も苦戦していたらしく、服にほつれがあった。
服装に問題があり、胸が露出しているのだが、それを気にする様子も無く平然と歩いていた。
J・Dは、ずっと二人に背を向けたまま、なにもしゃべらない。
アルフェスが来たのは、最後のアルティナに送れて1時間近く遅れてやってきた。
彼が一番苦労したのか服が。ズタボロだ。
「ったく・・・くそだりぃぜ」
「遅かったじゃない」
「しかたねぇだろ、通るルート全部にアヴェンジャーの囚人が待ち伏せてたんだからよ」
「ふぅん・・・まぁ、ご苦労さん、とだけ言っておくわ」
「チッ、そう思うんなら、目の保養させろ」
そういい、アルフェスは杏子が着ている下のタンクトップの襟元を引っ張り、中を覗きこんだ。
すぐに杏子の鉄拳が飛んで、アルフェスは手を離し、上半身だけを逸らしてそれを回避する。
上半身を元に戻した直後、アルフェスは杏子の胸を鷲掴みにした。
一瞬の沈黙の後に、杏子はため息を付くと、平手打ちをアルフェスの頬に叩き込もうとしたが、避けた。
もう一度、平手を叩き込むが、また避ける。
それを全て避けており、その合間にも手を離さなかった。
そのまま杏子を抱き寄せると、今度は杏子の弱い所を攻め始めた。
それを見て、アルティナが蹴りをアルフェスに叩き込み、二人のじゃれあいが終わった。
「アルフェス、お前は遊びに来たのか?」
「んなわけねぇだろ。 単なるじゃれあいだ」
そういうが、アルティナのジト目が突き刺さる。
居心地が悪く感じるが、そんな事を気にせずにアルフェスは、杏子のほうを見た。
現在着ているのは白いタンクトップのシャツで、ブラの肩紐等が見えている。
上着は、服がボロボロになったアルティナに貸しているので、あの様な格好をしていると言うわけだ。
ジャケットを脱ぐと、杏子に向けて投げた。
それを受け取ったがそれを着ずに、アルフェスの顔を見ている。
「ちょっと、アンタコレ着なくていいの?」
「だいじょうぶだろ?」
「ジャケットアーマー脱いだまま、ルーシェンと戦り合うつもり?」
「そんときになりゃ、返してもらうさ。 ソレまで着てろ」
「ありがと」
一言、たった一言の礼の言葉だが、重みがあった。
そんな二人を見て、アルティナに少しだけ、表情に陰りが生まれた。
二人の間には、言い表せない信頼関係があり、戦いの中で培われていた物だ。
それだけ長い間一緒に居て、背中を任せていたと言う事を考えると、アルティナは自嘲的な笑みを浮かべた。
常に一人で戦い、仲間すらも屠った時もあった。
あの二人のようにお互いを信用し、背中を護りあう者が居なかったのを思い出したのだろう。
全ては復讐のため、隆一を殺すために、アルティナはたった一人で戦い、生き延びてきた。
そして、彼女は『虐殺の堕天使(ジェノサイド・エンジェル)』と言うとおり名を得た。
ふと、視線を感じてアルティナは、そちらへと振り向いた。
J・Dが笑みを浮かべて、自分の事を見ていた。
「・・・どうかしたの?」
「いえ、何でもありませんよ。 僕がアナタを捕らえた時に比べて、角が取れたような気がしましてね」
「そうかしら?」
「えぇ、そうですよ。 アナタはあの時、誰も信用してなかったでしょう? 少なくとも、あなた今現在、アルフェスさんと杏子さん、僕は微妙だけど、信用しているでしょう?」
「多分・・・ね」
「それで良いんですよ、自信が無くても、後々つけていけばいいんですからね」
「そう・・・かもしれないわね」
少しだけ、笑みを浮かべたアルティナの顔を見て、J・Dは少し見とれてしまった。
初めて、彼女の笑みを見た。
優しい笑みを見て、J・Dは思わず彼女の顔を見入っていた。
視線に気付き、アルティナがJ・Dの方へと振り向き、口を開いた。
「私の顔に何か付いてる?」
「え、あ、いいえ、なんでもないです、なんでも」
「少し、気を引き締めたほうがいいんじゃない?」
「あ、あはははっ・・・・」
乾いた笑いを発して、J・Dはそれ以降黙り込んだ。
アルフェスは後ろを振り向いて、きょろきょろと辺りを見回した。
まるで、何かを探している様だった。
数秒程度で向き直り、銃を抜いてマガジンの数を確認した。
杏子は、目を閉じた。
恐らく能力を使い、未来を視るつもりだろう。
静寂の最中、アルフェスが口を開いた。
「お前らは此処から脱出しろ」
「どういうつもりだ、お前はルーシェンと一対一で戦うつもりか?」
「あぁ。 コレは後始末さ」
「後始末・・・? どういう意味ですか?」
「そのままの意味だ、俺の興した組織が犯した罪、そして組織の司令官は俺が決めたんだ、その尻拭いさ」
呟きで答え、J・Dとアルティナに帰れ、と言うジェスチャーをして目の前のコンソールに触れて、パスワードを入力していく。
キーロックがはずれ、扉に手をかけると杏子が口を開いた。
「だめ・・・ダメよ、アルフェス!!」
「ん、どうした、杏子?」
「行っちゃダメ」
「却下、行かないと戦乱は終わらねぇ」
「だ、だけど・・・」
「ッたく、お前は昔ッからそうだな。 未来詠み(リード・ザ・ホープ)で未来視て、その結果を信じて行動する。 そんな事してっからダメなんだよ、未来ってのは幾つにも枝分かれしてるんだ、お前はその一つを見てるだけにしかすぎねぇ」
「そんなの分かってるわよ! だけど、今回だけは譲れないわ!!」
決意を滲ませた瞳で、一心にアルフェスを見つめている。
その瞳を見て、ため息をつくと、J・Dとアルティナに目配せした。
視線に気付いて、J・Dはアルティナをつれてその場を去っていった。
居なくなったのを確認して、アルフェスは杏子の唇を奪った。
顔を離してアルフェスは笑みを浮かべた。
「そんなに、俺の事が信用できねぇのか?」
「・・・あなたの実力は、私が十二分に知ってるわ」
「だったら変な心配するんじゃねぇ、外で待ってろ」
そういい、アルフェスは扉を開けた。
熱風ともとれる熱い空気が、身体を包み込んだ。
だだっ広い部屋の中央に、ロングコートを着た男が背を向けて立っていた。
アルフェスはいったん立ち止まり、深呼吸をして部屋の中に足を踏み入れた。
それを合図に男が振り返り、銃を抜いた。
腰のホルスターに挿した銃・ズフィドST−1を抜いて、ゆっくりと中央に向けて歩いていく。
靴の音が部屋の中に響き渡る。
扉が閉まり、杏子は扉を見つめていたが、背を向けると走り出した。
部屋の中で、アルフェスと男が対峙している。
「御久しぶりです、アルフェス司令」
「俺はもう司令官じゃねぇんだ、ルーシェン、お前もそこんとこ理解しろや」
「私は認めませんよ、アヴェンジャーを組織したのはあなただ、そして組織の者達を統率するにはアナタのような強さとカリスマ性を併せ持った者なんですよ」
「だから、反乱を起こして俺を炙り出した、ってワケか。 芸の細かい事だな」
「フッ・・・引っかかってくれた助かりましたよ、あなたはもう一度、司令官となるべきなんですよ」
「断る、俺は政府の人間に尻尾を振るつもりはねぇ」
「ならば、力ずくででも・・・!!」
ルーシェンとアルフェスは同時に走った。
銃を連射しながら、お互いの距離が近づいていく。
ぎりぎりを掠めて飛ぶお互いの銃弾、それをものともせずに二人は近づきながら、銃を撃ち続ける。
残弾を確認する事無く、アルフェスはマガジンを落とし、背を向けて回し蹴りを放った。
攻撃をかわして、銃口を向けてトリガーを引く。
銃声、弾丸はアルフェスのジャケットの心臓部分に着弾。
痛みが走るが、血は流れ出ない。
にやりと笑みを浮かべ、更に攻撃を繰り出して行くと、ジャケットの内側からマガジンが飛び出した。
銃を持っている腕を振るい、空中でマガジンを装填すると、トリガーを引いた。
弾丸が頬を掠め、ルーシェンはアルフェスの眉間に銃口を突きつけ、トリガーを引いた。
コンマ一秒か、それ以下の判断で、銃身を弾き身体を左へと傾かせて、ルーシェンの懐に入り込むと、掌低を腹部に叩き込んだ。
それに耐える事無く、バックステップで威力を殺し、着地すると銃口をアルフェスに向けてトリガーを引き、速射。
一瞬の判断ミスが命を落とす事になり、アルフェスとルーシェンは舞いを舞う様にして、身体を動かし攻撃していく。
飛び交う弾丸、次第に部屋の中には硝煙の匂いしかしなくなり、二人の周囲には薬莢が飛び散っていた。
換えのマガジンが無くなり、アルフェスは鋭い蹴りを叩き込み、ルーシェンの身体がくの字におれた。
更にラッシュをかけて、左右のコンビネーションを叩き込んでいく。
上からの振り下ろしの右拳、それが避けられると肘を軸にして裏拳、左のストレートと次々に拳を叩き込んでいく。
アルフェスのラッシュを捌きながら、ルーシェンは合間合間に攻撃を叩き込む。
少々のダメージを覚悟していたのだろう、防ぐ事無くそれを受けて、絶えず燃え盛る猛火のような連撃を叩き込む。
お互い防御を無視し、相手を倒す事のみを考えて、殴りあう。
「アルフェスさん、アナタはやはり強い! その強さこそ、この組織を率いるにふさわしい!」
渾身の一撃を右のわき腹へと叩き込み、小さな呻き声を漏らしたアルフェスの側頭部に蹴りを放った。
蹴りが直撃し、アルフェスの身体が床に倒れ、追い討ちをかけるように拳を振り下ろした。
アルフェスの顔面を捉えていたが、腰を浮かし、そのまま身体を回転させ、腕で立ち上がり蹴りを放つ。
拳と蹴りがぶつかり、ルーシェンの攻撃を防ぎ蹴りを叩き込み、足を掴むとマウントポジションを取り、ルーシェンの顔を見る。
一瞬だけ笑みを浮かべて、アルフェスは握った拳を振り下ろした。
鈍い音、そして骨を折る感触が、拳を伝わってきた。
鼻骨が折れており、鼻が曲がっている。
だが、ルーシェンは足を使い、マウントポジションから逃れると体勢を立て直し、アルフェスの腕を取り関節を極める。
「くっ!」
「どうです、戻る気になりましたか?」
「何度も同じ事言わせるんじゃねぇくそボケッ!」
「・・・そうですか」
それと同時、アルフェスが声を上げずに痛みに耐え、腕を引き抜くと蹴りを叩き込み、間合いを取ると腕を押さえて立ち上がった。
腕がぶらぶらと揺れており、どうやら腕の関節が外れたようだ。
笑みを浮かべて、ルーシェンは口の端からこぼれた血を拭い、アルフェスを見る。
関節を無理矢理はめ込み、アルフェスは癒しの極光を使い、痛みを和らげると銃を抜いた。
もう残弾は殆ど無い、後はリヴァイダーに頼るのみだ。
ルーシェンは銃を拾い上げ、残弾を確認する。
どうやら、彼も換えのマガジンが付き始めているようだ。
だだっ広い部屋、一応は司令室なのだが、ルーシェンの意向により改造されており、何も無いただ広いだけの部屋になっている。
天井も10フォンス以上はあり、階上にあった部屋を壊し、一つにしたのだろう。
恐らくは、この部屋でアルフェスとの戦いを予想していたのかもしれない。
二人は自然と笑みを浮かべ、向かい合った。
やけに心臓の音が耳に付く。
あの人は、私を見つめたまま微動だにしない。
私は、あの人に勝てるのだろうか・・・?
だめだ、こう思っているだけでは、あの人には勝てない!
私は今日こそ、あの人を超えてみせる・・・絶対にだッ!!
ルーシェンが先に動いた。
銃を構え、トリガーを引く。
銃声が部屋の中にこだまし、アルフェスも銃を構えてトリガーを引いた。
弾丸は二人の頬を腕を掠めて過ぎ去っていく。
それを合図に、二人は走った。
銃を撃ち、相手をけん制しながら間合いを図り、ルーシェンがリヴァイダーを抜き、トリガーを引く。
黄色いエネルギーの流動、銃口からエネルギーが放射されて、アルフェスを襲った。
ライトシールドでそれを受け止めるが、エネルギーの絶対量の差か、すぐにエネルギー切れに近づき、リヴァイダーのエネルギーに逆らわずに手を傾けて、その力の方向を変えてリヴァイダーの攻撃を凌ぎ、アルフェスが走った。
リヴァイダー・デッドムーン(死を導く月)から、エネルギーが放出され、すんでの所でサイドステップでかわすと再びルーシェンに向けて疾駆する。
ルーシェンの懐に入り込み、ライトシールドを展開したまま拳を握りこむと、渾身の力を持って鳩尾へとそれを叩き込んだ。
一瞬、身体が浮き、返す刀でアルフェスのハイキックを放つ。
僅かな差で、ハイキックを防ぎ着地すると、アルフェスの顔が迫ってきていた。
全体重をかけて、スピードの乗った拳をルーシェンへと叩き込んだ。
これもギリギリで防ぐと、今度はルーシェンが攻撃を開始する。
左の連打で間合いを図りながら、時折右のストレートを放つ。
鼻先を掠めて、ストレートが顔の真横を通り過ぎ、反撃に出ようとした矢先、顎先に衝撃が走った。
先程の右ストレートが、下からのアッパーカットに変化していたのだ。
のけぞったアルフェスの隙を突き、リヴァイダーを引き抜き、トリガーを引く。
黄色いエネルギーが集約。
一気にソレが開放され、アルフェスへと襲い掛かった。
仰け反っていたままバック転で着地すると、ライトシールドの全エネルギーを集中して、デッドムーンのエネルギーを受け止めた。
バチバチと紫電を発し、ライトシールドのエネルギー残量が残り少なくなる。
意識を集中させて、アルフェスは能力を使う。
すると、目の前の空間が歪み始めた。
『次元門』の能力が発動した。
ライトシールドのエネルギーが無くなり、アルフェスはバックステップで距離を取ると同時、リヴァイダーのエネルギーがアルフェスが開けた空間の穴の中に消えていった。
笑みを浮かべて、アルフェスは意識が遠のき始めるのを感じ、歯を食いしばり意識を保つ。
辛うじて意識を肉体に繋ぎとめると、アルフェスは一歩前に踏み出した。
奇妙な威圧感を感じ、ルーシェンは一歩後退する。
「強く・・・なったじゃねぇか、ルーシェン」
「強く・・・なった? 私が?」
「あぁ。 強くなった、俺が保障してやる」
「・・・だが、私はまだアナタを超えていない、超えなければ・・・私は私を許す事は出来ないッ!」
「許す、だと? お前は、自分がやった事を分かってるんだろ? 世界中を恐怖に陥れ、幸せな家庭を築いていた者達の幸せを破壊し、両親を殺されて孤児となった子ども達が、どんな思いで恐怖から逃げて生きていると思ってやがるッ!!」
アルフェスの叫び。
彼の真摯な瞳から目を背け、ルーシェンは目を閉じた。
そう、初めからわかっていた、いま自分がしている事を理解していた。
罪・・・アルフェスを超えると言う自分の目的のために、何の罪も無い者達をアナハイラスの囚人に殺させた。
死んでいった者達、死に逝く者達・・・今でもソレは続いているかもしれない。
それゆえか、彼等はたった二人で、世界中を飛び回り、希望と言う種を植え続けた。
アルフェスと杏子。
二人は、アヴェンジャーの創始者として、ルーシェンの犯した罪を償ってきた。
だからこそ、彼は超えたいと思うのだろう・・・憧れていた彼を。
背中を追いかけ続け、ようやく見え始めた偉大な男を超えて、そして彼は初めて一人で歩けるだろうと、信じていた。
「ルーシェン・・・お前のやった事はゆるされねぇんだ。 お前は、死して自分の罪を償うつもりなんだろう?」
「えぇ、それがこの戦乱を起こした私の罪の償い・・・」
「一つ言っておく、お前のその考えはただの逃避だ。 本当に罪を償うと言うのならば、生きろ。 悪と言う汚名を着て、全ての人間に非難されても生きろ・・・ソレがこの戦乱を起こした唯一の償いだ」
「黙れ・・・黙れぇッ!!」
ルーシェンが叫びと共に、能力を開放した。
彼の身体が、真紅に染まってゆく。
叫び・・・いや、咆哮といえばいいだろうか、ルーシェンが顔を真っ直ぐにアルフェスへと向けた。
「・・・真紅の暴君(ライオット・ザ・クリムゾン)か」
「ヴォオオアァァァァァァッ!!」
一呼吸の合間。
鳩尾へとルーシェンの拳が突き刺さり、肺にたまっていた空気が吐き出される。
咳き込む前に次の一撃が、アルフェスの顎へと叩き込まれる。
天井へとめり込み、アルフェスの身体がゆっくりと宙に舞い、床へと落ちていく。
意識は朦朧としており、着地する事が出来ず頭から落ち、意識が混濁とした闇へと、堕ちた。
ルーシェンは、ゆっくりとアルフェスへと近づいていき、真紅に染まった自分の身体を見て別の高揚感を覚えた。
衝動、と言えばいいだろうか、血が見たくなってきた。
ゆっくりと、倒れ付しているアルフェスを見て、歪んだ笑みを浮かべる。
そして、一歩一歩、ゆっくりと歩み、近づいていく。
その時だった。
アルフェスが目を開けた。
その瞳は真紅に染まっており、ギロリ、とルーシェンのほうへと向けられた。
仰向けに倒れているアルフェスはひざを立てた。
そして、足に力を込めて、腰が浮くと徐々に上半身が起き上がっていく。
完全に立ち上がり、アルフェスはゆっくりと息を吐き出した。
笑みを浮かべて、ルーシェンを見た。
僅かに、彼の身体が身じろいだ。
一歩、踏み出す。
圧倒的な威圧感を発し、ルーシェンに近づいていく。
犬歯が伸びて、牙の様になった。
歯を食いしばり、渾身の一撃を見舞うために、腰ダメに力をため始めた。
意識があるかは分からない、だが確実にアルフェスの身体には異変が起きていた・・・
朦朧としている意識の中、アルフェスは自分の身体に起きている異変に、気付いていた。
だが、それは自分の身体にとっては、当然の事だと認識している。
それを受け入れて、アルフェスはゆっくりと息を吐き、瞳を閉じたまま顔を上げる。
ルーシェン、本当に強くなったよ、お前は。
だけどな、俺は負けられねぇ・・・
アイツを二度と哀しませたくねぇ、アイツは俺に生きる道を示してくれた。
親の愛を殆ど知らずに育ち、誰も信じなかった俺を信じ、そして信じさせてくれたんだ。
つらい時も哀しい時も、アイツはそばに居てくれた。
だから・・・だからアイツに、翔已が死んだ時のように、哀しみに暮れさせるワケにはいかねぇんだよぉっ!!
絶対に、絶対に生きて帰るッ!!
そう約束したんだ、アイツと・・・杏子とッ!
ドクン。
心臓の音が、アルフェスの耳に付いた。
次第に、その音が大きくなっていく。
視界が広がり、目の前が赤く染まっている。
アルフェスは拳を振るった。
ソレとほぼ同時、ルーシェンも拳を振るっていた。
拳と拳がぶつかり合う。
ほぼ一方的に、ルーシェンの拳が砕けた。
血が流れ出て、それでも砕けた拳を振るい、アルフェスへと攻撃を仕掛ける。
アルフェスはそれを受け止めもせず、顔面に受けて、ひるむ事無くアルフェスは膝蹴りを鳩尾へと突き刺した。
ルーシェンの身体が宙を舞い、壁に叩きつけられた。
更に追い討ちをかけるようにして、アルフェスが疾駆した。
左拳に全ての力を込めて、ルーシェンへとたたきつけた。
壁を貫き、隣の部屋へとルーシェンの身体は落ちた。
「・・・・・・どうした、俺を超えるんじゃねぇのか、ルーシェン!!」
「ま、だ・・・まだァッ!!」
その叫びと同時、その一撃に全てを賭けるのか、己の持てる力をすべて右の拳にこめた。
最後の一撃。
この一撃を防ぎきれば、アルフェスが勝利する。
だが、アルフェスの身体にも徐々に限界が近づき始めており、顔が少し苦しそうだ。
静寂が訪れる。
相手の出方を伺い、二人は黙ったまま向かい合っている。
口を開かない。
ただ黙り込み、目で語り合い・・・ルーシェンが動いた。
裂帛の気合と共に、アルフェスとの間合いを詰めた。
微動だにせずに、その一撃を受けた。
血が飛び散り、アルフェスは肩ひざを付いた。
ルーシェンが笑みを浮かべて、倒れた。
血が流れ出ていき、血の海を作り出していく。
「大丈夫か、ルーシェン?」
「え、えぇ・・・力を使い過ぎた様ですね、暫くすれば動けます」
「そうか。 まだ、死にたいと思うのか、お前は?」
「・・・いえ、私は生きようと思います。 アルフェスさん、いつかはあなたを越えてみせる、それがこの戦乱で死んでいった者達への、私なりの贖罪です」
「ハハハッ、まぁ、頑張んな」
アルフェスはそういい、座り込んだ。
どうやら、彼も限界だったらしく、手に力が入っていない。
両手をゆかについて、身体を支えて天井を仰ぐ。
大きく息を吐き出してから、両足に力を込めて立ち上がった。
ルーシェンの所へと歩いて近づいていき、目の前に立つと手を差し出した。
笑みを浮かべており、ルーシェンはアルフェスの手をとり、ゆっくりと立ち上がった。
膝が笑っており、アルフェスの肩を借りて、歩き出した。
「ルーシェン、お前は死んだ事にしておく。 偽名を使って生きろ」
「え?」
「そのほうが良いだろ? どの道、お前は生きていたらアルシオン連邦政府から極刑が下されるだけだからな、だからお前は死ぬんだ、存在だけな」
「・・・わかりました」
「全く、手のかかるヤツだな」
「す、すみません・・・」
「まぁいいさ、きにすんな。 それより、ATの格納庫はかえてねぇな?」
「えぇ、以前と同じ地下2階です」
二人は歩調を合わせて、地下二階へと歩みを進めた。
何事も無く、後二つ上が地下二階、と言うところまで来た途端に、警報が鳴り響いた。
無機質な女性の声が流れ、二人は警報の理由を悟る。
連邦政府がATの一個大隊を率い、この場所へと攻め込んできたのだ。
二人は小走りに走り、ATの格納庫へと急いだ。
ATの一個大隊が来るまで、約30分程だ。
普段の状態なら十分もかからずに行けるが、現在の状態ならば20分程かかり、そこからATを起動させると30分はかかり、ギリギリだろう。
二人はできるだけ足を速めて、ATの格納庫へ急ぐ。
衝撃、恐らくは先程の警報を聞いた生き残りの者達が、ATに乗って出撃したのだろう。
「格納庫にATが残ってりゃいいな」
「私のAT・蒼白騎士(ホワイテッド・ナイト)は確実にありますが、生き残りの数によりますね」
「しゃあねぇな、急ぐぞ」
「はいッ!」
二人は更に歩調を速め、走った。
殆ど、歩いているような早さだが、先程よりも早い。
格納庫に着くと、ルーシェンは自分のATに乗り込むと、駆動機である対消滅駆動機(ヴァニッシュ・リアクター)を作動させる。
駆動音が操術室に響く。
アルフェスは自分が乗るATを探しており、ルーシェンは起動した蒼白騎士を地上へと出して、空を飛んだ。
一騎の聖剣騎士(ソード・パラディン)を見つけ、それに乗り込んだ。
駆動機は一般的な聖霊呪駆動機(エレメンタル・リアクター)で、駆動機を起動させると、ルーシェンと同じ様に空へと躍り出た。
既に、ルーシェンは戦闘を開始しており、数騎のATを撃墜している。
アルフェスは恐らくは、近くに居る杏子達を探し始めた。
ルーシェンは期待を加速させて、滅翔剣(アッシュ・ブレード)を振るい、ATを撃墜していく。
斬撃を叩き込み、すぐに離脱、一拍の間を置いて爆発し、爆発音と爆炎を発する。
加速、そして斬撃を叩き込んだ後に、離脱、そして空を爆発が彩る。
ルーシェンの乗る蒼白騎士が空を加速する度に、連邦政府のATが撃墜されていく。
一騎、アルフェスたちの襲撃を生き延びた者の乗るATが、撃墜され、爆発の炎が青い空を彩る。
「くッ・・・アルフェスさんとの戦いの傷が響くか」
「し、司令、指示を!!」
「四騎の編隊を組め、指揮は臨機応変にしろ! 上も下も無い、生き延びたければ入ってくる指示に従え、良いな!!」
「り、了解!」
ルーシェンの指示を聞き、すぐさま四騎の編隊を組み、戦闘を開始。
やはり、個々の実力が高いためか、エルシェント帝国を除く連合軍の相手も十二分に務まっている。
アルフェスの課した試験は伊達ではなく、アルフェスに最低でも1分を相手にする程の実力を持つため、並みの相手では相手にはならない・・・のだが、流石に数で押されると苦しいのか、徐々にだが押され始めた。
アルフェスはと言うと、杏子達を探し出して、自分の乗るATの副座にアルティナと冬真を押し込んで、杏子は自分の膝の上に乗せて光剣を抜いて、空に騎体を舞わせた。
加速し、Gが身体をシートに押し付ける。
それに耐えて、光剣を振るう。
爆音が響き、連邦正規のAT白聖剣士(ホワイト・セイバー)が一騎、また一騎と撃墜されていく。
途中、一騎を捕まえて、冬真とアルティナが白聖剣士へと飛び移り、騎体を乗っ取ると再び先頭を開始する。
光砲での攻撃を光盾で防ぎ、一気に間合いを詰めて斬撃を放ち、離脱すると次の標的に目指して翔る。
また爆音が響き、敵を撃墜していく。
アルフェスと冬真の操る白聖剣士は、背中を護りあうように敵を撃破していった。
時折、アルフェスが檄を飛ばし、士気をあげて攻勢に出る。
「杏子、未来詠み(リード・ザ・ホープ)で未来を見ろ、俺の予測が正しければ・・・」
「分かったわ、多分、あなたの予測は的を得ていると思うけどね。 準備は怠らないようにしておいて」
「わかっている」
アルフェスの答えを聞き、杏子は目を閉じた。
彼女の周りに、うっすらと淡い光が灯る。
杏子に意識を向けつつ、ATの操術を行い、敵騎を撃墜していく。
光剣を振るいながら、アルフェスは騎体を上昇させていき、杏子が目を開けた。
ゆっくりと、アルフェスへと顔を向けて、口を開いた。
「あなたの予想通り、よ」
「そうか、そりゃなによりだな・・・」
「この騎体で、止められると思う?」
「そんなの、やってみなけりゃわかんねぇさ」
そう言い返して、アルフェスは各騎に通信を送る。
「各騎に告ぐ、蒼光弾(エクスティンクション・ブリット)が此処に向けて発射されてる、さっさと非難しろ! 敵騎にかまうんじゃねぇ、全速力でこの場所から非難しろ、良いなッ!」
叫び声だけが各騎の操術室内に響き、一瞬だけ戦闘が停止する。
そして、再び機体が動き出した。
作戦を説明されていなかったのか、慌てた様子で敵一個大隊が逃げていく。
ルーシェンや冬真の乗るATはその場を動かず、アルフェスの騎体へと向けて加速していった。
アルフェスのアップが、操術室内に映し出されて、冬真とアルティナは耳をふさいだ。
「逃げろつってんだろうが!」
「そうは言ってもですね、蒼光弾なら此処はおろか最低でも半径2〜300フィースは消滅しますからね、逃げても無駄ですよ」
「J・Dの言うとおりです、アルフェスさん。 アナタは死ぬつもりでしょう?」
「チッ、なまじ経験積んでるとダメっぽいな」
「それより、あの基地内にはまだ誰か居るのか?」
「あぁ・・・マリアのヤツが多分まだ気絶してると思う」
「あれ、マリアさんと一戦交えたんですか?」
「まぁな。 気絶させて、安全な場所に寝かせておいたんだが、蒼光弾が着弾となりゃ遺体ものこらねぇからな。 それに、バニシングブリットん時は、黒霊騎士に乗ってたからギリギリで助かったようなもんだ」
そういい、再び加速させて蒼光弾の弾頭を切り落とし、ルーシェンの蒼白騎士がそれを掴み、加速した。
白い光が装甲から発生し、装甲が軋み変化していく。
光が弾け、装甲が変化した蒼白騎士が姿を見せた。
蒼光弾の弾頭を抱えたまま、遥か天空へと加速していく。
「ルーシェン! なにやってやがるんだ!!」
「アルフェスさん・・・すみません。 私は、私は・・・!」
そう呟き、通信をきった。
アルフェスは何度も通信を送るが、通信装置自体を破壊したのか、通じなかった。
杏子は、この事が分かっていたのか、涙を流している。
コンソールを殴りつけて、アルフェスは叫んだ。
「・・・お前は、生きるっつったんだろ、馬鹿野郎ッ!!」
直後、青い光が遥か上空に発生した。
青い光を見つめて、アルフェスは涙を流した。
J・Dは、空を見上げた。
まばゆい光、それを見つめながら、ゴーグルに手をかけるとそれを取った。
蒼い瞳が空を見つめ、涙がこぼれた。
J・Dの膝の上に座り、アルティナは彼の素顔を初めて見た。
少年のあどけなさを残した顔、それでいて強い意志を秘めた蒼い瞳。
目を引いたのが、右目に埋め込まれている黒い石だ。
アルティナの視線に気付いたのか、J・Dがアルティナへと顔を向ける。
「どうしました、僕の顔に何か付いてますか?」
「え、いえ、な、なんでもないわ」
「そうですか・・・それより、顔が赤いですよ?」
「ほ、ホントになんでもないから!」
「そうですか」
そう言い返して、J・Dは流れた涙を拭う。
一息吐き、口を開いた。
アルティナは身体を抱きしめられた。
胸の辺りに、固い感触を感じて、振りほどこうとしたが、かすかに嗚咽が漏れているのに気付いた。
泣いているのだ。
ルーシェンの死によって、自分が生きていると言う事に感謝しつつ、彼の事を罵倒しているだろう。
アルティナはJ・Dの頭に手を回して、優しく抱きしめた。
僅かにJ・Dの身体がびくつくが、再び肩を震わせる。
「・・・馬鹿野郎、僕との決着を・・・付けるんじゃなかったのかよ」
耳を澄まさなければならない程の小さな声で、J・Dが呟いた。
そしてまた嗚咽を漏らし、泣き出した。
自然と、アルティナはJ・Dを落ち着かせるために、彼の頭を優しく撫で始めた。
あの頃と同じ様な感覚、まだ家族と共に暮らしていた頃、既に忘れていたモノを感じていた。
全てを覆い包み、安らぎを与える・・・慈悲と言うものを感じていたのだ。
アルティナは、小さく唇を動かす。
「大丈夫・・・彼は生きてるわきっと。 J・D、あなたとの決着を付けるために、また戻ってくるわ」
そういい、アルティナは再び、J・Dを優しく抱きしめた。
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