同級生であり、実は栖桜が好きで素直になれないアイドル・遙










ん〜〜〜どれにしようか迷うな・・・よし、藤咲のを食べるぞ。
俺は、恐る恐る藤咲の作ってきたチョコを食べてみた。
甘い・・・が、こってりとした甘みではなく、爽やかな甘みでしつこく舌に残らない。
何か、例えが意味不明だけど、まぁ美味いから良いか。
すぐに全部食べ終え、包みを胸ポケットに入れると、教室に戻った。
授業中なのだが、色々と考え始めた。
藤咲はアイドルになることを許された娘なんだ、俺なんか釣り合わないよな・・・
シャーペンを指で回しながら、溜息を付いた。
でも、俺は・・・気さくに話しが出来る、藤咲のことが好きなんだろうな・・・多分。
授業が終わり、俺は藤咲の所へ行ってみた。

「あれ、榊じゃない。どうしたの?」

「あ・・・藤咲」

声を掛けてきたのは、藤咲だった。
何かを話さないといけないんだが、俺はきっかけを掴めなかった。
俺の視線は虚空を泳いでいた。

「榊・・・ちょっと良い?」

「え、あ、ああ・・・」

藤咲が、俺に話しかけてきた。
何か用事があるんだろうか・・・俺達は人目に付かない場所、即ち体育館の倉庫に来ていた。
何だってこんな所に来たんだ、人目に付かないからと言ってここはないだろ、ここは。
薄暗い中、藤咲は俺の目の前に立ち、頬を紅くしている。
・・・何かこんな藤咲見るのは、初めてだな、俺もなんか緊張してドキドキしてきたぞ。

「あ、あのさ・・・榊、好きな人いるの?」

「ん〜〜〜いる事はいるかな・・・?」

何だ何だ・・・何か、雲行きが怪しいぞ。
好きな人がいるって聞いてきた事は、まさか告白タイムなのか!?
んなワケねぇだろ俺!
うぅ・・・空気が気まずいぞ、何で何だぁぁぁぁっ!!
と、頭を抱えて叫びたくなるが、藤咲が目の前にいるため出来ない。

「あの、その・・・俺が好きな人はな、今目の前にいる」

何をトチ狂ったのか俺は、そう言うと背中を向けた。
んがぁ!何言ってんだよ俺、滅茶苦茶顔が熱いぞコンチキショウ!!
言うだけ行ってしまったので、俺はこの場から走って逃げたくなった。
だが逃げるわけにも行かないので、俺は恐る恐る藤咲の方を振り返ってみた。
んげぇっ、な、泣いてる!?
お、俺なにも悪いコトしてないよな?
変なこと言ってないよな!?

「フフフッ・・・アハハハハッ!!」

笑いながら、藤咲が抱きついてきた。
うぉ・・・む、胸の感触が気持ちいい上に、髪の匂いいい匂いだな・・・
俺は後先考えずに、藤咲のことを抱きしめた・・・ッツーカ、気付いたら抱きしめてたんだよね。
俺って犯罪者になっちゃうんでしょうか?

「ねぇ、榊・・・私がアンタの事好きになった理由、教えて欲しい?」

「ん・・・別にいい」

「そう・・・そう言えば、アンタが私を好きになった理由、教えて欲しいな」

「あ〜っと、それは・・・その、何だ」

俺は頬をポリポリと掻いた。
うぅ・・・何か、純粋に「教えて教えて♪」って感じの目で見てるぞ・・・
結局、俺は好きになった理由を言わされた。
だって・・・“斜め45度の潤んだ瞳”で見られたら、言うしかないだろ!?

「あ〜〜う〜〜〜じ、実を言うとな、気付いた時には好きだったんだよ」

「・・・何か、嘘っぽい」

「いや、これがまたホントなんだよ」

「あ〜〜や〜〜し〜〜い〜〜〜ホントの事言え!」

藤咲はいきなり、俺を押し倒した。
マウントポジションと言う状態で藤咲は、顔を近づけてきた。
あぁ、このまま俺の童貞は奪われるのね・・・なワケないだろ、俺。

「ほらほら、正直に言わないと、チューするわよ?」

「それなら、大いに結構。 好きなだけしてくれ」

そう言うと、俺は顔を持ち上げて藤咲の口唇を奪った。
動くとは思っていなかったのか、目を丸くした後、藤咲の顔が一気に紅くなった。
かく言う俺の顔も紅いだろう、恐らく・・・いやほぼ120%、耳も紅くなっているな。
とりあえず、俺達はもう一回キスをした。
よくファーストキスは檸檬の味、と言うがそれが嘘だと言うことが、その時に頭の中に浮かんでいた。

「ねぇ、名前で呼んで良い?」

「別に良いけど?」

「じゃあ、今度から私のことは名前で呼んでね」

「わ、分かったよ・・・は、遙・・・」

「え?なんて?」

「は、遙・・・これでいいか?」

「うん、充分だよ・・・栖桜」

藤咲が俺の上から退くと、俺は立ち上がりパンパンと制服についた埃を払った。
しかし、アイドルの卵が彼女か・・・何か、悪い気もしないな。
俺は時計を見てみると、4時を指していた。
あれ、そう言えば龍太郎さんのスタジオに見学に行く、ッテ約束してたっけか・・・今から行くか。

「お〜い、遙」

「ふぇ、なに?」

「今から行かなきゃならん場所があるんだが・・・お前も来るか?」

「うん、今日もオフだからね、栖桜と一緒に行く」

俺達は体育館倉庫を出ると、下駄箱へ向かった。
すぐに靴を履くと、俺は自転車を取りに行き藤咲・・・じゃなくて、遙は下駄箱で待っていた。
俺は、遙にスタンドに立つように言うと、遙は言われた通りスタンドに立った。
ペダルを強く踏み込み、俺は自転車を漕ぎ始めた。
時々道行く人が、こちらへ振り返る。多分、遙を見ているのだろう。
ま、有名人だから仕方はないか。
暫く自転車を漕いで、俺はある場所に到着した。
昨日、龍太郎さんに教えて貰った住所に来て、遙はスタンドから降りると、俺は自転車を降りて鍵を掛けて俺達はその中へ、入っていった。

「ん、遅かったね、榊くん。 おやおや、君は確か・・・」

「栖桜の彼女の藤咲遙でぇ〜す♪」

遙はいきなり、俺の腕に抱きついてきた。
恥ずかしいと言うか、何と言うか胸の感触が肘辺りに・・・柔らかい。

「やっぱり、藤咲遙か・・・やるじゃないか、榊くん幸せにね」

「ありがとうございますぅ!」

遙は頬を紅くしながら、うねうねと身体をくねらしている。
・・・何か、性格が変わってるぞ、遙。
多分、元々こんな性格だったんだろうな、芸能界で押さえつけられてそうな気がするしな。
でも何か、こっちの方がコイツらしいというか何と言うか・・・・
俺達は用意して貰った椅子に座り、龍太郎さんの仕事を見ていた。
色々と指示を飛ばして、ポーズを決めさせてるな・・・もし俺がモデルになったら、ああ言うポーズを決めるのかねぇ?
何となく、本当に何となくあの服を着て、ポーズを決めている俺を想像した・・・に、似合わねぇ、って言うかキショイぞ俺のあの格好とポーズ!

「ちょ、ちょっと栖桜・・・どうしたの?」

「え、あ・・・いや、ちょっと変な想像を・・・」

「ま、まさか、私をアンナ事やこんな事をしているHな妄想を!?」

「んなワケあるか、ドアホ!!」

はぁ・・・やっぱ、コイツ絶対性格変わってるわ。
少し溜息を付いて俺は、頬杖をつきながら龍太郎さんの方を見た。
何か笑っているけど・・・まぁいいか。
そのまま暫く、俺は椅子に座り龍太郎さんの仕事を見ていた・・・
すると、龍太郎さんが俺達の所へ向かってきた。

「暇そうだね、榊くん」

「はぁ・・・まぁ、見てるだけですからね」

「と言うわけで、モデルのまねごとでもしてみるかい?」

「何が、と言うワケなんですか!?」

「いやヒマなんだろう?」

「ま、まぁ・・・確かに暇ですけど」

「それに、モデルになるかならないか考えるのに、良いんじゃないかい?」

「確かに考えるには、良いですけど・・・」

「と言うわけだけど、遙ちゃんはどうする?」

「私は良いですけど?」

「彼女はそう言ってるけど?」

「分かりましたよ、すれば良いんでしょう?」

「よ〜しよし、なら衣装を着てみようか、流石に制服はダメだからね」

龍太郎さんがそう言い、衣装部屋へと案内された。
う〜ん、スゲェ大量に服があるな、しかも全部ブランド物じゃんか。
衣装を決めかねていると、遙は既に衣装に着替えていた。
おぉ・・・何か、綺麗だぞ。

「ど、どう、似合う?」
遙はそう言って、袖を持って一回転した。
・・・何で、巫女装束の衣装なんて在るんだよ!?
と、心の中で叫んでいたが、正直欲情しそうだよぅ・・・ド●えも●助けて!!
あぅあぅ・・・何か、壊れてるぞ俺。
とりあえずまぁ、その衣装は却下もんだな。
俺以外のヤツに見せるわけにはいかん!!

「あのな、どっから出してきたんだ、巫女装束なんて」

「え? 彼処の箱の底に埋もれてたよ?」

俺は遙の指さした箱を漁ってみると、出るわ出るわで色々なもんが出てきた。
とても言えない様な物や、ゲームのキャラの衣装や、メイド服まで。
龍太郎さん、アンタちょっと疑いそうだよ・・・
俺は、それを見なかったことにして元の場所に戻し、遙にも違う服を着るように言った。
俺は何も見てない、本当に何も見ていない!!
自分に言い聞かせるように、俺は心の中で叫んでいた。
結局、俺達は普通の衣装を着て撮影に望んだ。
普通と言っても、俺は紅い革のズボンに黒いブーツを履き、上は白いシャツを着て炎の模様が描かれた黒い革ジャンを羽織って、手には革手袋をはめた。
何か、どこぞの格闘家みたいだな、と一瞬頭を過ぎった。
遙の衣装はと言うと、黒い網タイツを履いて、深いスリットの入ったダークグレーのドレスを着て、その上に白めの黄土色のジャケットを着ている。
アレも衣装なんだろうか、とふとした疑問が過ぎるが、なるべく考えないようにした。

「う〜〜〜ん・・・何か、凄い衣装を選んだね」

「そうっすか?」

「うん、そのドレスとか一式、来た人なんか今まで君達だけだよ?」

「え゛・・・ホントですか?」

「うん、ホント。 まぁ、気に入ったのなら上げるけど?」

「え、ホントですか、ヤッター♪」

遙は喜んでいる。
う〜〜ん、そんなにその衣装が気に入ったのか・・・
まぁ、俺もこの服結構気に入ったからな、持って帰ろっと。
俺は髪型を変えさせられ、ぼさぼさヘアーから一変して側頭部オールバックになった。
コレ、本当に俺なんだろうか?と思うほど、変わったな・・・
で、そんなこんなで撮影が始まった。

「榊くんもう少しだけ、左の拳を上げて・・・遙ちゃんは腕を首に回して・・・そうそう、何か良いネェ、恋人同士に見えて」

「やだぁ、私達は恋人同士ですよ♪」

あぁ・・・何かマジで、恥ずかしいぞ!!
俺の胸元に、遙が抱きついていて、柔らかい感触があるぞ。
う〜〜む、このまま抱きつきてぇな・・・
などという変な妄想をしている内に、このポーズの写真は取り終えた。
次の構図はと言うと、俺に上を脱げと言われたので、仕方なく上を脱いだ。

「へぇ・・・クラブに所属してない割には、結構筋肉あるじゃん」

「まぁな、伊達にバスケ部に遊びに行ってないぞ!」

「威張れることなの、それ?」

「俺的に威張れることだ、気にするな」

「榊くん、冷たいけど我慢してね」

「ほへ?」

振り向くと同時に、いきなりバケツの水をぶっかけられた・・・・
つ、冷てぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇっ!!!
遙もびしょ濡れになっており、そのまま撮影するらしい。
水はないでしょ、水は・・・せめて、お湯にしてくれ。
俺は濡れた髪を掻き上げると、スタッフから少し驚きの声が上がった。
何だ何だ、またなんか変なコトしたのか?
何か、龍太郎さんがシャッター切りまくってるぞ、良いのかそんなに写真撮って。

「な、何か、妙に色っぽいよ・・・栖桜」

「マダムキラー?」

俺がそう言った瞬間、爆笑された。
何か、むかつくぞホントにマジでさぁ・・・・

「アハハハハハハハッ!!!」

龍太郎さん、爆笑しすぎだぞおい。
遙も腹抱えて笑うな、俺が道化みたいじゃねぇかよ!!
ッツーカ、道化そのもんか、哀しすぎる・・・シクシク
心の中で泣きつつも、俺は遙と一緒にカメラに収められた。

「良いねぇ、2人とも・・・艶やかだよぉ〜〜〜榊くん、もう少し顔を色っぽくしてね、遙ちゃんも同じくね。 う〜ん・・・2人とも色っぽいね」

何か俺ら、滅茶苦茶に言われてませんか?
遙の方を見てみるが、機嫌を悪くしたという素振りはない。
まぁいいか、言われても減るモンじゃないし・・・って、何が減るんだ?
そのまま撮影は終わった。
暖かいシャワーを浴びて制服を着ると、龍太郎さんが来た。

「いやぁ、やっぱり僕の目に狂いはなかったね、ウンウン。 榊くん、遙ちゃん、ゴメンだけどさっき撮影した写真を僕の個展で使って良いかな、って言うか使うから」

「はぁ・・・まぁ、別に良いですけど」

「あ、そうだ。 パネルにして送るから2人とも住所教えてくれない?」

俺達は住所を教えると、家路についた。
途中、マクドナルドで晩飯を食って、遙を家に送って俺は家に帰った。
でも、何か楽しかったな・・・遙が居たからかも知れないけど、何か楽しかったホントに。
やってみても良いかな・・・?
次の日、俺は龍太郎さんにモデルをしても良いと、電話をしていた。
それから・・・数年後。
俺は撮影のために、スタジオに来ていた。
このスタジオにいるのは、無論俺だけではない。
たった一年で、トップスターにまで上り詰めた遙も来ている。

「栖桜、あのガンマ・エクセレントのモデルしたんですって?」

「ああ・・・何となく受けた仕事だけど、やっぱ龍太郎さんが一番良いかな?」

「そう言うところ、変わってないわね」

「お前もな、今日はこの後何かあるのか?」

「ん〜〜〜多分、無いはずだけど・・・どうして?」

「い、いや・・・お前と付き合い始めて、何年か経つだろ?」

「そう言えば、そうね・・・」

「んでだ、その・・・何だ、俺と・・・結婚してくれ」

俺はそう言って、小さい箱を渡すとそっぽ向いた。
顔が紅いな、確実に・・・横目で遙を見てみると、箱を抱きしめて案の定泣いていた。
付き合い始めた時の事を思い出すな、マジで。

「お、おい、泣くなよ・・・俺が悪いみたいじゃねぇか」

「だ、だって・・・嬉しいんだもん・・・」

「おや? すおーくん、恋人泣かしちゃダメじゃないか」

「あ、コレは嬉し涙です」

「嬉し涙?」

「栖桜がぷろぽーずしてくれたんですぅ〜〜〜」

だぁぁぁぁッ!!
遙、龍太郎さんには言うなぁぁぁ!!
と、心の中で叫んだ、本人が居る前でそんなこと言えるわけ無いしな。
にやにやと、龍太郎さんは笑みを浮かべながら俺と遙を交互に見る。

「あ、そうだ。 2人でウェディングの写真撮ろうか?」

いきなり、今回の撮影の趣旨変更が決定、マジかアンタ!?
最早、この人には頭が上がらないな・・・っつーか、元から上がってねぇか。
そんなわけで、俺は白いタキシードを、遙はウェディングドレスを着て、撮影に望んだ。
で、明後日に籍を入れた途端に、テレビに報道されて日本中を話題にさせた・・・
はぁ、龍太郎さんに知られてなかったら、こうまで話題にならなかったな、多分。

今、俺は・・・多分、幸せだろう・・・・いや、確実に。

好きな人と一緒になれて、俺は幸せなんだ。

願わくば、この幸せがいつまでも続くことを・・・・
























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