元幼馴染な二人







FANTASTIC CHRISTMAS
〜HOLYNIGHT OF MIRACLE〜








雪が・・・降っている。
夜の空を、真っ白に染める程の雪だ。
滔々と降る雪の中、俺は一人歩いていた。
雪を踏む度に、音が鳴り、それが妙に心地よく思える。
毎年、こうだ・・・俺は一人、雪の降るクリスマスイヴをこうやって、同じ道を同じ時間に散歩していた。
何時もは、ほろ酔い気分だったが、今年は何故か酒を飲む気分ではなかった。
ハッキリとした意識、痛いと思えるほどの気温だが、この気温も心地よい。

「ふぅ・・・」

深い溜息を吐く。
白い吐息が舞って、すぐに消えていった。

「今年ももうすぐ終わり・・・か」

と、呟きつつ俺は今来た道を戻ろうとした。
しかし、今俺の目の前に、白い服を着た女性が立っていた。
白いロングコートに、それと逆の黒い髪を持った女性だ。
その女性は、俺の顔を見てにっこりと笑みを浮かべて、抱きついてきた。

「また・・・逢えたね」

抱きついた後、俺の顔を真っ直ぐと見つめてきた。
俺は何が何だか解らない。
何だって、俺はこんな美女に抱きつかれてるんだ?
夢・・・ってワケじゃ無さそうだし、ダチの悪戯にしちゃ行きすぎてるしな・・・

「誰・・・だっけ?」

極めて落ち着いた声で言う。
内心は、ドクドクと心臓が脈打ち、いつもより数倍の速さだ。

「私のこと、忘れたの?」

女性はそう言い、少し哀しそうな顔を浮かべた。
途端に、胸が締め付けられる様な感覚が、俺を襲った。

(忘れたの・・・って事は、以前会った事があるって事か?)

そんな事を考えていたら、唇に感触があった。
柔らかい・・・・って、そんな場合じゃないぞ!?
慌てて引き離そうとするが、無碍にもそんなことはで来そうもない。
されるがままにしておくと女性は、顔をはなし笑みを浮かべ

「私を忘れた罰よ」

と言って、俺の額にデコピンをした。
女性が振り返ると、長い黒髪が宙を舞い、空から舞い散る雪が彼女の黒髪を、より一層と美しく見せる。
俺は言葉を発っそうとするが、言葉が見つからない。
俺は彼女に何を聞きたいんだ?
君は誰なのか、何故俺を知っているのか。
って事か?
そんなんじゃない、もっと・・・もっと重要なことだ。

「どうしたの? 考え込んじゃって」

「いや・・・何か、懐かしい気がして」

「そうなの?」

「あぁ・・・何でだろ? 君を見てると、何か重要なことを思い出しそうになるんだ」

「そう・・・なんだ。 じゃあ、早く思い出してね雅樹くん」

女性はそう言い、声を上げて笑い出した。
俺は目を丸くして、笑っている女性を見ていた。
妖艶とも思えるのだが、妖艶と言うより、無邪気な子どもと言うのが最も当てはまる。
背中をヤスリで擦られたように、身体中に電気が走り俺は彼女を見つめていた。
が、突然目の前が真っ暗になって、星が廻っていた。

「アハハハッ! 油断し過ぎだよ?」

「何するんだよ!」

俺はそう叫びながら、片手で作った雪玉を彼女に向けて投げつけていた。
その玉は見事に外れるが、もう一つ投げていたのが当たった。

「ふにゃっ!」

「アハハハッ!! そっちこそ油断しすぎだぞ?」

「もぅ、やったね!」

俺達は雪の降る夜に、遊んでいた。
子どもの様に、雪玉を作っては投げて、遊んでいた。
つい先程知り合ったばかりなのに、俺は妙に彼女の事が気にかかっている。
あの言葉・・・「私のこと、忘れたの?」と言うセリフも、妙に引っかかる。

「ハァハァハァ・・・楽しかった」

「・・・・で、君は結局誰なんだ?」

「まだ分からない?」

「ああ・・・」

「そっか・・・それなら仕方ないか」

「????」

「あ、もうすぐ時間だ・・・そろそろ行かないと」

女性がそう言うと、柔らかな光が彼女を包み込んだ。
体を動かそうとするが、動かない。
言葉を発しようとするが、声も出なかった。
そして、目が覚めた。
ベットの上で目を醒まし、俺は大きな伸びと欠伸を一つして、朝食の準備を始めた。

「夢・・・ってワケじゃ無さそうだけど」

昨夜のことを思い出していた。
あの女性・・・どこか懐かしい感じがした。
昔・・・最近じゃない、ずっと昔に会った事がある様な気がする。
電話をとって、実家に電話したがこれと言って、手がかりはなかったが収穫が無かった、と言うわけではない。
ずいぶんと昔、俺がまだ幼稚園暗いの頃に近所に住んでいた幼なじみ女の子が、浮かび上がってきた。
その子は引っ越していったのだが、引っ越す間際ある約束をしていた・・・段々と思いだしてきた。
俺は、その子の引っ越し先を調べ上げ、有り金を持って寮部屋を後にした。
4時間近くが経過し、俺はその子が引っ越していった場所に、立っていた。
まだ日が高く昇っているが、寒い。

「ここ・・・か?」

表札には"橘"と書いてある。
チャイムを押すと、インターホンから声がした。

「はい? どちら様でしょうか」

「えっと・・・宮下ですけど・・・覚えてませんか?」

「宮下さん・・・あぁ、引っ越す前に近所に住んでいた?」

「はい、宮下雅弘です」

「ちょっと待って下さいね、今開けますから」

インターホンが切れて、少ししてから戸が開いた。
あぁ、懐かし顔だな・・・昔と変わらない顔なのだが、少しシワと白髪が増えている。

「雅弘ちゃん?」
「お久しぶり・・・です」

「ホント、久しぶりね・・・早く中に入って、寒かったでしょう?」

「はい、お邪魔します」

おばさんの言う事に従い、俺は家の中へと入っていった。
今へと通され、ソファに座り少し畏まっていると、おばさんがお茶を入れて持ってきた。

「あ、どうも・・ありがとうございます」

「美咲に会いに来たの・・・?」

「はい・・・」

「そう・・・なの」

そう言い、おばさんは顔を暗くした。
俺は何だか嫌な予感がした。
何故かは分からないが、ただ・・・昨日の女性が美咲だとしたら、もしかするともしかするかもしてない。
この時の嫌な予感は、ある意味で当たったのかもしてない。
おばさんが立ち上がり、いそいそと用意を始めた。

「あの、出掛けるんですか?」

「ええ・・・雅樹ちゃんも来て頂戴、あの子も喜ぶから」

「はい・・・」

俺はお茶を飲み終えて、おばさんについて行くと大きな病院に到着した。
おばさんの後を着いていき、大きな部屋へと入り、そこで俺が目の当たりにしたのは、色々な機械に囲まれている美咲だった。
俺が、橘さん家でお茶を飲んでいる時にした嫌な予感は、当たっていた。
おばさんの話では、一週間ほど前に大きな事故にあったんらしく、一命を取り留めたのだが意識が戻らないらしい。
医者の話では内臓系統にも脳波にも異常は無く、ただ眠っているみたいだ、との事だ。
昨日の女性は、やはり美咲だったんだろうか・・・・いや、確実に美咲だろう。
学校はもう冬休みに入っているので、寮に戻らなくても心配はないが、一応電話をかけて置いたから、暫くはここにいても心配ない。
時間が過ぎていき、おばさんは家に泊まっていくように進めたが、俺は病院に泊まり美咲の部屋の椅子に腰を下ろし、眠っている美咲の顔を見た。
血色の良い肌で、今にも目を醒ましそうな程だ。
もうすぐクリスマスが終わる・・・後1時間程でだ。

「みさちん、覚えてたんだなあの時の・・・幼稚園の頃の約束」

俺は漸く思いだした。
幼稚園の頃にみさちん・・・いや、美咲とした約束を。

「俺、あの時言ったよな、『絶対にみさちんをお嫁さんにする!!』って。
 みさちん、今でも覚えてたんだろ? だから昨日、俺の前に現れたんだ・・・
 漸く思い出せたよ、みさちん・・・一生面倒見てやるよ・・・このまま目を醒まさなくてもね」

そう言い、俺はみさちん・・・美咲の手を強く握った。
時間は過ぎていき、クリスマスが終わるまで後10分を切り、時計は時を刻んでいる。

「みさちん・・・早く目を醒ませよ?」

俺がそう言ったとき、手を握り返してきた。

「みさちん?!」

俺は、叫んでいた。
ゆっくりと、美咲の眼が開いていく。
涙が浮かんで、美咲の顔が歪んでいった。

「まー・・・くん?」

「あぁ・・・覚えてるだろ? 宮下雅弘だ」

「まーくん・・・」

「ん?」

「まーくんの声、聞こえたよ」

「そっか・・・良かった、本当に良かった!!」

奇跡が起こった。
聖夜の夜に起こった奇跡。
俺も美咲もは、この夜のことを忘れないだろう・・・永遠に。
美咲が目を醒まし、1ヶ月の月日が経った。
あの日、美咲の霊(って言えばいいのかな?)が、現れなければこうなってはいなかった。
無論、酒を飲んで俺が出掛けていなくても、同じ事が言える。
今はあの時の事を考えると、少し気恥ずかしくなるのだが、良かった。
そんなことを考えながら、授業を受けていた。
チャイムが鳴り、俺は席を立とうとすると、後ろから誰かに抱きつかれた。

「美咲か?」

「あったり〜〜〜」

「どうしたんだ?」

「え? 一緒に帰ろっかなぁ、って思ってさ」

「・・・そうだな」

あれから、美咲は俺の通う高校へ転入してきた。
まさか、彼処からここへ転入してくるとは思わなかったが、それは嬉しい誤算という物だ。
美咲があの時の事を話すと、おばさんとおじさんは多いに喜んでいた。
「雅弘ちゃんになら、この子を安心して嫁に出せるわ」とか「雅弘くんなら、美咲を任せられる」とか言っていたな・・・まぁ良いか、そのおかげで、美咲と一緒にいられるからな。

「まーくん、早く帰ろうよ」

「ああ、ちょっと待てって」

周囲からは、冷やかしの声が飛んでくるが、なれた物だ。
いきなり、俺を発見するや否や、俺を"まーくん"と呼んだ上に、抱きついてきたからな、あの後は大変だったっけか・・・
教科書等を鞄に入れて、俺達は近くにある寮へと帰った。
同じ寮部屋で、着替えなどには困るが、堂々と美咲は俺の目の前で着替えをする。
たまに、女としての思慮が無いんじゃないか?
と思うが、まぁ将来を誓い合った仲だから気にはしていない。
結婚するのは大分先だろうけど、今は今で幸せだからこの状況は満喫しておきたい。
あの時、美咲の霊と出会った時、この奇跡は起こったんだ・・・クリスマスと言う夜に奇跡的なできごとが。







































































THE END














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