微エロシーンあり?(笑
愛の形
その日、空は曇っていた。
雨が降りそうな程に、どんよりとした雲の流れ。
道を歩く女性は、火のついていない煙草を銜えたまま、曇っている空を見上げた。
ポツポツと、頬を雨粒が叩き女性は少し困った顔を浮かべると、走り出した。
走り出してから、一分も経たない内に雨が強くなっていき、雨は次第に強くなっていく。
女性は小さく舌打ちすると、目に入ったコンビニへと足を向け、店内へと入っていった。
雨に打たれた身体とコンビに内の冷房により、体温が急激に下がっていく。
(やれやれ、とんだ目にあったな)
女性は心の中でそう呟くと、濡れた髪を束ねてゴムでそれを止めた。
湿っている煙草を、携帯の灰皿へと押し込むと、女性は暖かい缶コーヒーを買いそれを手に持つ。
熱いが、それの熱さが丁度良く、掌を温めていく。
暫くしても、雨が止む気配はない。
(さて、どうする・・・あの子でも呼んで迎えに来させるか)
携帯電話を取り出すと、電話を掛ける。
アドレス帳には、その電話番号だけが登録されていた。
電話の音が、5回目に達した時、電話に誰かが出た。
「やぁ、起きているか?」
『ふぇ・・・先生?』
「そうだ。 近くのコンビニで、雨宿りをしていてな・・・傘を持って迎えに来てくれないか?」
『わかりました、近くって僕の家の近くですよね?』
「あぁ、すぐ解るはずだ」
『それじゃあ、今からそちらへ行きますね』
電話を切り、女性は外へと出る。
未だ雨は激しく降っており、一向に病む気配はない。
煙草を一本取りだし、それを銜えようとして動きが止まった。
取り出した煙草を元に戻すと、その箱を握りつぶしごみ箱へと投げた。
先程購入した缶コーヒーのプルトップを開けて、女性はそれを一口、口に含む。
口の中に広がる甘い匂い、舌に甘ったるい味がまとわりつく。
一息つき、女性は雨の降り注ぐ地面を見つめ、何か呟いた。
「やれやれ、運が良いというべきか悪いと言うべきか・・・」
女性はそう呟くと、缶コーヒーを全て飲み干して、空き缶をごみ箱へと投げた。
数分、女性はコンビニの中で立ち読みをしていると、一人の少年が傘を畳みコンビニの中へと、入って来た。
店内をキョロキョロと見回し、女性を見つけると近付いていく。
「すいません、遅くなっちゃって」
「いや、構わん。 久しぶりに、こういう雑誌を詠む事に集中できたからな」
「はぁ・・・って、それは・・・」
「ん? これは一般的、男子高校生の間で言う、エロ本と言うモノだ」
「・・・」
「どうした、キミも年頃の少年なんだ、興味があるのだろう?」
「は、はぁ・・・確かに、興味はありますけどね」
少年がそう言うと、女性はニッコリと笑みを浮かべる。
その笑みを見た少年は、「ハハハッ」と乾いた笑いを発した。
女性が、口を開いて言葉を発する。
「そうか、興味があるのならば言えばいつでも見せてやるぞ?」
「ちょ、こんな場所でそんなこと言わないで下さいよ!」
「ハハハッ、それじゃあ行こうか?」
「はぁ・・・」
「どうした、溜息何ぞついて」
「いえ、別に何でもありません」
2人は、並んでコンビニを出ると、相合い傘で町中を歩いていく。
少年は隣を歩いている女性へと視線を移す。
端正な顔、そして長い黒髪にスレンダーな体型且つ、ボリュームのある胸はモデルとしても通用するだろうが、彼女は一応少年の恋人にして新任の担任の教師なのである。
年はまだ22〜3と言った所か、告白したのは無論少年の方である。
一言で言えば、一目惚れと言っていいだろう、少年は彼女を見た瞬間恋に落ちていたのだ。
(自分でも、こんな漫画みたいな展開になるとは思わなかったなぁ・・・)
「どうした、私の顔に何か付いているか?」
「え、あ、いえ、何でもないです」
「そうか? 期末考査が近いが・・・ちゃんと勉強しているか?」
「はい、一応は」
「そうか、一応か」
女性のその言葉をきっかけに、少年は口を開かなくなった。
必然的に、会話はなくなる。
2人とも押し黙ったまま、雨の降る街を歩いていた。
数分ほどで、目的の場所に着くと、少年は持っていた傘を折り畳み、階段を上っていく。
女性はその後に続き、階段を上っていき少年の家へと入っていった。
「親御さんはどうしている?」
「父さんは出張、母さんは週末だから、近所のおばさん連中と温泉旅行だよ」
「ふむ、それは好都合だな」
「へ?」
「実はな、出来てしまったのだ」
「で、出来たって、何がですか?」
「男女の間で出来る物と言えば一つしかあるまい?」
「ま、まさか・・・?」
「そう、そのまさか。 待望の一人目、三ヶ月だそうだ」
「ほ、ホントなんですか?」
「うむ、私が嘘は嫌いと言うことは、身を持って知っているだろう?」
「は、はぁ・・・」
「それに、三ヶ月前の夜、キミが激しく求めてきたじゃないか?」
「た、確かにそうですけど・・・」
狼狽する少年を見て、女性はニヤリと笑みを浮かべる。
そんな表情さえも、綺麗に見えてしまう。
恋は盲目とは、よく言ったモノだ。
そんなことを考えながら、少年は黙っていた。
時間にして大凡十分弱、女性は立ち上がると少年の頬を掴み、自分の元へと引き寄せる。
「どうした、三ヶ月前の言葉嘘なのか?」
「嘘じゃありませんよ」
「なら何故、黙って居るんだ?」
「言葉が、見つからないだけです」
「ほぅ・・・簡単な言葉でも、良いんじゃないか?」
「そう言うわけにも・・・いかないじゃないですか」
「生真面目だな、キミは」
「先生が不真面目すぎるだけです、それに僕には高原雅樹と言う名前があります」
「ふむ。 それなら、今はプライベートだ、先生というのはやめないか、私には氷室冬美と言う立派な名前があるのだが?」
「うっ・・・」
「ほら、どうした?」
「やっぱり、冬美さんはずるいです」
「ふふっ、そんなのは前から知っているだろう?」
「えぇ、十二分に」
冬美は手を離すと、雅樹の顔を自分の胸に埋めるように抱きしめ、彼に聞こえないように呟いた。
ほんの小さな呟きだが、確かに彼女の雅樹への愛は籠もっている。
胸に顔を埋められたまま、微動だにしない雅樹。
と言うよりも、動くことが出来ないと言うべきだろうか、一向に抵抗を見せる気配はなかった。
「雅樹・・・私も君のことを愛しているよ」
「何か言いました?」
「いや、何でもない・・・それよりどうだ、私の胸の感触は?」
「答えないとダメですか?」
「決まっているだろう?」
「・・・柔らかくて、キモチイイです」
「なに、良く聞こえなかったが?」
「むうっ・・・」
「ハハハッ、冗談だ気を悪くするな」
「はぁ・・・冬美さんのは冗談に聞こえませんよ」
「む、そんな事を言うのはこの口か?」
そう言い、冬美は雅樹の口唇を奪った。
突然の事なのだが、当の本人は平然としている。
どうやらこういった行為は、逢瀬の度に行われているらしい。
面白くないのか、冬美は雅樹の口の中に舌を入れて、雅樹の舌に絡ませた。
流石に、これには驚いたのか、雅樹の体がビクついた。
顔を離そうとスルも、それが読まれていたのか、頭を両手でがっちりと固定されており、逃れられない。
鼻で息をするのだが呼吸が荒い。
大体、2分ほどその状態でおり、満足したのか冬美は口唇を離した。
唾液が糸となり、冬美の口唇と雅樹の口唇を繋いでいる。
「ふぅ・・・舌を入れたくらいで、動揺するな」
「い、いきなりなんですから、驚きますよ!!」
「やれやれ、何だかんだ言ってもまだ子どもだな」
「な、七歳しか違わないじゃないですか」
「七歳も、だ。 キミが生まれた頃は、私は小学一年生だぞ、正直7年という歳月は大きいぞ」
「はぁ・・・冬美さんって変なところで、老成してますよねぇ」
雅樹がそう言った直後、冬美の拳骨が振り下ろされた。
殴られた場所を押さえながら、その場にのたうち回る雅樹。
煙草ではなく、先程のコンビニで買ったポッキーを取り出すと封を切り、一本それを口に銜えた。
「全く、キミは何時も一言多いな」
冬美はそう言うと、部屋にあるソファに座り足を組んだ。
タイトスカートから覗かせる美しい脚線美、そして隙間から見える黒い下着。
正直、この状態は誘っているのではないか、と思える程である。
更に都合のいい事に、現在この家には冬美と雅樹の2人。
これは明らかに『据え膳喰わぬは男の恥』状態である。
雅樹は迷っている。心の葛藤が、彼に襲いかかった。
(ど、どうする・・・? この状態、誘ってるんですか冬美さん?!)
「どうするって、キミの好きにすればいい。 過去、付き合っていた男は十数人に及ぶが、殆どが私の身体目当てだった。 キミは、どうなのかな?」
「・・・声に出してました?」
「あぁ、思いっきりな」
「そうですか・・・」
「雅樹、そう落ち込むな。 私はキミの事を好いているぞ、如いて言うならばLOVEと言えばいいか?」
「冬美・・・さん」
「フフッ、キミが高校を卒業するまで後一年半、ゆっくりと夫婦としての愛を深めようじゃないか」
冬美はそう言い、纏っている服を脱いでいった。
雅樹と冬美は肌を重ね合い、行為を終えた後、天井を見つめながらベッドの中にいた。
「冬美さん・・・良いんですか、本当に」
「あぁ。 学校側では不祥事、となるだろう。 だが、『相愛』とは男女が居れば必ず生まれるモノだ。 雅樹、君が好きになった人が教師、ただそれだけの事じゃないか」
「それだけの事、か」
「フフフッ、学校で私を見れないのが寂しいのか?」
「うっ・・・」
「どうした、答えてみろ?」
「そ、そうです、冬美さんと学校で会えなくて寂しいです」
「うん、やはりキミは可愛いな・・・浮気をすれば分かっているだろう?」
「分かってますよ、冬美さん♪」
2人は、そのまま週末を過ごした。
それから数日後、彼等が付き合っていると言う事が、学校側にばれ・・・と言うよりも、自分からバラし、冬美は自主的に辞職。
冬美は一人暮らしなので、色々と退職金等が出た。
それ以後も、2人の関係は続いており、週末になれば人目を忍んで、雅樹は冬美の家に訪れている。
男女の営みはあるとかないとか・・・
それから十数年後。
雅樹は学校を卒業後、すぐに就職した。
養っていく人数が増えており、一人は今現海外で一人暮らし中で、もう一人は雅樹の母校である紫苑学園の大学部に在籍中だ。
「千夏〜〜〜早く起きないと、学校に遅刻するよ〜〜〜ッ!」
階下から、エプロンをつけた雅樹が、娘の千夏へと声をかける。
返事が返ってこないため、雅樹は苦笑すると階段を上っていく。
千夏の部屋の前に立つとノックして、ドアを開けた。
遮光カーテンが付いている為、真っ暗と言って良いほどに暗い。
ベッドの上で寝返りを打つ娘をみて、少しだけ笑みを浮かべ、近づいていく。
「ほらほら、早く起きないと遅刻しちゃうぞー」
「う〜〜〜ん・・・パパ、もうちょっと寝せてぇ〜」
甘えた声を出し、千夏が答える。
ニンマリと笑みを浮かべると、布団を剥ぎ取って、耳元で呟く。
「早く起きないと、ママに怒られちゃうよ?」
千夏の身体が一瞬だけびくつき、跳ね起きる。
苦笑して、雅樹は背中を向けると部屋を出て行き、下へ通りていく。
リビングに戻ると、新聞を読みながらコーヒーを飲む妻・冬美がそこに居り、目の前の椅子に座ると一息ついた。
「千夏は起きた?」
「えぇ、冬美さんの名前出すと飛び起きましたよ」
「あの子ったら・・・」
「それだけ、怖いという事じゃないですか?」
「あら、そう言う雅樹はあの子に甘いんじゃないかしら?」
「そうですね、でも・・・あめと鞭、って言う言葉もあるでしょう?」
「雅樹・・・意外と腹黒いわね」
七歳年下の夫の意外な一面をみて、冬美は苦笑するとコーヒーを飲んだ。
程よい苦味が口の中に広がり、満足そうに笑みを浮かべる。
ドタドタと、廊下を走る音が聞こえてきたので、雅樹は立ち上がると千夏の朝食を取りに、台所へと足を向ける。
それと入れ違うように、千夏が入って来た。
「お、おはよう、お母さん」
「おはよう、千夏。 昨日は遅くまで、隆一郎君と喋っていたみたいね」
「え、あ、あははは・・・」
「フフッ、隆一郎君が好きなら、既成事実を作ると良いわ。 そうすれば、本当に彼が千夏を愛しているか分かるから」
「お、お母さん!!」
「冗談よ、冗談」
苦笑して、冬美はコーヒーカップをテーブルに置き、また新聞に目を通す。
ロックバンド・スレイプニルの記事が書いてあり、メインボーカルの涼宮零慈と、彼がプロデュースした天宮夕樹の熱愛が発覚した、と書かれており、その記事を読んでいく。
雅樹が千夏の朝食を持ってきて、お盆事、千夏の前に置いて椅子に座ると、淹れてきたコーヒーを一口のんだ。
ふぅ、と一息ついて冬美を見るとニンマリと笑みを浮かべる。
結婚して十数年も経つのに、雅樹と冬美の間は冷めておらず、逆に加熱する一方だ。
「あ、そうだ。 パパ、今日は隆一郎さん達と学校の帰りに遊ぶから、夕食はいらないから」
「あれ、そうなんだ。 隆一郎くん達も大変だよねー」
「そうね。 千夏、余りわがまま言って隆一郎くんを困らせないようにね」
「わかってるわよ」
「もう8時近いけど、行かなくて良いの?」
「え、嘘!?」
「嘘じゃないよ、ほら」
そういって、時計を指差すと、確かに八時が近い。
ほんの数分でもう八時だ。
朝食をかきこみ、千夏は洗面所へと走り、身だしなみを整えた後、鞄を持って学校へと急いだ。
千夏が居なくなると二人は黙ったまま、リビングに居る。
千夏の朝食の後片付けを終えて、リビングに戻ると、冬美に後ろから抱き付いた。
「どうしたの?」
「ん〜〜〜たまには、こう言うのも良いかなぁ・・・って、思ってね」
そういうと、雅樹は冬美の頬に、マーキングをするように摺り寄せる。
彼が甘えたい時には、必ずと言って良い程こうしてくる。
苦笑すると雅樹のやりたい様にさせていたが、手が胸に伸びるのを感じて、口を開く。
「朝から盛んね、雅樹?」
「あはは・・・いや、この胸を見てるとつい・・・ね?」
「別に良いわ、部屋でするの?」
「ん〜〜〜でも、僕も仕事いけないといけないしなぁ〜〜〜」
「それじゃあ、この場でする?」
「そうなっちゃうねぇ〜」
そういい、雅樹はカーテンを閉めるために歩いていく。
苦笑しながらその背中を見ていると、あの時の事を思い出す。
雅樹に告白された時の事だ。
正直、年下の男には興味は全く無かった。
それに雅樹も身体目当てだと、考えていたからだ。
なし崩し的に付き合い始め、純情で、とても無垢な姿をみて、初めてときめいた。
何度も身体目当ての男と付き合い、後悔した事か。
雅樹はそんな事は無く、趣味の話や色々と話をした。
普段は優しい彼だが、やる時はやる。
そんな矛盾といえば良いだろうか、そんな姿を見てますます惹かれていき、身体の関係を結んだ。
初めて、自分から結びたいと思ったからだ。
そして・・・現在では二人の娘がおり、幸せだ。
「どうかしたんですか? 嬉しそうな笑み浮かべて」
「そうね・・・雅樹と出逢えた事が嬉しくて、ね」
「そうですか・・・」
「雅樹、私の事を愛してる?」
「もちろん。 冬美さんや家族以外に愛情は注いでません」
「フフッ・・・ありがとう、あなた」
冬美がそういうと、二人は肌を重ねあう。
愛し合う証として。
二人が裸になったと同時、扉が開いた。
「やば、忘れ物しちゃっ・・・こ、こんな所で何してるのよーーーーッ!?」
千夏の声があたりに響く。
存外、バカップルとはこういうものなのだろう。
了
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