恋愛:涼宮零慈の場合−2









零慈Side














あれから数年が経過した。
俺は世界に名をはせる歌手として、毎日のようにテレビに出ている。
そんなある日、俺は数年ぶりに実家へと戻ってきていた。
昔ながらの日本家屋、俺はもう誰も使っていない、自分の部屋に立っていた。
自分が使っていた家具をみて、俺は自然と笑みを浮かべていた。
自分でも気付かないうちに笑顔を浮かべており、俺は天井を見る。
今でも、俺は夕樹の事を想い続けている。
夕樹は今、何をしているか分からない。
だからこそ俺は、彼女への想いを歌にしている。
未練がある、だけど俺は夕樹へと別れを告げて今まで、がむしゃらに走ってきた。

「・・・だけど、なんか満たされないんだよな」

俺はポツリと呟いた。
がむしゃらに走り続け、大切なものを手放して・・・俺は今では世界でも有名な歌手になっていた。
ため息をついて、俺は居間に居る母ちゃんに声をかけた後、近所を散歩する事にした。
変わらない風景だ。
だけど、何処かが変わっている様に見える。
俺は久々に、母校へと足を運んだ。
その途中、昔からのかおなじみの店に顔を出した。
インディーズの時に、俺達はそこで歌っていた。
ここは俺にとって始まりの地であり、俺の聖地でもあるのだ。

「ん? 誰だ、アンタ?」

「久しぶりです、おやっさん」

「まさか・・・涼宮くんか?」

「えぇ、そうです」

「そうか、涼宮君だったのか、いやぁ〜〜〜久しぶりだねぇっ!」

「覚えていてくれて嬉しいッす」

「忘れるわけ無いだろ、キミがここでライブをしたときは必ず、満席になっていたからね。 それに、今じゃあ世界でも有名な歌手なんだろ、忘れろと言う方が無理だよ」

おやっさんと暫く話をして、俺は店を出て行った。
ん〜〜やっぱ、変わってないな。
まぁ、少しだけ老けた感じすっけど。
俺はまた歩き始めた。
学校について、校庭を歩き後者の中へと入っていく。
時間帯は丁度放課の時間帯で、俺は樹にする事無く廊下を歩いて、職員室に入っていった。
偶然、そこに言わせた生徒達が、俺の方を見ると驚いた様な顔をして、友人であろう隣の生徒の肩を叩く。
あぁ〜〜やべぇかもな。
俺はファンに囲まれる事を覚悟して、俺が高校に通っていた頃の先生達に挨拶をして、暫く喋ると家に帰る事にした。
その帰り・・・偶然にも、夕樹と出会った。

「レージ・・・」

「夕樹・・・」

俺は、呆気に取られていた。
それは夕樹も同じだったらしく、暫くの間、俺達は黙ったままその場所に立ち尽くしていた。
何をしゃべればいいか分からない。
夕樹の家を迂回する様に歩いていたんだけど・・・なんで、逢うのかねぇ。
俺は少しだけ、ため息を付いた後、口を開いた。

「あっと・・・久しぶり・・・だね」

「うん・・・何年ぶりかな」

「さぁ・・・あん時にあってから、何年経ったかなんて忘れちまった」

「私も、忘れちゃった」

夕樹は笑顔で言う。
彼女の顔を見た瞬間、俺は胸じは締め付けられる。
もう彼女の笑顔を、見ることは出来ないと思っていたから、彼女の笑顔を見ただけで、こんなにも涙があふれそうになるなんて。
俺は無理矢理、笑みを浮かべていた。

「でも、どうしてここに?」

「ん、まぁたまには顔見せに来い、って親父に言われてな。 んで、昨日から帰ってきてるってワケだ」

「そうなんだ。 何時まで居れるの?」

「明後日までオフで、その翌日からツアーで北海道まで飛行機で・・・って感じだな」

「そうなんだ・・・」

夕樹はそういい、何か考え込んでいる。
俺は、何もせずただ夕樹を見つめていた。
綺麗になった。
ふとそんな言葉が、俺の頭の中を過ぎる。
腰まである長い黒髪が、風に揺られている。
夕樹は俺の顔をまっすぐに見つめて、口を開いた。

「ねぇ、明日・・・暇?」

「え、あぁ、特にやる事もないし、暇だぜ?」

「そっか・・・それじゃ、明日の朝十時に私の家に来てくれないかな?」

「え、あ・・・あぁ、いいぜ」

「そう、よかった、ありがとう。 明日、遅れないでよ?」

「わ、分かった」

可愛い笑みを浮かべた夕樹は俺に背を向けると、自分の家へと向かって歩いていった。
俺は夕樹の背中を見送ってから、実家に足を向けて歩き始めた。
家に帰ると、今年で高校になった少し年の離れた弟が、俺の部屋へと入ってきた。

「にーちゃんにーちゃん!!」

「あんだよ、俺はゆっくりしたいんだよ」

「だってよぉ、俺のクラスのやつら、レイジは俺の兄貴だ、って言っても信じてくれないんだぜ?」

「ま、そりゃ当然だろうな」

「そんなわけで、明日さ学校来てくれよ」

「寝言は寝てから言え。 それに、明日は用事が入った」

「横暴だぞ馬鹿兄貴〜〜〜」

「誰が馬鹿だ、このアホたれ!」

そういい、弟の慎(しん)の頭を殴る。
あわや殴りあいの兄弟げんかに発展しかけたが、母さんの一撃で二人ともKOした。
あの肘打ちは凶器だ。
俺は一応、気が向けば顔を出す、とだけ言って飯を食った後、風呂に入る。
いやぁ〜〜やっぱ、実家の風呂はでけぇな・・・父さんがこだわっているだけはある。
ゆっくり・・・と言っても30分程度だが・・・風呂に入った後、俺は服を着て屋根の上に上がり涼み始めた。
中学に入ってから、夏は必ず風呂上りに屋根の上に上がって涼んでたからな、今俺が住んでいる家はマンションだからそういうのは無理だ。
俺は空を見上げながら、ボーっとしていた。
明日、何があるんだろうか・・・夕樹に家に来いって言われたが、正直行くべきではないと思っている。
なぜかといわれれば、まぁ、いろいろと理由があるんだよなぁ。
親父さんには妙に敵視されてるし、お袋さんは妙に俺に優しくしてくれている。
ま、明日行けば分かるか・・・
俺は湯冷めしないように、部屋の中に戻って行った。
時間が過ぎ、俺は布団の中に入っていったものの、なかなか寝付けない。
時間だけが過ぎていき、俺は眠る事無く朝を迎えた。
大きなあくびをしながら下へ通りていくと、慎が母ちゃんに小遣いをせびっていた。

「母ちゃん、今月の小遣いちょっと前借させて繰んない?」

「なに言ってるのよ慎、アナタこの間も借りていったじゃない」

「うぅ・・・」

「慎、バイトもしてねぇのに、携帯なんか持つからだ」

「うっ・・・に、兄ちゃんも持ってたじゃないか!!」

「俺は必要最低限、小遣いの額以内に抑えていたからな、問題はない」

「むぐっ・・・」

俺がそういうと、母さんはうなづいている。
慎は膨れっ面で学校へ行くために、家を出て行った。
やれやれ、あいつの金遣いが荒いのは誰に似たんだろうな?
俺は母さんにで、あまり金遣いは荒くない。
だとすると、父さんだな確実に。
俺はため息を付いて、時計を見る。
まだ8時で、約束の時間まで2時間程度ある。
時間を潰すために、俺は慎の部屋でゲームを少しだけプレイしていた。
最近、これと言った面白いゲームが無いため、やはり面白いゲームは無かったが、時間つぶしには最適だ。
すぐに一時間が過ぎて、俺はゲームをやめると服を着替えて、家を出た。
熱いと言えるほどに厚く、俺は昔乗っていた原チャリで夕樹の家に向かった。
10分もかからずに家の前に付き、俺は原チャリを止めて、インターホンを押すとすぐに、夕樹が顔を出した。

「早かったね、レージ」

「まぁな」

「あがりなよ」

「いいのか?」

夕樹は少し頬を赤らめて、うなづきで答えた。
恥ずかしがる年じゃないだろ・・・俺も恥ずかしくなったじゃねぇか。
俺は夕樹の家に入ると、靴が大量にあるのに気付いた。
なんだ、この大量の靴の量は・・・
俺はその疑問を口にする事無く、夕樹の部屋へと連れて行かれた。
夕樹の家はでかく、話によると昔からこの土地を治めていた領主の家系だったらしく、この家も昔から代々とある家らしい。
そんなわけで、この家は馬鹿でかい。
夕樹の部屋も12畳以上はあり、アホみたいに広く、俺の実家が狭く見えてしまう。

「ごめんね、レージ」

「へ?」

「大学の友達とかがレージのファンでさ」

「あぁ・・・もしかして、夕樹の部屋にその友達が?」

「うん」

「まぁいいさ、そういう扱いはもういい加減慣れたからな」

俺はうんざりとした顔で、そう呟くと夕樹は、申し訳なさそうな顔をしている。
部屋の前まで来て、戸を開けるとそこはいろんな意味で、魔境だった。
おおよそ、夕樹の友人とは思えない程に濃い面々がそろっていた。
俺の顔を見た瞬間に俺は少し、いや滅茶苦茶引いた。
俺の髪を引きちぎろうとするわ、俺の服を奪い去ろうとするわ・・・あれは化けモンだ。
それを見かねた夕樹は、全員追っ払って現在は二人っきり。
緊張するぜ・・・マジで。
そういや、久々に夕樹の部屋に入ったけど、あんま変わってないな。

「ほんと、ゴメンねレージ」

「まぁ、別にいいよ。 それに、久しぶりに夕樹と話せるしさ」

「うん・・・ホント、久しぶりだよね。 こうやってレージと話すのって」

「家に電話かけても誰も居ないし、出たとしても夕樹は居ないって言われるし・・・」

「え・・・? 電話、かけてきてたの?」

「ん、まぁな。 それに手紙も送ったはずだぜ、届いてないのか?」

「う〜〜〜ん、届いてなかったわ。 多分、お父さんかな?」

「・・・あぁ、そういえばあの親父さんの存在を忘れてたな。 まだ、門限7時なのか?」

「今は9時よ」

「大してかわらねぇな・・・」

「そういわないでよ、二時間伸びた位でも驚いてよ」

「ま、親父さんに隠れて付き合ってた時期は大変だったよな」

俺はその時の事を思い出して、顔を青ざめた。
だってよ、家まで送っていって親父さんに見つかって・・・真剣の日本刀振り回して、一時間も追い掛け回されたっけ。
よく逃げ切れたと思うぜ、あの速さは鬼だ。
それ以外にも、いろいろとあったっけか・・・思い出すだけで、震えそうだ。
そんなこんなで俺と夕樹は、付き合っていたんだがな。

「そういえば、敦とはどうなってる?」

「ん・・・どうして、そういう事聞くかな?」

「すまん・・・話したくなければ、話さなくていい」

俺はその話を打ち切ると、席を立った。
夕樹は玄関先まで見送ると、俺は昨日慎に言われたのを思い出し、アイツが通い、俺の母校に行く事にした。
無論、現在は授業中なので、こっそりと忍び込むだけなのだが。
授業が終わるのを見計らって、俺は慎のクラスへとえっちらおっちらと歩いていた。
やっぱ、変わってねぇな・・・この学校も。
俺達が通っていた頃と同じだ。
俺に気付いた生徒達が、ひそひそと話をしている。
そんなもの無視して、俺は慎のクラスの扉の前に立った。
いったん深呼吸をしてから、戸を開ける。
一斉に、視線が俺へと注目されて、慎がてをあげた。

「兄ちゃん!」

「気が向いたから来ただけだ」

直後、一斉に声が上がり、俺はファンに囲まれる。
やっぱ、来るべきじゃなかったかもなぁ・・・と思いながらも、俺はサインをしている。
ファンサービスがいいな・・・と思っていると、俺の後を付けてきたのか夕樹が校庭に立っているのを見つけ、俺は夕樹のところへと走っていく。
それに続いてファン達も移動する。
・・・お前らは砂糖に群がる蟻か?
と心の中で呟き、校庭に出ると夕樹へと小走りで歩いていく。

「夕樹、何でお前も学校に来てんだ?」

「え、あはは・・・レージが学校に来るとは思わなかったから・・・」

「後を付けてきた、ってワケか?」

「う、うん」

「はぁ・・・ま、暇だったら一緒に昼飯でも食おうぜ?」

「え、でも」

「でも、じゃねぇよ、何時も行ってたあの店でも顔出すか?」

「あそこに? ん〜〜〜うん、いいよ、行こうか」

「うっし、そんじゃいったん俺の家に行って、車で行くか?」

「私は歩いてがいいかなぁ・・・?」

「へいへい、ほんじゃ歩いていくか」

夕樹の意思を尊重して、俺達は久しぶりに肩を並べて歩いていた。
久しぶりに夕樹と歩くこの道。
学生の頃は、良く口げんかもしたっけか・・・
そのときの事を夕樹も思い出していたのか、少しだけ笑みを浮かべている。
傍から見れば怪しいけど、まいいかな?
暫くして、夕樹が口を開いた。

「ねぇ・・・手、繋いでいい?」

「え・・・?」

「あ、嫌なら、いいの」

「べ、別にいいけど・・・」

俺はどもりながらもそう答えると、夕樹は俺の手をそっと握った。
成長している、俺も夕樹も。
でも、あの時と殆ど変わらない大きさの手。
俺は無意識のうちに、力が入っていた。
うぅ・・・コレでいいのか?
夕樹は敦と付き合っているはずなんだが・・・

「なぁ、夕樹」

「なに、レージ?」

「えっと・・・その、なんていうか、いいのか?」

「え?」

「敦と付き合ってるんじゃないのか?」

「・・・レージ、最低」

「いや、そのだな・・・」

「村野くんとは付き合ってるんじゃなくて、遊び友達みたいな感じよ。 村野くんはどう思っているか分からないけどね」

「遊び友達・・・ね。 それ、敦に言っておいたほうがいいぜ?」

「うん、言わないと思ってるんだけどね、なかなかいい出せなくて」

「ま、そりゃそうだろうな」

俺はほっとしているかもしれない・・・
遊び友達。
だけど、敦のヤツはそうは思っていないだろうな。
恐らく・・・いや、確実に一悶着あるな。
おおよそ30分ほど歩き、俺達はあの店についた。
ん〜〜少しだけ、ボロくなってる様な気がするんだが、まぁあの時から4〜5年は経ってるからな、当然と言えば当然か。
俺は店の戸を開けると、やはり内装は殆ど変わっていない。
俺達は席に着くと、向かい合って座ると、会話が全くと言っていいほど、全く生まれない。
むぅ、どうすればいいのやら。
夕樹は元々があまり喋らない方なので、饒舌になるのは珍しい方だろう。
そんなわけで、俺は会話をしようと思うのだが、共通の話題が見つからない。
飯を食っている間も、会話は全然無いため、すぐに食い終わり店を出ると、まだ太陽は高いままだ。
これからどうしようかと考えていると、夕樹からおずおずと手を握ってきた。
俺は拒むこと無く、好きなようにさせた。
俺はそのまま夕樹と商店街を歩きだした。
無論、手は繋いだままだ。
この時、まさか敦に見られていたと言う事をまだ俺達は知らない。
















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