一応はアーティストである姉・冴
とりあえず、冴姉のを食べてみるか。
休み時間になると、冴姉の持ってきたチョコレートを食べた。
俺の好み似合わせてくれて、ビターチョコなので食べやすかった。
すぐに全部食べてから、手紙みたいなのが入っているのに気付いた
。
それを開けて読んでみた。
「こ、これは・・・」
すぐに顔を紅くした。
まさか、冴姉が俺のことを・・・弟として、ではなく一人の男としてみている、と言うのだ。
何故か嬉しく感じ、俺はその後妙に気分が良かった。
教科書等を学校の机の中に入れておき、鞄の中に貰ったチョコを詰め込んだ。
葵姉、巴姉、藤咲、柊さん、ゴメン!
一緒くたにするわけにも行かず、俺はそれはそれで他の袋に入れて持って帰ることにした。
家に帰ると、葵姉の姿が無かったので、冴姉の所へ行ってみた。
ドアをノックして中に入ると、冴姉はギターを演奏していた。
とても、俺では無理そうな指の動きで、音の旋律を紡いでいく。
俺は、それに聞き入っており、演奏が終わると拍手をしていた。
「あ、栖桜、いつの間に?」
「ん、冴姉がギター弾いてる時にノックして、入って来た」
「そう。 で、何か用なの?」
「あぁ・・・冴姉のチョコ喰って旨かったからさ」
「え、アタシのチョコ食べたの?」
「美味かったぜ」
「そ、そう・・・」
冴姉は、頬を紅くして、そっぽ向いてしまった。
俺より年上とは言え、こういう仕草は妙に可愛く思え、ドキッとした。
やっぱ、何だかんだ言いながら、俺は冴姉の事が好きなんだろうな・・・
意識し始めたのが行けなかったのか、冴姉の近くにいるだけで、何故か鼓動が早くなってきた。
話を切り出そうにも、話が見つからないため沈黙が支配する。
冴姉も話を切り出そうとしているのだろうが、言葉が見つからないようだ。
「あ、じゃ、じゃあ、俺行くところあるから、行って来るわ」
「え、あ、うん。 行ってらっしゃい」
気まずい雰囲気なので、俺はアルファ・ルーベンスのスタジオに行く事にしたのだが・・・
冴姉、バレバレだっての。
俺は振り返り、電柱に隠れている(つもり)の冴姉に声を掛けた。
「冴姉、何やってんだよ」
「え、わ、私は冴と言う物ではないわよ」
「はぁ・・・どうでも良いけど、それで隠れてるつもり?」
俺がそう言うと、冴姉は黙り込んだ。
まぁ、身体が殆ど見えているのに、それで見つからないと思っている、冴姉の思考は少し疑いたくなる。
俺は冴姉が隠れている所まで行くと、顔を近づけた。
途端に、冴姉の顔が真っ赤になり、少し驚いた。
「冴姉、ほら」
「え・・・」
俺が手を差し出すと、怖ず怖ずとその手を握った。
少し息をついて、俺は冴姉を引っ張り起こし、歩き始めた。
冴姉と肩を並べて歩き、俺は龍太郎さんのスタジオについた。
スタジオ内に入ろうとしたら、色々と受付のような人と問答していると、龍太郎さんが出てきて二言三言言うと、すんなりと通してくれた。
俺達はスタジオ内に入り、龍太郎さんの仕事を見ていた。
「榊くん、ちょっとモデルのまねごと、してみないかい?」
「は、俺がですか?」
「うん、大丈夫だよ、僕の指示通りにポーズを決めてくれればいいから」
「栖桜、やってみなさいよ」
「ん・・っと、そう言えばそっちの人は・・・歌手の冴さんですか?」
「ええ、そうですけど」
「へぇ・・・ほぉ、ふぅん・・・」
龍太郎さんが、妙に納得した顔で頷いている。
視線は俺の手に・・・って、いつまで手繋いでんだ俺らは!!
冴姉もその視線で気付いたが、手を離そうとはせず、逆に力を込めてきた。
俺は冴姉の方を見ると、冴姉の顔何故か紅い。
「ちょ、龍太郎さん・・・」
「あはは、ゴメンゴメン、どうだい? 一緒に写ってみるかい?」
「どーする?」
「ん〜〜私は別に良いけど?」
「まぁ良いか・・・少しだけですよ?」
「なら、彼処に立ってくれる?」
龍太郎さんはそう言うと、背中を向けたまま親指でその方向を指した。
俺は少し深呼吸をしてから立ち上がり、冴姉も立ち上がりそこへと歩いていく。
服装などはどうするんだろう、と思ったが気にしない用にした。
色々と指示が来て、俺と冴姉は言われた通りに動き、ポーズを作った。
恥ずかしいな・・・ホントに、いくら指示とは言えこの格好はなぁ・・・
俺達が今取っているポーズは冴姉が仰向けの俺の上に乗り、俺は仰向けのままカメラの方を見ている。
「ん〜〜〜この構図で良いかな。 あ、榊くん、冴さん衣装はそのままにする?」
「え、俺はこのままで良いですけど・・・」
「そうか、この構図だと裸の方が良いんだけどなぁ・・・」
「ちょ、ちょっと、なに言うんですか、いきなり」
「アハハハ、リラックスリラックス、顔が強張ってるぞ」
「どうする? 栖桜が脱ぐんなら私も脱ぐけど・・・」
「ま、マジか・・・?」
「まぁ、裸が嫌なら衣装は、貸して上げるよ?」
「そう言うことは早く言って下さい!」
「と言うことは、衣装を着るんだね?」
「はぁ・・・そうします」
俺がそう言うと、冴姉が立ち上がり俺も立つ。
龍太郎さんがアシスタントの女性に、何か言っておりその人が俺達に近付いてきて、衣装部屋に案内するというので、その女性に付いて行った。
衣装部屋につくと、色々な衣装があったので、思わず声に出してしまった。
冴姉も同じ様で、俺達は衣装を代わる代わる着せられ、龍太郎さんが来て二三指示を出して、衣装が決まった。
冴姉の服装は、スリットの入った短いスカートに、ニーソックス、上は裸だった。
俺の衣装はというと、黒い皮のズボン一枚で、俺も上は裸だった。
「へぇ、榊くん君、以外に筋肉があるね」
「そうっすか?」
「うん、良いねぇ」
俺の声が聞こえなかったのか、カメラを覗き込みピントを合わせている。
「榊くん、冴さんの髪を持って口元に。 冴さんはもう少し俯き加減で、こっちに視線を送ってくれるかな・・・そうそう、それで良いよ」
シャッターが切られ、ストロボが焚かれて一瞬、目の前が真っ白になる。
其の体勢のまま、俺達は暫くカメラに納められていた。
又指示が来て、同じ黒いレザージャケットを羽織り足を組み、冴姉は俺の膝の上に跨るようにして首に腕を廻し、上半身を少し捻り、カメラへと視線を送っている。
胸の感触が、俺の顔の右側にある・・・スッゲーきもちいいよ、兄貴。
・・・又兄貴って言葉出てきたな、何なんだ、この言葉は。
「よし、良いよ。 榊くん、冴さんの腰に手を回して・・・そう。 冴さん、もう少し視線に色目使ってくれる?」
「え、あ・・・はい。こんな感じですか?」
「おぉ、そうそう。 榊くんは・・・もう少し、目つきを鋭くしてみてくれる?」
言われたとおり、俺は目を細めて睨むような感じで、カメラのレンズを見る。
龍太郎さんはそれから少し指示を出して、漸くシャッターを切った。
ストロボが焚かれ、眩しい。それが2、3度続く。
何回か、違うポーズを決めて写真を撮り、俺達は開放された。
「やっぱり、僕の目に狂いはなかったね・・・このフィルム、雑誌か何かに使って良いかな?」
「栖桜が良ければ私は良いですよ」
「まぁ、良いですよ」
「そうかそうか、ありがとう。 このフィルム、現像できたら送るから住所教えてくれる?」
俺は龍太郎さんに俺の住所を教える。
冴姉は俺と一緒に住んでる、と言うと龍太郎さんはにやにやと笑みを浮かべ、俺に耳打ちしてきた。
「榊くん、家に帰って考えてくれないか、モデルをするの」
「ええ、考えますよ」
「なら良かった。 多分、現像してパネルにするから、来週辺りには送っておくよ。 じゃ、またね」
俺と冴姉はお辞儀をしてから、スタジオを出た。
どうやら、モデルのまねごとをしたので、日は沈んでいた。
俺と冴姉は手を繋いで、家に帰っていった。
そして、それから数ヶ月が経ち、俺はモデルをしていた。
無論、俺だけじゃない。冴姉・・・いや、冴も一緒にモデルをしている。
あの写真で、俺は一気に校内でも有名になってしまった。
送られてきたパネルを見て、俺と冴は絶句していた。
何せ、普段の俺達とはまるで違う、と言っていい程の写り具合で、“アルファ・ルーベンス”と言うのは、やはり伊達ではなく、龍太郎さんの腕も良かったのか、初めてモデルのまねごとをした俺と冴の姿は、妙に色気があった。
勿論、俺は今でも高校に通っていて、ミーハーな女子がいつも俺の教室に来ている。
藤咲は立派にアイドルとして、其の才能を花開いている。
柊さんはと言うと、なんと彼女も芸能界にスカウトされて、藤咲としのぎを削って頂点を争っている。
巴姉は葵姉と一緒に、2人組の歌手としてデビューしてテレビにも出演している。
冴は歌手を引退し、俺と一緒にモデルをしているが、現在は休業中だ。
まぁ、その、何て言うかな、子どもが出来て育児に専念していて、モデルを出来る状況ではない。
何が契機で人生が変わるか、分かったもんじゃないな。
俺の契機は眼鏡をコンタクトに変えた事だろうか・・・まぁ、バレンタインに冴のチョコを食べた事もその一因かも知れないけどな。
俺は今、幸せの最中にいる・・・冴と結婚し、子供も産まれ俺は幸せだ。
願わくば、この幸せが無くならない事を・・・・
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