GR社―――正式名称はGENETIC RESIST CAMPANY
GUN CRICIS
現実・東京の一角にある会社の一室にて・・・
「以上がヴァンガードからの報告です」
「そうか、下がれ」
「はい」
『GUNCRICIS』を開発した会社の一室で、その男は椅子に座っていた。
立ち上がると、入り口のドアのすぐ隣の壁にもたれ掛かっている私へと、その男は声をかけた。
「で、ヴァンガードからの情報の真偽は?」
「事実ですよ専務。 それに、彼女達の成長速度は異常です、このままだと『プリズン』の意味が無くなりますが?」
「構わんよ、所詮『プリズン』だ、ほうっておけばいい」
「やれやれ・・・それでは、私はまた『プリズン』にいきましょうか」
私はそういい、部屋を出ると会社を出た。
まったく、この会社は収益しか目に入っていない様ですね。
まぁ、私もアイツもそんな事はどうでもいい、あの時の・・・二の舞はごめんですからね。
そのために私とアイツはこの『ジェネティック・レジスト社』、通称GR社に入社した。
私とアイツは元々一般のネットゲームのプレイヤーだった。
そして彼女は・・・私達の共通の知り合いで、彼女を通して私たちは知り合った。
よく意見が衝突し、取っ組み合いの喧嘩も何度もしてきた、だがあのゲームを開発している途中に、彼女は・・・
私がそんな事を考えていると、あの男が姿を現した。
「・・・久しぶりだな、リュウ」
「えぇ、ずいぶんとご無沙汰ですね・・・リョウ」
リョウは、手にしたモノを私に手渡してから、タバコをくわえた。
火をつけると、紫煙が立ち昇り、風に吹かれてすぐに四散していく。
私達は肩を並べて歩きながら、過去を思い返した。
守れなかった・・・あの忌まわしき記憶は、今でも鮮明に思い出せる。
あの日、GUN CRICIS(コレ)が完成間近だと聞いて、私達はテストプレイのために、GR社の一室に招かれた。
私とリョウ、アイツを含めた三人と彼女はテストプレイのために、HD(ヘッドディスプレイ)をかぶりプレイを開始した。
リアル過ぎるプレイ感覚を体験して、私達四人は見事にハマッており、プレイを中断してから私達は彼女に感想を言うと嬉しそうに笑顔を浮かべて、口を開いてこう言葉を発した。
『アンタ達がそういうなら、大ヒット間違いなしね。 協力、ありがと♪』
この言葉が、私達の聞いた最後の彼女の言葉だった。
彼女がそういってすぐに、妙な起動音がしてそちらへと振り向くと、落としたはずのパソコンが立ち上がっており、私達は目を丸くした。
パソコンの電源を落とす為に、彼女がパソコンに近づいたと同時に画面から、触手が伸びて彼女をがんじがらめにして、パソコンの画面の中へと取り込んでいった・・・
私達はすぐに助けようと走ったが、間に合わず彼女が取り込まれると同時に電源が落ちた。
そんな事を思い出し、私は頭を振るとリョウへと向けて、言葉を発する。
「リョウ、彼女と同じ者が二人同時に現れました」
「何だと・・・?」
「PC名は“ソフィア”と“イヴです」
「・・・仕方が無い、あまりアレをプレイしたくは無いんだが、それを知ればあの時の出来事を思い出してしまうからな」
「私もそうですよ・・・だからこそ、私達はGR社に入ったんですから・・・」
「ま、今夜辺りログインしてみるよ」
「そうですか、私は家に帰るとすぐにログインしないといけませんからね」
「やれやれ、大変だなお前も」
「まぁ、仕事ですからね仕方在りませんよ。 それはそうと、この『プリズン』ですが・・・」
「そこまでだ、それ以上は言うな」
「・・・わかりました。 それじゃあ、私は此方なので・・・」
「あぁ。 待ち合わせ場所は、『四神都市・バルト』のバウンティギルドだ」
「わかりました。 時間は、夜の九時でいいですか?」
「あぁ、それでいい・・・じゃあな」
私はリョウと分かれると、自宅へと直行した。
PCをたちあげて、GUN CRICISのリュウはヘッドモニターをつけてコントローラーを握る。
そして、GUNCRICISの世界へと、ログインする。
視界が広がり、私のキャラ『リフレクト』の視界が広がり、周りを見渡してみる。
どうやら、『賭博都市・アンダンテ』にログインしたようだ・・・しかし、会社も何で賭博都市なんか作るかなぁ?
今度、この都市を組み込んだ人に聞いてみよう・・・
私はどうでも言い事を考えながら、例の二人へと接触するために、情報を集め始める。
まずバウンティギルドに赴き、例の二人の情報を集めてみたのだが・・・ウソか真か、レノンを倒したと言う話が出ていた。
ホントでしょうか・・・レノンはボスキャラだから、そう簡単に倒せるはずは無いのですが。
でもまぁ、あの二人ならありえるかもしれませんね、なんせ『接続者』ですからね・・・
そんなことを考えて、私は彼女へと思いを馳せた。
もうこの世には居ない女性、私とアイツが愛した女性は、もうこの世界には居ない。
私は頭を振って、あの時の事を無理やり振り払うと、ギルドから出た。
現実の時間は午後4時半、リョウのPCキャラ『ノクターン』との待ち合わせまで、まだまだ時間はあるので私は“名も無き永久回廊”へと足を運ぶことにした。
先程のギルドで、上級プレイヤーですらも手こずる敵たちが徘徊するこのマップを簡単に荒らし回っている二人が居るらしい。
私はもしかしたら・・・という感情をもって、ここに来たのだ。
私はスナイパーライフル・フォルトDv−23Sを担いだまま、マップ内を歩き回る。
敵が出てきても、ライフルを3発程撃つだけで、敵を倒すことが出来るのだが、やはりここの敵は異常なまでに強い。
普通のマップならば、一発で大抵が倒せるのだがこのマップはまるで『誰にも知られてはいけない秘密』があるように思える。
・・・もしかしたら彼女が残した何かが、ここに在るかもしれない。
そんな一抹の可能性を胸に抱えながら、私はマップを進んでいく。
そろそろ・・・戻った方がいいか?
私はそう考え、引き返そうとしたその時だった、聞き覚えのある声で決して忘れることの出来ない声が、聞こえてきた。
「リュウ・・・助けてあげて・・・あの子達を・・・私の・・・を」
「そんな・・・遙さん!?」
「お願い・・・・・・助けて・・・あげ・・・て・・・」
身近な会話、ディスプレイをかぶっていながらも、涙があふれ出てきた。
助けるよ遙さん、例え私が貴女と同じ運命をたどろうと、必ず助けて見せますから。
そんな決意・・・私は、“名も無き永久回廊”を出るとリュウとの待ち合わせ場所である四神都市・バルトのギルドで待っていた。
その間に、パーティを組まないかと誘われたが、それを全て断っている。
約束の時間まで後5分程なのだが、ノクターンが姿を見せた。
「よっ、リフレクト。 で、例の二人の方はどうなってんだ?」
「ん・・・それが、たいした情報が無くて。 どうやら、かなり有名になっているようですよ、あの二人」
「ほぅ、そりゃ会うのが楽しみだな」
「それはそうと、“レノン”が倒されたみたいです」
「・・・そうか、そりゃ残念だな」
「・・・そうですね、後半年だったのに」
「ま、俺らが嘆いたって仕方ねぇよ、俺達には俺達の目標がある・・・そうだろう?」
「そう・・・ですね。 それはそうと、彼女・・・遙さんはここの中に存在してるかもしれません」
「な、なんだとっ?! 本当か、その話は!!」
ノクターンが、私の胸倉を掴む様な勢いで、迫ってくる。
どうやら彼は今、自分でキャラを操作するキャプチャーシステムを使っているらしい。
キャプチャーシステムと言うのは、モーションキャプチャーを応用したもので、キャラの手足を自分の手足のように動かせるシステムだ。
しかし、リンク係数が大きすぎると催眠術の要領で、キャラが怪我した場所に怪我が出来る、と言う可能性も示唆されているが、今のところこれと言った問題は無く作動している。
私達は昔からこのシステムを使い、ネットゲームをしているためこのシステムが、一番使い慣れているのだ。
欠点としては、部屋の中をウロウロしなければならない、と言う欠点もあるが。
私はノクターン・・・リュウを落ち着かせた後、事情を説明した。
「俄かに信じられない話だな」
「ですが、事実に変わりありません」
「ちっ、情報が少なすぎる。 遙さんを救うには、そして遙さんの言う『あの子達』を救う方法、全てが混濁としすぎているな」
「現実(リアル)で、遙さんに関する情報を探ってみたらどうです? そうすれば、『あの子達』に関しての情報も、得られるかもしれませんからね」
「そうするか・・・お前は、遙さんを救う方法をなんとしても探し出せ、いいな?」
「えぇ、元よりそのつもりですよ」
「そんじゃ、久々にタッグを組んで、マップを徘徊しますかねぇ?」
「そうですね」
そう答えると、私達はまだ誰もクリアしたことの無い“見えざる黄昏の牢獄”へと移動する。
そこは、混沌としていくつもの屍骸が散乱しており、とても不気味だった。
ホラー系が苦手な私は、あまりと言うか、絶対に来たくないマップなんですよね・・・ここ。
製作者の遙さんは何故、こんなマップを作ったんでしょうか、私に対する嫌がらせなんでしょうか?
無事に遙さんを助けることが出来れば、その時に問うてみましょう。
暫くマップを徘徊しながら、雑魚の敵キャラを倒していると、いくつもの銃声が聞こえてきた。
私達はそちらの方に足を向けると、二人のキャラが敵と戦っていた。
「クックックッ、いいぜテメェラ・・・殺るのが勿体無さすぎるぜ!!」
「特殊技能・速射銃術・行使・五芒星銃術(ディルタ・ショット)!」
「あめぇんだよ!!」
ロングスカートを履いたキャラ・・・アレが、ソフィアか。
一瞬で、五発の弾丸を撃つ特技(スキル)を使い、敵をけん制する。
あの声からして・・・マーダーキングですね。
確か、あのマーダーキングは“マルクリッド”だったような・・・って、めちゃくちゃ危険じゃないですか、加勢しないと!!
私がライフルを構えるとほぼ同時、リュウが私の肩に手を置いて、それを妨げた。
「特殊技能・散弾銃剣術・行使・散弾連戟(ショットガン・ブレイカー)!」
「くぅっ、ウゼェんだよてめぇ!」
ショットガンタイプの剣銃で牽制しながら、体術を組み込んでの連撃。
最後にショットガンを連射して、決める。
強い、たった数日でコレだけの強さを手に入れるなんて、流石は接続者の事はありますね。
そうこうしている内に、マーダーキングが剣銃を抜き放つ。
特技の体制に入り、マーダーキングが特技を行使する。
「特殊技能・連弾銃剣術・行使・危機新星(クライシス・ノヴァ)!」
手に持った銃、マシンガンタイプの剣銃を連射しつつ、剣銃士の女キャラへと向かっていく。
両手の剣銃を振り回し、ショットガンタイプの剣銃をもった剣銃士(ソード・オブ・ガンナー)へと、ダメージを与えている。
乱撃が終わると、両手に持った剣銃で空中に弾き上げると、銃を撃つ。
目では終えないほどのダメージポップが発生し、体力の殆どを削っていった。
まずいですね・・・あの特技、確かダメージがかなりでかかった様な・・・製作者はゲームバランス考えているんでしょうか?
って、考えたのは遙さんですけどね。
「リュウ、そろそろ限界だな。 割って入るぞ」
「えぇ、分かりました」
リョウの呟きを聞き逃さず、私は銃を構えて狙いを定める。
妙なまでのリアルさは、自分の呼吸とキャラの呼吸が一致しており、一瞬だけ息を止めるとトリガーを引いた。
衝撃は無く、弾丸はマーダーキングの腹部を貫き、攻撃が強制的に中断され、マーダーキングはこちらへと振り向く。
憤怒の形相を浮かべているが、私の姿を視認した瞬間に、彼の表情が変わり一変して、ゲラゲラと下品に笑い出した。
「アハハハハハハッ! 戦神の従者(デバックチーム)のお一人が何の様だぁ?」
「今はプライベートで楽しんでいるので、その呼び方はやめてもらいましょうか、殺戮の王(マーダーキング)?」
「あぁ・・・そうか、この女共が心配か? 安心しろ、すぐには殺さねぇさ・・・」
「なら、今はさっさと引け。 それとも、俺らを相手にするか?」
「・・・いいだろう、今回は引いてやる。 あばよ、蒼炎の銃士(ガン・オブ・ザ・フレイム)さんよぉ」
殺戮の王は、姿を消すと私達は彼女達へと、歩みを向けた。
金髪に白に近いジャケットと黒のワンピースドレス・・・ヴァンガード(アイツ)からの報告に在ったキャラの片割れだ。
となると、殺戮の王に攻撃を受けていたのは、『イヴ』か?
「あなた達は、だれ?」
「通りすがりの一プレイヤー、ってのはだめか?」
「冗談、その実力からしてかなり名の知れたプレイヤーみたいだけど?」
「ま、それはいいじゃないですか。 それより彼女、大丈夫ですか?」
「・・・あなた、私達の何を知ってるの?」
「え?」
突然な質問で、私は少し声を上ずらせた。
「だってそうでしょう? コレはゲームのはずなのに、『大丈夫』と言う質問は少し場違いと思うけど?
それに、さっきの殺戮の王が言っていたじゃない、デバックチームの一人、ってね。」
「たいした洞察力と推理力だな。 こりゃ、全部話した方がいいんじゃないか?」
「で、ですがそれは企業の秘密ですし・・・」
「まぁ・・・ばれなきゃいいんだろ、ばれなきゃ?
俺の家に来いよ、そうすりゃ俺達以外はこの話を聞けねぇからな、それにログをちゃんと削除すりゃ大丈夫だ」
まったく、相変わらず大雑把と言うかなんと言うか・・・
大きなため息を付いた後、私は肩をすくめると、リョウの提案を受け入れて、リョウの家(アジト)へと入った。
その際に彼女達のパスコードを聞き、私は一から話をはじめた。
話と言っても、私の勤めるGR社があなた達を観察しているという事しか話しては居ないので、遙さんに関しては一切口にしていない。
「と言うわけです。 まぁ、信じる信じないは別として、あなた達二人には特殊な力があるんです」
「特殊な力・・・それが、リンクと言うわけ?」
「あぁ、過去にお前らと同じ力を持った人が、何人かこのゲームに取り込まれちまってな。
それを踏まえて俺らは『接続者』と呼んでる。
そいつ等は今どうしてるかわからねぇし、生きているか死んでいるかも分からないからな」
ノクターンと名乗った銃闘士(ガン・デュエリスト)が、そういうとリフレクトと名乗ったスナイパーは黙り込んでしまう。
私は、彼らがウソを言っているようには思えず、それを信じる事にした。
千夏も同じなのか、真剣な顔・・・といっても、キャラの表情は変わってないけど・・・をして、この人達の話を聞いていた。
GR社かぁ、ここ最近大きくなってきた会社だよねぇ、それもこの『GUN CRICIS』を開発してからね。
確かに面白いことは面白い、それにテストプレイでもかなりの人数がプレイしているんだけど、それと平行しておかしな噂を何度か耳にした事がある。
例えば、絶対に攻略できないマップ、自動的に動き回り戦闘をこなすNPC、更には『幽霊の女性』等など、噂話には事欠かない位だし。
それを確かめ様とした人達が居たけど、全て失敗して殆どが全滅しちゃってるしねぇ・・・ま、いずれは行かないといけないだろうし、気楽に行った方がいいかな?
それにしても、あの殺戮の王だっけ・・・アイツは絶対私が倒してやる、私の玉のお肌を傷つけられたしね!
私は千夏の方を向くと、どこかしら不信感を顕わにしている・・・様な気がした。
「一つ聞いていいかしら・・・」
「えぇ、別にいいですが、答えられる範囲でお願いします」
「そう・・・なら、聞くけど。 あなた達は何故私達にこだわるのかしら?
私達がリンクと言う力を持っていたとしても、それはたいした脅威じゃないわ、それなのにあなた達は焦っている・・・そんな気がしてね」
「やれやれ、たいした娘だよこの娘は。 俺達の根底にある不安を、感じ取りやがった」
「不安・・・?」
「あぁ、俺達はなこのゲームのテストプレイヤーさ」
「え、それじゃあそんなに強いのは・・・」
「えぇ、そうです。 試作型のコレのデータをそのまま使っているんです」
(試作型・・・まさか、コレって姉さんが作っていた半仮想型ゲームなんじゃ・・・)
あ、千夏が何か考えてる。
でも考えても、文字ボードに書かれてるんだよねぇ・・・まぁ、本人も分かってるとは思うけどさ。
それを読んだ二人が、血相を変えて(ホントは血色のいい顔だけど、言動で分かるんだよね、こういうのって)千夏に問いかけた。
「姉・・・さん? あなた、苗字は?!」
「高原・・・ですけど?」
「そ、そんな・・・」
「運命のめぐり合わせ、ってか? タチが悪すぎるぜ、クソッたれ!」
どうしたんだろう?
千夏の苗字を聞いたとたん、二人とも変に黙り込んじゃった。
高原・・・か、特別に深い意味は無いだろうし、単なる思い違いだといいけどね。
そういえば、千夏のお姉さんって失踪中だっけ、何かゲームの開発に携ってるって聞いたけど・・・
ん? なんか妙ね・・・違和感って言うかなんと言うか、そんな感じがする。
リフレクトとノクターンは、お互いに顔を見合わせてため息をついた。
「まさか・・・遙さんは、あなたのお姉さんなんですか?」
「姉さんを知ってるの!?」
「ったく、まさか接続者が、遙さんの妹とはね・・・因果なもんだぜ」
そういいながら、ノクターンは壁をたたきつけた。
私達は口を開く事無く、黙り込んでいるとドアが開き、あの男・・・たしかヴァンガードって言ったっけ?・・・が入って来た
私と千夏は銃口をそちらへ向けて、入ってきた人物を凝視する。
「お前達、GR社のデバックチームの虎の子『戦乙女の剣(ヴァルキュリア・ブレード)』が此処に向かってきてるぜ?」
「やれやれ、デバッグチームは何を躍起になってるんだ?」
「さぁ・・・櫻香は私の事はあまり好きではありませんからね」
「そんな事より、ログオフした方が良いんじゃねぇか?」
「それはダメです。 彼女達は、接続者ですからね・・・彼女達の身体にどんな影響が出るか分かりませんからね」
「・・・ほんじゃま、とっとと逃亡しますかね」
「リュウ、俺達はどうする?」
「忠誠を誓う相手を間違えましたかねぇ?」
「かもしれんな。 辞表でも出して、会社でも立ち上げた方が良さそうだ」
「あ、それ良いですね」
「しゃべってる暇があるなら、とっとと動け!」
ノクターンに言われて、ヴァンガードとリフレクトが走り出した。
その後を私、イヴ、ノクターンという順で走り出す。
部屋を出た直後に一個師団と同じ人数が、こちらへと向かってきており、五人は全力で反対方向へと走り去っていった。
五人の後ろから、戦乙女の剣の者達が追いかけてくる。
追っ手を撒くために、ノクターンとヴァンガードとイヴ、リフレクトとソフィアの二手に別れて、『光輝きし堕天使の領域』を落ち合う場所にして、全力で走っていた。
戦乙女の剣の隊長の櫻香は部下を数名引き連れて、リフレクトとソフィアを追い、副長の月代(つきしろ)はノクターンとヴァンガードとイヴの三人を追跡している。
どれだけ走ったか、ソフィアの体力の限界を感じたのか、逃げる事をやめてリフレクトが立ち止まると、ソフィアも立ち止まった。
すぐに櫻香率いる戦乙女の剣の半数が、二人を取り囲む。
「久しぶりね、リフレクト」
「全くですね。 所で、欧州への出張はどうでした?」
「・・・ゲーム内で現実の事を話さないでよっ!!」
どうやら、ゲーム内での彼女と現実での彼女は、櫻華と言うキャラを演じているらしい。
リフレクトは笑みを浮かべたまま、櫻華を見据えたまま動かない。
私は櫻華と呼ばれた女性キャラの装備を見る。
リボルバータイプのエグゼVz/FG2を二丁腰に下げているのを見ると、二丁銃士(ダブル・ハンド・ガンナー)らしい。
櫻華が銃を抜くと、私とリュウさんは銃を構え、戦闘態勢に入る。
櫻華の部下達も、銃を抜いて銃口をこちらへと向けて、戦闘になれば苦戦は必須だ。
だけど、私は負けられない・・・姉さんを救うためにも、このゲームの真実を見るためにも負けられない!
「特殊技能・速射銃術・行使・閃光銃殺(ライトニング・ザ・デッド)!」
閃光が発生し、私はのけぞった。
攻撃が、見えない?!
だけどリュウさんは、その攻撃を回避していた上に、カウンターで銃弾を櫻華へと放っていた。
ダメージのポップが消えると同時、私が特殊技能を行使した。
「特殊技能・速射銃術・行使・五芒星銃術(ディルタ・ショット)!!」
五発の銃弾を一瞬で撃ち、銃をはじく。
それに続き、リュウさんのキャラが動き、特殊技能を使った。
「特殊技能・狙撃銃術・行使・完殺狙撃(オールデッド・スナイプ)!」
リュウさんが、特技を行使した瞬間に、全敵キャラにダメージを与えた。
辛うじて、櫻華と呼んでいたキャラはそれを回避しており、私に銃口を向けて、トリガーを引いた。
二発の銃声が響き、私の持つ銃を弾き落とす。
リュウさんは銃口を『櫻香』へと向けて、口を開いた。
「さて、どうします? いくらで戦神の従者の中でトップクラスの実力者であっても、私に勝てると思いますか?」
「くっ・・・お前、本気でGR社に牙を向くつもりか!!」
「当然です。 私は現時間を持って、GR社に辞表を提出させていただきました、それはキョウも同じです」
「まさか・・・キョウまでも?!」
「私達二人を相手に、その人数で勝てると思うのなら、かかってきなさい」
寒気を感じた。
ゲームであるからこそ、感じないはずの殺気。
だけど、リュウさんは殺気を放っている。
怖い位にソレを感じ、私は微かに肩を振るわせた。
ニコニコと笑顔を浮かべて、『櫻香』を見つめているリュウさん。
相手が観念したのか、銃をおろすとリュウさんが、再び特殊技能を行使した。
「特殊技能・狙撃銃術・行使・閃光狙撃(フラッシング・スナイプ)!」
一際大きな銃声。
全弾丸を全て、櫻香へと向けて発射した。
ダメージのポップが発生したと同時に、私はリュウさんに手を取られて走っていた。
逃げ切った後で、私達は『暗き黄昏の遺跡』へと移動して、一息ついていた。
ダメージを受けたリュウさんの体力を回復させた後、近くの岩に腰をかけて時間を潰している。
私は、さっきの家で思った疑問を口にした。
「あの・・・ちょっといいですか?」
「ん、どうかしたんですか?」
「姉さんとは・・・どういう関係なんですか?」
「そうですね、遙さんとは師弟関係みたいなものですね。
遙さんから、ゲームのプログラムの作り方を一から教えてもらいましてね、当時は私が高校生。
遙さんはこのゲームの前身を作り出そうと躍起になっていたんです」
「うん、それは覚えてる。 何度も試作型をプレイさせられたから」
「そうですか・・・でもね、私を含みヴァンガード、ノクターン、今はもう引退していますがクリムゾンと言う人の、四人はある事件に遭遇しました」
「まさか、それと姉さんの失踪に関連が?」
「えぇ、遙さんはこのゲームに取り込まれたんです・・・そして、私達は何も出来なかった。 私達はただ、見ているだけしか出来なかったんです」
リュウさんは、沈痛な面持ちで語り始めた。
顔の表情は変わっていないけど、声の質で分かる。
多分、リュウさんは姉さんの事が好きだったんだと思う。
それは今でも変わらず、姉さんを想っていると、私は直感的に感じてしまった。
いつの間にか、私はリュウさんを抱きしめていた。
一瞬、何か分からなかったらしく、黙ったままでいたけど慌て始め、声を上ずらせながら声を発した。
「え、あ、ちょ、あの・・・?!」
「黙って、暫くこうさせてくれませんか?」
「その・・・えっと」
多分、感触は感じていないとは思うけど・・・
あ、でも、キャプチャーシステムを使ってたら、感じてるかも。
・・・まぁ、いいかな?
暫くの間、私はそうしていたら、リュウさんは全くと言っていいほど動かなかった。
なんか、可愛い感じもするなぁ。
少しだけ、久しぶりに楽しいと思えたときだった。
この時はまさか、あんなにも激しい戦いになるとは思わなかったけどね。
時間にして1時間ほどその場に居て、優緒達と落ち合う場所を決めて、私達は移動を開始した。
合流場所は死天都市・シュリンクラーのギルドバーで、私達は移動するために遺跡を後にしたんだけど・・・
なんだか、リュウさんの様子がおかしい。
多分、さっきのアレのせいじゃないわよね?
ギルドバーに入ると同時、店の人間全員から銃口を向けられ、私達は目を丸くした。
「見つけたぜ、賞金額最高ランク!」
と言う言葉と同時、銃声がこだまする。
私とリュウさんはとっさに飛びのき、銃を撃っていた。
一発の銃声を合図にして、ギルドバーは戦場になった。
それはそうと、賞金額最高ランクって、どう言う事かしら・・・
私は一応はこのゲームのプレイヤーとして登録されているから、それは無いはずなのに。
・・・いえ、もしかしたら、このゲームを作り出した会社の上層部が、私達を危険視している、と言うのも考えられるわ。
でも、危険視される理由が見つからない、それにその心当たりが無くも無いけど、ね。
弾丸が尽きて、リロードをすると特殊技能を使う。
「特殊技能行使 オール・デッド・フラッシング!」
今現在使える最強の技能を使い、最大弾数分の敵(プレイヤーだけど)を倒して再びリロード。
私がリロードを開始したと同時に、リュウさんはオール・ロックオン・スナイプを行使した。
リロードを終えると、私はアイテムの閃光弾を使い、その場を脱出する。
後に続き、リュウさんが走ってきて、私の隣に立った。
そのまま暫く追い掛け回されたけど何とか振り切って、私は優緒と連絡を取り合った。
結果、優緒も狙われているらしく、合流は『闇に住まう隠者』の入り口で待ち合わせとった。
私とリュウさんは慎重に行動して時間にして30分程度でたどり着いたけど優緒達はまだらしく、姿は無い。
私は死角になる場所を見つけて、腰を下ろすとリュウさんが私の隣に腰を下ろした。
私達は何もしゃべる事無く、そこに座っていたけど私は眠くなってきて、大きなあくびをした。
私のキャラである“ソフィア”はあくびをしていないけど、感覚は私のものなのでそう表現している。
「眠ければ少し仮眠を取っておいた方が良いですよ。 あなたはゲームのキャラになりきっているとは言え、感覚は人間のものですからね、良かったら肩を貸しますよ?」
「あ、どうもありがとうございます」
リュウさんにそういわれて、私はリュウさんにもたれ掛かり目を閉じた。
余談だけど、おきた時に優緒にからかわれたのは言うまでもない。
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